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楽しい郊外演習

美味しい野営食

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しばらくするとテディが上手に組み上げた薪がいい感じに炭化して、そこに生地を載せた鉄板を吊り下げた。しばらくすると良い香りが辺りに漂い始めて、まだ他のチームが到着しないせいもあって、先生方が物珍しげにやって来た。

僕はにっこり笑って先生たちに言った。

「沢山材料があるので、先生方にもご馳走しますよ。これ、時短料理ですから。」


先生の一人が感心した様に鉄板を覗き込んで言った。

「ほう、野外でちゃんとしたものが食べれるとは贅沢だな。しかもあっという間じゃないか。それにこれは?初めて見る道具だ。」

そう言って三点脚立式かまどをジロジロと検分していた。するとボウを指導している先生が自慢げに、僕に注文するのだと話し出すと、自分達にもそのカタログを回してくれと言い出して、結局訓練所の先生方にカタログを回すことになってしまった。


テントを張り終えたケルビンとミッキーが匂いに釣られて現れると、僕はこんがり焼けた一枚目のピザもどきを6等分にしてチームの仲間と先生に振る舞った。

「パトリックは良いのかい?」

気の利くテディが僕に尋ねたけれど、実際僕は夏休み中に食べ過ぎて、ちょっと食傷気味だったんだ。次が直ぐに焼けるからと言うと、皆が嬉しそうに食べ始めた。


「うおっ!何だこれ!マジで美味い。」

そう言って、熱がりながらハフハフと食べているケルビンの横では、ミッキーがもう食べ終わって僕が焼いてる次のピザを待っている。

黙々と食べている皆の様子を眺めながら、これはピザの生地を作って売るのもありかなと思った。先生たちは美味いですねと言い合いながら、やっぱりかまどを検分していた。


僕たちが楽しくピザを平らげる頃には、ようやく次のチームが到着したんだ。僕はバートのチームの所に走って行った。

「バート!お疲れ様。どうだった?怪我はない?」

僕の質問に、バートはにっこり笑って言った。

「ああ、何とかね。相変わらずパトリックはソツなく一番乗りか?さすが飛び級だなぁ。…ケルビンは大丈夫だったか?」

そう言って僕たちの野営テント地を眺めた。


僕はケルビンに呼ばれて返事をしながら、バートに言った。

「うん。ケルビン良い奴だよ。ね、僕らの隣へおいでよ。前に話したピザもご馳走してあげるよ。ね?じゃあ、僕行くね。」

そう言って自分のチームのテントへと走り戻った。その時、僕の後ろ姿をバートが何とも言えない顔で見つめていた事には全然気づかなかったんだ。

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