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楽しさの極み、郊外演習二日目
困惑
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バートの熱い眼差しに捉えられて、僕は身動き出来なかった。こんな時に虎族とオオヤマネコ族の差をまざまざと感じてしまう。所詮僕は、虎族には敵わないんだ。
僕は急にこんな展開になってしまったのに困って、同時にバートが僕の知らない獣人になってしまった気がして、悲しみが襲ってきた。
「…バートが知らない獣人みたいで、僕、悲しい…。」
僕の目から涙が溢れて落ちた。バートはハッとすると、いつもの様な困り顔で僕を覗き込んで掠れた声で囁いた。
「…ごめん。でも俺、もう単なる友達としてパトリックの側にいるのが辛いんだ。今の俺をしっかり見て欲しいんだよ。それだけ。パトリックに無理強いなんて絶対しない。
パトリックに嫌われたら俺立ち直れないし。な?」
困った様に僕をじっと見つめるバートと目を合わせて、僕は言った。
「バートはバートでしょう?僕の事が大好きで、本当は何でも良く出来るのに、何故か僕の前だとダメなフリする変なバート。でも僕、急にバートがそんな風に大人みたいになったら怖い。」
バートは赤くなって、ため息をついて言った。
「…なんだ。バレバレだったのか。俺が必死でパトリックの側に居たくて編み出した必殺技だったのに。…俺は時々パトリックが俺より幼いって忘れちゃうんだ。
パトリックは賢くて、生意気で、そこがまた可愛いから。ごめんな、怖がらせて。でもパトリックを誰にも、ケルビンにも取られたくなくて焦っちゃったんだよ。」
僕は耳をヘタらせて気まずげなバートが少し可哀想になった。バートは悪くない。どっちかと言うと、僕がまだ幼かっただけだ。僕は自分から手を伸ばして、バートをぎゅっと抱きしめて言った。
「僕、ちゃんとバートのこと見るから。でもゆっくりでいい?僕は焦って大人になりたくないんだ。…僕が本気を滲ませたバートを怖いって思ってるうちはダメダメだと思うし。ね?」
バートは僕を抱き返すと、ため息をついた。
「そうだな。焦ってもパトリックを失うだけな気がしてきた。オオヤマネコ族は大胆で臆病って矛盾した種族だからな。…でもひとつだけ頼みがあるんだけど。俺にパトリックからキスしてくれない?」
僕はそっとバートを見上げて首を傾げた。
「キス?いつもしてるでしょ?」
バートは言いにくそうに頭を掻いて言った。
「あー、いつものやつじゃないキス。分かんない?じゃあ俺からしても良い?」
僕はバートが何を言おうとしてるのか良くわからなかった。僕たちは子供の頃から、何かとチュッチュとしてきたからだ。あんなのなんてこと無い。だから僕はコクンと頷いたんだ。
ああ、僕って本当幼かったんだよ!キスにも色々あるって知らなかったんだから!
僕は急にこんな展開になってしまったのに困って、同時にバートが僕の知らない獣人になってしまった気がして、悲しみが襲ってきた。
「…バートが知らない獣人みたいで、僕、悲しい…。」
僕の目から涙が溢れて落ちた。バートはハッとすると、いつもの様な困り顔で僕を覗き込んで掠れた声で囁いた。
「…ごめん。でも俺、もう単なる友達としてパトリックの側にいるのが辛いんだ。今の俺をしっかり見て欲しいんだよ。それだけ。パトリックに無理強いなんて絶対しない。
パトリックに嫌われたら俺立ち直れないし。な?」
困った様に僕をじっと見つめるバートと目を合わせて、僕は言った。
「バートはバートでしょう?僕の事が大好きで、本当は何でも良く出来るのに、何故か僕の前だとダメなフリする変なバート。でも僕、急にバートがそんな風に大人みたいになったら怖い。」
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「…なんだ。バレバレだったのか。俺が必死でパトリックの側に居たくて編み出した必殺技だったのに。…俺は時々パトリックが俺より幼いって忘れちゃうんだ。
パトリックは賢くて、生意気で、そこがまた可愛いから。ごめんな、怖がらせて。でもパトリックを誰にも、ケルビンにも取られたくなくて焦っちゃったんだよ。」
僕は耳をヘタらせて気まずげなバートが少し可哀想になった。バートは悪くない。どっちかと言うと、僕がまだ幼かっただけだ。僕は自分から手を伸ばして、バートをぎゅっと抱きしめて言った。
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「そうだな。焦ってもパトリックを失うだけな気がしてきた。オオヤマネコ族は大胆で臆病って矛盾した種族だからな。…でもひとつだけ頼みがあるんだけど。俺にパトリックからキスしてくれない?」
僕はそっとバートを見上げて首を傾げた。
「キス?いつもしてるでしょ?」
バートは言いにくそうに頭を掻いて言った。
「あー、いつものやつじゃないキス。分かんない?じゃあ俺からしても良い?」
僕はバートが何を言おうとしてるのか良くわからなかった。僕たちは子供の頃から、何かとチュッチュとしてきたからだ。あんなのなんてこと無い。だから僕はコクンと頷いたんだ。
ああ、僕って本当幼かったんだよ!キスにも色々あるって知らなかったんだから!
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