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こんにちは日常

優勝は

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僕たちチームは周囲の訓練生達にワイワイ言われながら食堂で祝杯をあげていた。今日は郊外演習の結果発表があって、優勝はもちろん僕たちのチームだった。

まぁ怪鳥ギャロスの卵の殻に鬼蜂の毒袋でぶっちぎりだったけどね。結局宝箱の中身の万能避けは僕しか使えないから申告しなかったし、精霊の死霊に関わるものは全て秘密にした。

とんでもない騒ぎになるのは目に見えていたからね。僕たちは機嫌良く何度目かの乾杯を打ち鳴らした。


仲良しのギャビンが、バートと一緒に僕の後ろの席に座って僕を揶揄った。

「パトリックってマジで本番に強くないか?流石のヨードル領出身かなぁ。」

そこに割り込んできたのはテディだった。テディはギャビンに訴えるように言った。

「本番に強いってものは言いようですけど、パトリックは無茶苦茶なんですよ!僕たちどれだけ命を危険に晒したか。後からゾッとしたのって一回じゃないんですから。」


ミッキーは腕を組んで頷きながら言った。

「確かに、パトリックは美味しいものを沢山食べさせてくれたけど、同じくらい酷い目にも遭わせてくれたな。まぁ、でも美味しさが半端ないから、俺は機会さえ有ればまたパトリックと一緒に攻略行きたいけど。」

テディにミッキーは食い意地しか判断材料が無いのかと突っ込まれていたけれど、そこにケルビンが意味深にニヤリと笑って言った。


「まぁ、俺は結構楽しかったぜ。パトリックと一緒だと刺激的過ぎて、こっちの身が持たないけどな。」

途端に僕の後ろから冷気を感じて、僕はバートが霧魔法が得意なことを思い出した。僕は慌てて振り返ると、バートに引き攣った笑顔を浮かべて首を傾げて頼んだ。

「バート、寒いよ…?」

ギャビンがそんな僕たちをキョトンと見ていたけれど、急に苦しげに笑い出すから僕はもうほんと身の置き所がなかったんだ。


そうは言っても、僕たちの優勝は嬉しい事には間違いなくて、僕は立ち上がると甘い飲み物の入ったグラスを掲げて言った。

「では、僕からひと言。今回の演習は予想よりかなりハードなものだったけれど、誰もが怪我なく無事戻って来れて、その上優勝も出来て本当に最高でした!テディ、ミッキー、ケルビン、本当にありがとう。またこんな機会があったら是非一緒にやりましょう!」

そんな僕の言葉にテディのため息混じりのひと言が妙に響いたんだ。

「…命が惜しくなかったらね?」





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