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新しい関係性

征一sideつれない美那

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これは私にとって、はじめての挫折なんだろうか。他人が聞いたら傲慢だと思われるかもしれないが、今まで自分から手に入れたいと思った女性は簡単に手にして来た。

学生の頃はその事で随分安易な付き合いもしたけれど、さすがに大人になったらそうもいかない。まして女性は結婚の2文字をチラつかせてくる。


私は家のこともあり、仕事が楽しくもあり、それなりのプレッシャーがあった。そんな私にとって結婚は、まだ遥か彼方にあるものだった。

自然、割り切った大人の関係になれる相手を選ぶ様になった。しかし、付き合い初めにはそう言っていた相手でさえ、いつの間にか二人の関係をどう考えているのかと私に決着を迫ってくるのだ。

それは付き合う際の約束とは違うと言っても、彼女達は状況が変われば約束も変わるものだと言い張る。


私は付き合う相手を複数にしたことは無いし、付き合っている間は誠実に対応していたと思っていた。けれど、彼女達にしてみれば、未来の無い関係自体が不誠実という訳なのだ。

流石の私も女性に懲りてきて、やり甲斐も感じていた仕事にのめり込んでいたんだ。


それなのに弟が大怪我をして、日常が非日常になったあの日から、私の世界は急に思わぬ方向へと転がり始めた。

目の前に現れた小悪魔な女は、私を抜け出せない非日常の世界へと引きずり込んだ。私の前にチラチラと現れては、心を揺さぶっていく。忘れられない熱いキスを与えたと思えば、私を遠ざけようと必死になって。

別れ話でも無いのに、この私をののしる女なんて今まで会ったこともないんだ。もしかして、罵られるのが好きなのかと、自分にそんな性癖があったのかと勘違いしそうになる。


隙があり過ぎて、他の男に良いように食われそうな美那が放って置けなくて、私は今日も彼女を見つめてしまう。なのに彼女は難しい顔をして私を見つめないように頑張っている。

何度か抱き寄せたあの時の甘やかな眼差しと唇。仕事中なのに、瞬時にそんな事に気を散らすなんて、私らしくない。きっと、女遊びに長けた柴田に言わせたら、私が恋をしてるとでも言うのかもしれない。


あいつにこんな状況を知られたら、きっと爆笑されるだろうけど。

私はため息をつくと、今日も私に冷たく対応するけれど、有能な美那を連れ出して仕事のアシスタントを頼むのだろう。これが私の精一杯の公私混同しないという約束の証明なんだ。贔屓ではなく、有能さを買っているのだから。
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