御曹司の恋〜君は悪魔か天使か〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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新しい関係性

征一との同居生活

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 高層階のマンションから見下ろす朝の日差しは、忖度なく気持ちが良かった。都会を流れる運河が朝日を反射してきらめいている様だ。今日も仕事は休んでいるけれど、いつものように身体は決まった時間に起きてしまった。

 私は一度目が覚めると二度寝出来ないタチなので、以前よりすっきりした気分でローブを羽織った。この大きめのローブは征一が貸してくれたものだ。


 私は普段からドレスタイプのナイティを愛用していた。眠れない夜にその格好のままキッチンへ水を飲みに行った際、丁度夜遅くに帰宅した征一とバッタリ遭遇したのだ。

 その時に、征一は少しギラつく眼差しで私を見つめると、目に毒だから部屋から出る時はこれを着てくれと自分の予備のローブを渡してきたのだ。

 紺色のそのバスローブは私には大きかったけれど、確かにシルキーなナイティでウロつくわけにもいかないと、有り難く借りることにしたのだった。


 しかし、征一のバスローブを着て、征一のマンションに同居するなんて、私は親密な知人以上の関係になってしまったのだろうか。親密な間借り人?

 実際この数日、朝出掛けるタイミングの征一に遭遇する他は、夜も接待や仕事で遅い征一とはほとんど会う事はなかった。何だかあえて避けてるのかと思うほどに顔を合わせていない。

 私はひとりの時間が多すぎて、少しだけ寂しく感じるほどだ。従姉妹の美波は私が巻き込まれた事件の話を聞くと、随分驚いていた。

 私に少しは男っ気が欲しいと思ったけれど、そんな修羅場に巻き込まれることまでは望んでいないわと、電話越しに嘆かれた時には苦笑してしまったけれど…。


 でも私が征一のマンションに一時的にお世話になると聞いて、俄然根掘り葉掘り質問し始めたので、私たちはそんな関係じゃないと早々に電話を切ってしまった。

 自分でも裕樹さんの部屋に決意と共に行こうとしていたのに、こうして別の男の部屋で寝泊まりしている今の自分が、何だか数ヶ月前では考えられなくて笑ってしまう。

 私は裕樹さんに自分から連絡を取っていないことに、大きな罪悪感を感じていた。けれど、今の自分には連絡を取ることも負担に感じていて、先生の言う通りあまり考えない様にしてのんびり過ごす様に努力している。


 のんびりするのに努力するのもどうかと思うけれど、真面目な私の人生の小休憩だと思ってゆっくり深呼吸している。

 時々翼からはたわいもないメッセージが届くけれど、翼が私に気を遣ってそうしてくれているのがわかるので、心配かけた分、復活した暁には何か見える形で感謝したいなと思った。

 丁度その時、私の部屋の扉がトントンとノックされた。私はハッとして慌てて扉を開けた。そこにはワイシャツ姿の征一が立っていた。

「起きてるなら、一緒に朝食はどうかな。…良かったら来てくれ。」

 そう言うと、私の返事も待たずに征一は後ろ姿を見せた。私は慌てて、Tシャツとショートパンツの部屋着に着替えるとサッと顔を洗って髪だけ梳かすとダイニングへ向かった。

 ダイニングテーブルには征一が先に座ってコーヒーを飲んでいた。私の姿を見ると、嬉しそうな顔をしていそいそとコーヒーを入れてくれた。


 征一の対面の席にはビーンズの色鮮やかなサラダにポーチドエッグとベーコンが添えられていた。香ばしい香りのクロワッサンが美しいプレートに盛られていて、野菜ジュースとグラスが側に置かれていた。私は美しい食卓と、充実ぶりに目を丸くした。

「征一さんて、いつもこんなに用意するんですか?ホテルの朝食みたいです。」

 すると、少し顔を赤らめて指先で頬をなぞりながら言った。

 「まぁ、ちょっと美那に喜んでもらえるように頑張った感はあるけどね。自分でもちゃんと食べようとは思うんだけど、一人暮らしだと、どうしても簡単になってしまって…。だから美那が一緒に食べてくれると、私にとっても良い事なんだ。

 …体調はどうだい?前より眠れるようになったかな。」

 私は目の前のポーチドエッグの完成度に感嘆しながら答えた。


 「ええ、随分ぐっすり眠れるようになりました。のんびりする様に努力するなんて考えたこと無かったですけど、人間て案外脆いものなんだなって今回はっきり自覚しました。私って、自分が思うより真面目だったんですね。

 それにしてもこのポーチドエッグ完璧だわ。私、ポーチドエッグって作ったことないかもしれません。…ああ、美味しい。どうして人の作ってくれた料理はこんなに美味しいのかしら。」

 私がうっとりしながら朝食プレートを堪能していると、征一は私をチラッと見上げながら言った。


「…多分、私の愛情が入ってるからじゃないかな?…いや、私も自分で言って恥ずかしくなってしまった!」

 私が征一を見つめると、征一は自分の言った事に羞恥心を煽られたのか、急に慌て出した。私はそんな征一にクスクス笑うと、それこそ心がどんどん軽くなってくる気がした。

 食後、私が食器を片付けるのを無理矢理請け負うと、征一は済まなそうな顔をして出勤するために玄関へ向かった。私は征一を見送るために後からついて行った。


「征一さん、いってらっしゃい。…あの今夜も遅くなりますか?」



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