ちょっと味見したかっただけですわ〜伯爵令嬢の無謀な婚活〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
14 / 59
変わった令嬢

ある男side秘密の夜会

しおりを挟む
今夜は最近流行りの『秘密の夜会』だ。勿論いかがわしい訳ではない。公にしない分、思いがけない人物が呼ばれたりするので驚きがあったり、人数も多過ぎずに話もし易いのでより親密になれるので人気なのだ。男同士のコネ作りやら、女同士の秘密の会話、男と女の大人の関係…。

私はホールの端に立って、ワインを片手に全体を見回していた。私に気づいてる人間はあまりいない様で、この付け髭が功を奏してる様だった。主催の公爵は私にウインクするとニヤリと笑った。そして心からの満面の笑みで、今新しく訪れた新客を出迎えた。あの人がそんな顔をするのは珍しいと、私は興味が湧いてその客を見た。


そこには王都の青い宝石と謳われたジュリランド伯爵夫人が立っていた。夫人が騒がれていたのは私が子供時代だったが、今でもその美貌は衰えていない。側でエスコートしているジュリランド伯爵も相変わらずの美丈夫で、鋭い眼差しで未だに夫人に熱い眼差しを送る貴族を牽制している。

相変わらず、あのお二人は見つめ合う眼差しが暑苦しくて、私は呆れる様な、羨ましい様な、何とも言えない気持ちにさせられた。その時、夫人の後ろから現れた、スラリとした若い令嬢に、夜会に来ていた人間は思わず一緒に息を呑んだのは間違い無いだろう。


母親が青い宝石なら、父親の艶めく黒髪と母親の美しい青い瞳を受け継いで、真っ赤な唇を持つこの御令嬢は、さしずめ月の照らす夜に舞い降りた神秘的な妖精の様で、月夜姫とでも名付けるのが正解だろうか。その赤い唇が弧を描いて微笑むと、皆がうっとりとため息をつくのだから。

そう言えば公爵が、今日はピレデビュタントを呼んでいるとこっそり耳打ちしたのは、彼女の事だったに違いない。そうは言っても、私にデビュタントの16歳の女の子は相手にならない。あまりにも幼く、幼稚だ。

私は彼女が5年後ならば遊び相手になっても良かったがと思いつつも、その時には彼女の隣には父親と同じ様に、熱い眼差しで見つめる男が居るに違いないと諦めに似た、虚しい気持ちで月夜姫を見つめた。


それから私は夜会に来ていた遊び慣れた淑女達と揶揄いの会話を楽しみながら、今夜はなぜか思いの外、甘い誘いにも気が乗らなかった。そんな時だった。月夜姫のきらめく黒髪が私の視界に入ったのは。

月夜姫は夜会の空気に酔ったのか、若い貴族にエスコートされてバルコニーへと出て行った。私は眉を顰めた。これではまるっきり狼に食われるばかりではないか。私は側の扉からそっとバルコニーへ出ると、二人に気づかれない様に様子を見守った。

そして、その時それは起こった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...