ちょっと味見したかっただけですわ〜伯爵令嬢の無謀な婚活〜

社交界の華

社交界デビューの日

今日はついに社交界デビューの日ですわ。この日の為にわたくしのようなデビュタントやその家の者は何ヶ月も掛けて綿密に準備をしてきたはずです。

わたくしもここ数ヶ月は侍女に念入りにお肌や髪の手入れをしてもらってましたが、そもそも16歳ですもの。お肌はぴちぴち、髪は艶つやですわ。

わたくしは美容担当の侍女に、お化粧の手解きもしました。透明感、少しの煌めき、そして流し目の決まるライン入れですわ。わたくし、このアイラインの為にお母様に頼んで、ラインブラシも作っていただいたほどですわ。良い道具がないと、決まるものも決まりませんもの。


わたくしは20人あまりのデビュタントの中で印象付ける為の作戦を考えましたの。例年、デビュタントは可愛さのてんこ盛りにしがちですの。16歳ですもの、当然と言えば当然ですわ。

でもわたくしは放っておいても可愛さは滲み出ると思いましたわ。ですから、わたしくは一歩先を進んでみましたわ。デビュタントは白いドレスと決められてるので、わたくしは地模様に凝りました。星の煌めく天の川をイメージした上品なものです。


そして装飾はほぼ減らして、カッテイングで遊びましたわ。片肩だけ残して、上半身に巻きつく滑らかなラインは上品さと、ほのかに色っぽさが漂いますの。スカート部分はあえて小さめのパニエにして、前後のスカート丈の差で動きが出る様にデザインしてもらいましたの。

このドレスでダンスすると、とっても雰囲気が出るんですの。屋敷でこのドレスを着てレッスンしていた時に、お兄様達が唖然としていたのは見ものでしたもの。ふふ。


わたくしのチャームポイントの髪はドレスのカッテイングを邪魔しないように、片側だけを青いグラデーションで染めた大輪の薔薇で留めました。あとはお父様に頂いた手首に煌めく細い星屑のようなブレスレットだけで、シンプル　イズ　ベストですの。

お父様の誇らしげな顔と、いつもの様に麗しいお母様に見送られて、わたくしはデビュタントの列に並びました。ここから大勢の貴族が待つ会場へ、大扉から一人づつ入場するのです。隣のデビュタントの令嬢は青白い顔で、今にも倒れそうでしたので、わたくしはにっこり笑って励ましました。

「今夜は緊張しない方がおかしいですわね？貴方の髪飾りはとても美しくてよくお似合いですわ。」

わたくし達はにっこり微笑みあって、令嬢も心なしか顔色も良くなりました。その時、社交界デビューの舞踏会が始まりを告げる鐘の音が鳴り響きました。さぁ、楽しみましょう！