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貴族学院

学院生活の始まり

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今日はついに貴族学院の入学式。

寮生活が始まるので、2週間後の週末までお屋敷に帰れないんだ。

お父様やお母様、お屋敷のみんながこの世の終わりみたいな嘆きようで、ちょっと引いちゃった。

寂しがってくれたのは嬉しいけどね。


「セブ、ここまででいいよ。あ、お部屋も整えてくれたんでしょ?…ありがとう、色々と。」

物心ついた頃から常にそばに居てくれたセブと離れ離れになる事に、今更ながら動揺して何だか泣きたくなってしまった。

僕はセブに抱きつくと背伸びをして頬に口づけた。

「セブは僕にとって特別な人だよ。今までありがとう。」

何だかセブも泣きそうな顔をしてるので、僕は急に気恥ずかしくなって慌てて学校の門の中に入った。



入り口に入ると案内の上級生たちが並んで待っていてくれて、あら、今の甘ったれも見られちゃったのかしらとバツが悪い思いで立ち止まってしまった。


「…僕が案内しよう。リオネルン スペード様だね。僕はリッチー。生徒会の役員をやっているんだ。こっちだよ。」

優しい目をした、誰かに面影を感じる黄色リボンの三年生がエスコートしてくれた。


三年生にもなると随分大人っぽいんだなぁと、さっきまでの寂しい気持ちはすっかりどこかに流れていった。

興味津々でリッチー様を横目でチラチラ見ていると、彼は面白そうにクスリと笑った。

「君は噂と違って随分面白そうな子だね。僕はバーモント侯爵家の次男なんだ。

確か僕の兄は君のお兄様と仲が良いと思ったが…。

何か困ったことがあれば僕に聞いてね。」


「え?ヘンリックお兄様の弟君なんですか⁉︎

僕ヘンリックお兄様には随分お世話になってるんです。

ふふふ、何だか不思議ですね。どうかよろしくお願いします。」

ヘンリック様の弟君だったなんて!僕は知らない人じゃ無いんだとすっかり嬉しくなってリッチー様の顔を見上げた。

道理でこの濡れた様な艶めいた黒髪は見覚えがある。

兄君のヘンリック様は耳ぐらいに撫でつけた精悍な感じだけど、リッチー様はサラサラの髪を片耳にかけてちょっと知性を感じる雰囲気だ。

きっと生徒会って言ってたから、頭も良いんだろうな。

そんな事をツラツラと思っていると、リッチー様は急にやわらかな琥珀色の目をひそませた。

「…僕の兄と随分仲が良い様に聞こえるけれど…。」

あれ?急に機嫌が悪くなっちゃった?もしかして僕の兄上横取りしてるとか思っちゃったとか?

「ヘンリック様は僕のこと可哀想に思ってお屋敷に遊びに来たりして、慰めてくださるんです。

僕の大好きな兄上が王子と留学随行でしばらく帰れないものですから…。

あ、ヘンリック様は元々リッチー様のものですから、安心してくださいね?」

僕が満面の笑顔を向けると益々険しい顔になったリッチー様は、ため息をひとつついて頷いたのだった。

『…変な方向に話がずれて行ってる気がするけど…。兄上め、聞いてないぞ。何て抜け目ない事を…!』

リッチー様の呟きはよく聞き取れなかったけど、きっと聞いちゃいけない事だと思って聞こえないふりしたよ。

僕少しは大人になったでしょ。




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