【完結】深窓令嬢シリルの秘密

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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シリルの憂鬱※

 湯上がり後、鏡に映り込む自分の裸をシリルはぼんやりと見つめた。

 ほっそりとした長い手足に、筋肉を感じない身体。肌は磨かれて滑らかで艶もあるけれど、膨らみの無い胸から視線を落とせば、ほとんど感じない体毛から見える柔らかな色合いの男の股間。

 以前屋敷の下男が下女と屋敷の小部屋で身体を交えていた時に密かに見た、あの猛り切ったモノを思い出せば自分のものとは遥かに別物だと分かる。

 その時にズクリと反応した身体は、同時に自分がその猛々しさに貫かれたいと感じた事にショックを受けたとあって、性的なものから遠ざかるきっかけにもなったのだった。


 シリルは女のふりをした男であり、押し倒されたいと願う男なのだ。その倒錯的な自分に何の解決案も見出せなくて、シリルは自虐的なため息をついた。

 両親はこんな自分を今では本物の娘として扱っていて、もしかしてシリルが男だと言う事を忘れてしまったのでは無いかと疑いを感じる程だった。

 けれどシリルは女として生きるのに決して困難を感じている訳ではない。どちらかと言うとジェイコブ達の様に群れになって争い競争しあう世界に居なくて幸いだったと思うほどだった。


 けれどもこうして毎日湯上がりに鏡の前に立つと、自分の複雑に絡み合った人生がさらりと解れて、一本の真っ直ぐな糸にならないだろうかと渇望してしまう。

 令嬢達との付き合いは慣れているとしても気が張るせいで、それこそ数人しか交流を持っていない。そして彼女達の可愛さと同じくらいの獰猛さを知ってしまえば、男として彼女達をかつて目に刻まれた下男の様に押し倒したいとも思えなかった。

 だからシリルは矛盾を抱えたまま人生を過ごすことになるのだと、何処か諦めた気持ちで鏡の中の男とも女とも言えない自分の姿から目を逸らした。



 「シリル様、本日ジェイコブ様がいらっしゃられていた様ですね。一体どんなお話でしたか?」

 年嵩の侍女に夜着のドレスへと着替えを手伝われながら、幼い頃から仕えてくれている従者のバートに尋ねられて、シリルは苦笑して言った。

「求婚されたの。でも私に何が言える?私は誰とも結婚しないって言っておいたから。うちの呪いを知ってるかって謎かけも一緒にね。そうでも言わないと彼は理由が分かるまで引き下がらないって思って。

 ああ、そんな顔しないで。私は自分の呪われた人生を受け入れているから。

 …ただそうね、男でも女でも、私を愛してくれる人がいたら素晴らしいだろうと想像はするけどね。それは結婚という形でなければまだ諦めなくても良いかもね?」


 シリルの言葉で沈み込んだ彼らを引き立てる様に明るく笑うと、彼らが立ち去った後でシリルは一人ベッドに転がった。あの子供と大人の狭間で脳裏に刻まれた卑猥な光景は、結局のところ自分の欲望を時々掻き立てた。

 シリルにとってはそれは男に組み敷かれる事だったし、今はジェイコブにそうされるイメージしか浮かばない。

 熱くなった身体を指でなぞりながら、シリルはその感触に甘くため息をつく。

 すっかり張り詰めた股間は手の中で熱く濡れて、指の動きでその興奮を長引かせている。自分の竿から垂れた雫が後ろに回ると、そこに突き立てられるジェイコブの猛々しいモノを想像してヒクヒクする。


 貴族のゴシップで男同士の愛の交歓もあるとは知ってはいたものの、自分ではどうするべきかも分からず、シリルは扱く手を休ませずに一気に上り詰めた。

 手の中を濡らす役立たずな子種を感じながら、シリルは布で手と股間を拭うとベッドに丸くなった。ジェイコブを夢想の相手にしてしまった事にいつもの様に罪悪感を覚えている。

 今夜も私は一人ぼっち。そしてそれは一生続くのかもしれないと恐怖さえ感じて。



 「シリル様、今度閨の作法をお勉強しなければなりませんが、女性と男性どちらをご所望ですか?旦那様がシリル様にはどちらも手配する様に仰いましたので好きな方を選んでいただいて構いません。もちろん両方選んでいただいても結構でございます。」

 従者のバートに次の日そう問われて、シリルは目を見開いた。自分が令嬢のふりをしているのは秘密のはずだ。この秘密が漏れる様な閨のレッスンはあり得ないと思っていたからだ。

 「…秘密が秘密じゃなくなっちゃうでしょう?」


 「勿論、秘密を守れる者を選びますし、旦那様もシリル様がこのままでは良いとは考えてはいらっしゃられないのです。シリル様を愛しておいでですから、少しでもシリル様の意向に沿わせる様にとのお話でしたよ。」

 すっかり自分を娘と思い込んでいると思ってたけれど、両親はシリルが男だと覚えていたみたいだ。シリルは急に可笑しくなって、クスクス笑いながら従者に言った。

 「フフフ、ああ、可笑しい。それにしても私が男だって知ってるのに、男を閨の相手に選んでも良いだなんて…。感謝しなくちゃいけないかもしれないね?でも何だか気恥ずかしいな。

 ちょっと考えさせてくれる?急な話だから…。」


 微笑む従者に照れた笑顔を見せて、シリルは何処か救われた気分で美味しいお茶を口に運んだ。自分は決して一人でこの呪われた運命に流される訳じゃ無い。両親はシリルの事を普通の子供と同じ様に、いやそれ以上の気遣いを見せて考えてくれてる事が分かったからだ。

 男と交わることを知れば、自分はジェイコブを諦められるだろうか。それとももっと渇望して罪悪感を積み重ねることになるのだろうか。

「…ジェイコブはきっと女を閨の相手に選んだろうね。普通は男など選ばないもの。」

 思わず呟いた自分の独り言に傷つけられて、シリルはどさりと自室のソファにしどけなくもたれ掛かった。特別仕立てのドレスがいつもよりずっと息苦しい。








 

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