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戦い
月夜の追いかけっこ
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僕とピッツが味方の砦目指して駆けていると、遠くから叫び声が聞こえた気がした。んんっ⁉︎今の何?僕はピッツの立髪を握り締めながらピッタリ身体をへばりつけていたのだけど、そろりと首だけ回して振り返った。
特に何か追いかけてくる気配は無かった。僕はホッとして、ピッツに耳打ちした。
『ピッツ、向こうの砦に近すぎると、敵だと思われて攻撃されるかもしれないから、あそこの森の側に降ろしてくれる?僕そこから戻るよ。』
僕たちは進路を変えて右手にある森の入り口へ向かった。僕はピッツから降りるとぎゅっと抱きついて言った。
『ありがとう、本当に。今夜のことは忘れないよ。ピッツ気をつけて戻ってね?』
ピッツは何だか目を潤ませてブルルと返事をすると、踵を返して自分の馬場へと戻って行った。僕は遠ざかるピッツの蹄の音を聴きながら、森に沿って味方の砦の方向へと周囲を警戒しながら歩き出した。
森には入らなくても魔物が月明かりに誘われて出てくるかもしれない。僕は、馬丁の宿舎に吊るしてあった草刈り用の小さな鎌の様なものを失敬して、背中に括ってあった。
流石に夜中で丸腰は怖すぎる。とは言っても、この鎌を使うことが出来るかと言うと自信がない。僕は刃物など全く必要の無い、平和そのものの世界の出身なんだから。
僕が鎌を手に、そろそろと森の縁を進んで行くと、蹄の音が響いてきた。僕は一瞬ピッツが戻ってきたのかと思ったけれど、それにしてはその音は重く響いた。
ハッとして、僕は森に入って、木々の影にしゃがみ込んだ。心臓の音が近づく何者かに聞こえるのでは無いかと僕は胸を押さえた。これが口から心臓が飛び出しそうという事なのかと、僕はまたもや現実逃避に勤しんだ。
目の前をガタイの良い騎士が走り抜けて行った。今のは…、アーサー?僕たちが抜け出したのを見られたのか?でも来る途中でピッツに会った筈だ。
追手はアーサーだけではなかったのかも?僕は息を殺してアーサーの消えた方向を見つめた。ああ、そっちは僕の進むべき道だ。ここの森はまだ敵の陣地だ。朝まで潜んで追手が沢山来たら、逃げ出せなくなる。
僕は意を決してゆっくりと草原を横目で見ながら、藪の中を進もうとした。けれどもそれは無理だった。薮は高くて、掻き分けて歩こうとすると、音も立てるし、何より僕自身が血だらけになりそうだった。
その時、通り過ぎた筈のアーサーが、こちらを見ながらゆっくりと戻ってきたんだ。ああ、もしかして僕見つかっちゃうの⁉︎
特に何か追いかけてくる気配は無かった。僕はホッとして、ピッツに耳打ちした。
『ピッツ、向こうの砦に近すぎると、敵だと思われて攻撃されるかもしれないから、あそこの森の側に降ろしてくれる?僕そこから戻るよ。』
僕たちは進路を変えて右手にある森の入り口へ向かった。僕はピッツから降りるとぎゅっと抱きついて言った。
『ありがとう、本当に。今夜のことは忘れないよ。ピッツ気をつけて戻ってね?』
ピッツは何だか目を潤ませてブルルと返事をすると、踵を返して自分の馬場へと戻って行った。僕は遠ざかるピッツの蹄の音を聴きながら、森に沿って味方の砦の方向へと周囲を警戒しながら歩き出した。
森には入らなくても魔物が月明かりに誘われて出てくるかもしれない。僕は、馬丁の宿舎に吊るしてあった草刈り用の小さな鎌の様なものを失敬して、背中に括ってあった。
流石に夜中で丸腰は怖すぎる。とは言っても、この鎌を使うことが出来るかと言うと自信がない。僕は刃物など全く必要の無い、平和そのものの世界の出身なんだから。
僕が鎌を手に、そろそろと森の縁を進んで行くと、蹄の音が響いてきた。僕は一瞬ピッツが戻ってきたのかと思ったけれど、それにしてはその音は重く響いた。
ハッとして、僕は森に入って、木々の影にしゃがみ込んだ。心臓の音が近づく何者かに聞こえるのでは無いかと僕は胸を押さえた。これが口から心臓が飛び出しそうという事なのかと、僕はまたもや現実逃避に勤しんだ。
目の前をガタイの良い騎士が走り抜けて行った。今のは…、アーサー?僕たちが抜け出したのを見られたのか?でも来る途中でピッツに会った筈だ。
追手はアーサーだけではなかったのかも?僕は息を殺してアーサーの消えた方向を見つめた。ああ、そっちは僕の進むべき道だ。ここの森はまだ敵の陣地だ。朝まで潜んで追手が沢山来たら、逃げ出せなくなる。
僕は意を決してゆっくりと草原を横目で見ながら、藪の中を進もうとした。けれどもそれは無理だった。薮は高くて、掻き分けて歩こうとすると、音も立てるし、何より僕自身が血だらけになりそうだった。
その時、通り過ぎた筈のアーサーが、こちらを見ながらゆっくりと戻ってきたんだ。ああ、もしかして僕見つかっちゃうの⁉︎
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