身一つで異世界に。 〜 何も持たない男が成り上がる。

モンド

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プロローグ

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「ウーさぶー!」
俺は肌寒さに思わず叫びながら飛び起きた。
探す布団(段ボール)が無かったからだ。
「ここはどこだ?」
公園の滑り台の下で寝ていたはずの俺は、周囲を見渡しながら自分の状況を確認した。
・周囲は鬱蒼とした森
・道や人工物及び人の姿は全く見えない
・俺は裸で草むらの上に寝ていたようだ、怪我はない
・周りに所持品や使えそうなものはない
「何で!裸なんだ?夜中に攫われて森に捨てられたのか?テレビのドッキリか?」
と叫んで周囲にカメラらしきものを探すが・・・ないな。人の歩いた形跡すらない。

落ち着いて昨夜のことを思い出そうとする、
「昨日は・・久しぶりの日雇いの仕事にありついて・・稼ぎの5000円を食事と・・酒を飲んで犬とカラスに餌を与えてから寝たよな?・・・おい、居るか?」
と言いながらいつも通りに捨て犬とカラスを呼んだ。

「ワン、ワン。」
「カー、カー。」
俺の足元に辛うじて面影があるが10倍位の大きさに膨れ上がった犬?と空から真っ黒い翼竜のような鳥?が舞い降りてきた。

「え!お前たちは・・・コロとカー子か?」
と恐る恐る声をかけると、コクコクト頷く2匹。
「え!俺の言葉が分かるのか?」
またもや頷く2匹・・・『そうなんだ』。

巨大になった2匹から丈夫な抜け毛と大きな羽根を貰い、簡易な服を作る。
毛は長さ30cm程であるが非常に丈夫で、俺では切ることすらできなかった。
羽は黒く濡れたような色で、これも4・50cmほどの大きさがあったので30枚も使うと全身を覆うマントのようになった。

するとそこに大きな蜘蛛の化け物が現れた!
「ええ!どうする。」
1人焦っていたが、2匹は仲良さそうにその蜘蛛と話している様子?
その蜘蛛をよく見ると・・・あれ、昨日助けた女郎蜘蛛か?
そう言えば昨夜、助けた蜘蛛が懐くから餌を与えながら名前を・・・
「おいらん、なのか?」
すると蜘蛛が右手を挙げて挨拶した。
「そうかお前も大きくなって・・なぜ俺だけ裸なの?俺も実は大きいの?」
と思いながら自分の身体を見るが、逆に細くなったような。

「ヒュー」
風が吹き抜け、思わず震える俺をみておいらんが糸で何かを編みはじめた。
ものの10分ほどで、見事なインナーを編みあげたのだ。
「サンキュー、おいらん。これあったかいな。」
コートの下に着込むと寒さが嘘のように遮断されて、とても肌触りがいい。
「サンキュー、おいらん。」
と言いながら人よりも大きくなった花魁の頭を撫でる。

この時から1人と2匹と1羽の変な共同生活が始まったのだった。


ーー ここはどこなの? ーー


俺らは先ずはここが何処なのか、近くに人がいるのか、居なければ拠点となる場所があるのか。
ということから確認しはじめた、何故だか2匹と1羽の意思が分かるようになった俺は
「カー子、周囲を探って人が住む場所があるのか、なければ水場や隠れ家になる場所はないか探してくれ。」
「カー」
「コロは、周囲に危険な生き物がいないか確認してくれ。」
「ワン」
「おいらんは、・・何か出来ることをしてくれ。」
「・・・」
と言いながら俺は薪や武器になりそうな物を探しはじめた。

手頃な木の枝を集め薪の準備をしてカー子の帰りを待つ、暫くするとカー子が空から舞い降りてきた。
「カーカーカ」
何となくカー子の言いたいことがわかった。
「近くに人の住んでいる気配はない、拠点となる場所があった。で良いのかな?」
「カー」
と鳴きながら頷くカー子。

するとコロも帰ってきた、その口には同じ位の大きさの猪?が咥えられていた。
「ソイツは狩りの獲物か?他に危険な物は居なかったか?」
「ワン」
と吠えながら頷くコロ。
おいらんを待ってからと考えていたら、俺の後ろに音もなく佇んでいた。
「おお!ビックリした。何だ?」
「おいらんか、それはなんだ?」
おいらんが背中に乗せていた糸でできた鞄を広げると、中から虹色のシャツとズボンが出てきたさらに肌着に靴下手袋まである。
「これ、俺に?」
おいらんは大きく頷く、俺は嬉しくて直ぐに身につけると
「これ肌触り最高だよ。」
とおいらんを撫で回していた。

その後コロの背中に乗りカー子の案内で移動するとそこには小さな滝と岩穴があった。
「こりゃー最高な場所だよ、カー子」
近くから石を集めかまどを作り薪をセットすると
「何か火をつける物はないか?」
と独り言を言いながら周囲を見渡していると、コロが口から火を吐いた。
「え!火を吐いた?大丈夫なのか?」
と思いながらも薪に火をつけてもらい、滝壺の中を覗き込むと魚がわんさか泳いでいた。
手掴みで10匹ほど鱒クラスの魚を掴み上げ、木串で刺して火の焚べ始めた。

焼いただけの川魚であったがとても美味しかった。
岩穴を確認すると深さが10mほど、カー子の羽で作ったコートを敷いて寝床を作るとゴロリと横になった俺は、そのまま意識を手放した。

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