土下座で女神に頼まれて仕方なく転生してみた。

モンド

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次の国、グリンランド王国

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ーー 次の国へ

ファーストは教会に戻ると、地下室に入り収納庫に魔物や獣の肉を詰め込み金庫に宝石などを放り込むと、シスターに薬と調味料の入った袋を手渡した。
「薬を飲め、まだお前には生きる必要があるだろう。」
と言うと
「俺はここを出る、次会う時までにここを立派な教会にしておくのだぞ。」
と言うと子供らに会うこともなく家を収納し飛び立った。


ファーストの次の目的地は、北の王国グリンランドだ。
そこにはダンジョンがあると言う。
「この世界のダンジョンを踏破するのもいいかもしれないな。」
と独り言を言いながら空を移動する。

サハラ王国とグリンランド王国との間には高く険しい山脈があった。
「ここはこの前の山と違って何かいるな、・・ドラゴンか?」
幾つもの山を越えたところで、下から強烈なブレス攻撃を受けた。
事前に危機感覚が反応していたので、問題なく防いだがなかなか強烈なブレスだった。
ファーストは興味を惹かれ、山に降りてゆく。

そこには10頭ほどの地竜が居た。
「この山は竜の巣か。」
一際大きな地竜に近づくと
「先程の挨拶はお前か?」
と聞いた、すると念話で
「挨拶か・・そうだわしが、ここの地竜の主のグランディアだ。お前は何者だ?」
と聞いてきた
「俺か、俺はファースト。女神の頼みでこの世界に来た男だ。」
と答えると
「女神の、そうかならば手は出すまい。好きにゆくが良い。」
と言うとそっぽを向いてもう話は終わったとばかりに眠り出した。
「身勝手なやつだな。」
と呟きながらファーストは、空に舞い上がった。
暫くすると今度は、飛竜が飛んできて攻撃をし始めた。
「鬱陶しいな。」
と呟くファーストは、真っ赤な飛竜に重力魔法をかけ地面に叩き落とすと、その首を切り落として収納した。
同じようなことが幾度かあり、収納の中にはかなりの数のドラゴンが溜まった。
「こいつらバカじゃないか?実力差もわからんのか。」
と独り言を言いながら山脈を超えた。


山を超えるとそこには緑豊かな大地が広がっていた。
山を越えるだけでここまで違うのかと思いながらファーストは、街を探し始める。

「あそこに良さそうな街が見えるな、あそこにしよう。」
と街を目指した。



ーー グリンランド王国の街スラクション


街は城塞都市のような佇まいであった。
「魔物が出るのか?」
と言いながらファーストは、門を目指して歩く。

門を潜る際に身分証に提示を求められ、ギルド証を見せて中に入った。

中々の賑わいのある街だが、冒険者が目立つな。
それが最初の感想だった。

取り敢えず冒険者ギルドにでも顔を出そうか。
13歳になったファーストは少しばかり、成長していた。

ギルドに入ると、他のギルドと同じように、むさくて男臭い匂いが充満していた。
「ここも風呂に入らない奴らばかりか。」
と愚痴りながら依頼の張り出されている壁を見ていると、声をかけられた。
「この辺りでは見かけないほど小綺麗な男だね。この街は初めてかい。」
とビキニアーマーを着込んだお姉様と黒いローブを着込んだ少女に剣を二本差しにしている革鎧の女性が立っていた。
「ん!俺にようかい?お姉さんがた。」
と声を返すと
「ふ~ん。威圧も効かないか。アンタいいね、ちょっと依頼を一緒に受けてみないか?」
と言われた、面白そうだと思ったファーストは
「いいぜ、でも俺はここの事何も知らん。それでいいか。」
と答えて、一緒の何かの依頼を受けると森に向かった。

馬車に乗り込み到着までの間にそれぞれの紹介をして、これから森でオークの集落を確認しに行くと聞いた。
「確認?討伐や殲滅ではないのか?」
と尋ねるファーストに
「あんた相当の自信家だね、オークの集落をこの人数で潰せるわけないだろ。」
と言われた、それがこの世界の常識かと思ったファーストだった。

移動の間、ローブの少女セシルがずっとファーストを見ていた。


森に到着して、4人は森の中に。地図を広げてリーダーの盾役レイチェルがこの辺りだと、地図の一角を示した。
そこに向かって移動する4人。
無言でハンドサインを使いながら移動する、手慣れた移動だ。

1時間ほどで目的の場所に近づいたようだ、ファーストは既に気配で気づいていた。
「あの向こうの谷にオークの集落があるはずだ、この辺りには見張りがいるから気をつけて行くよ。」
リーダーの言葉に頷き進む面々。

途中で3組ほどの見張りに遭遇したが、瞬殺するファーストの腕に驚愕していた3人。

「アレのようね。数はざっと200、オークキングすらいそうね。王国事案だわ。」
と言うと引き上げようとしたところに、悲鳴が聞こえてきた。
他所から戻ってきた10頭ほどのオークが、人の女性を5人ほど抱えて戻ってきたのだ。
「彼女らは苗床にされる運命ね、残念だけど助けられないわ。」
と悲しそうに言うと引き上げ始めた。
「俺はもう少しここに残るよ、ギルドには報告しておいてくれ。」
とその場に残った。女性らは何か言いたいようだがセシルが
「行きましょう。」
と声をかけて姿が見えなくなった。

ファーストは、既にオークの集落を殲滅することに決めていた、しかしそこに捕まった女性らを見て他にもいる可能性を考えた。
「ここは隠密行動でしょう。」
と言いながら隠匿のスキルを最大に上げて、潜入し始めた。

オークの目の前を歩いて通ってもオークはどれも気づかない。
女性らが運ばれた洞窟のようなものの中に入ってゆく。
部屋が幾つかに分かれていて、一つ一つ確認してゆく、
「ここは戦利品置き場か。収納収納。」

「ここは食料庫か食えねえな、毒を撒いておこう。」

「ここは偉そうなオークがいるな、倒しておこうか。」
「グラビティ(重力魔法)、エアー・カッター」
と続けざま魔法を唱えて首を切り落とすと収納する。
「ん!レベルが上がったな?何故だ」
と思いながら次の部屋に
「ここか。」
人の女性が20人ほど居たが、半分ほどは死にかけていた。
これでは助けてもダメだろうな、ファーストは10人に静かにとどめを刺して収納した。
残りの10人を助け出すと、その場から穴を横に掘り出した。
当然集落からの道は塞いでいる。

100m先に出口が出来て空の下に出れた。
ファーストは女性らに癒しの魔法を掛けると、食料を取り出して
「暫くここで待て、オークを片付けてくる。」
と言い残すと周囲を高い壁で囲った。

穴を戻り、オークの集落に戻ったファーストは、そこから鬼神のようにオークを狩り尽くした。
「231と穴のヤツで232頭か。そう言えばオークキングがとか言っていたが・・・どれだったんだ?」
と言いながらファーストは空に舞い上がり女性達の場所に舞い降りた。
驚きながらもファーストと気づいた女性たちは、その後森の外まで歩いて移動した。

森の外に出たとこで、ちょうどそこに馬車が来てレイチェル達が降りてきた。
「やっぱり助け出したのか。さあ馬車に乗りな街に戻るよ。」
と声をかけたレイチェルに促されて女性らはホッとした表情で馬車に乗り込んだ。

移動の途中ファーストは女性らに
「これはオークから取ってきた金だ、みんなで分けな。それと残りは死んでいたのだが身寄りや知り合いはいるか?」
と聞くと同じ村で攫われたと数人が答えるので、
「彼女らの遺体も持って来てるから、家族に返してくれこれはその分の金だ。」
と金を渡していた。

暫くすると、レイチェルが
「オークの集落はどうしたんだ?」
と聞くので
「殲滅したよ。1匹残らず。」
と答えると、信じられないと言う顔でファーストを見ていた。


ーー 冒険者パーティー「神の羽」のセシル    side


オークの集落を見つけ森から出る3人、レイチェルがセシルに
「どうしてあの男が残るのを許したの?」
「アイツ、彼女らを助け出そうとするよ、きっと死ぬ。」
と言い切るレイチェルにセシルは首を横に振りながら
「あの人は違うの。ドラゴン以上に怖い存在なの。だから問題ないし、私たちがいたら足手まといなの。報告したら戻って彼女たちを迎えてやればいいと思うの。」
と言うとそれ以上は語ろうとしなかった。

セシルは特殊な能力を持っていた、魔力が見えるのだ。
ギルドでファーストに気づいたのも彼女だった。
一度山脈でドラゴンを遠目で見たことがあった、その強烈な魔力は今でも忘れることはできない。
しかしギルド全体を覆うような魔力の奔流に気づいた時、ドラゴンとは違う安心を感じたのだ。

だからファーストと言う青年が
「大丈夫」
といえば大丈夫なのだ、ただそれだけなのだ。

彼女らは当初の計画通り、ギルドにオークの集落の位置と規模を報告すると、取って返すように森に戻った。

戻った彼女らはちょうど森から出て来たファーストと女性10人ほどを見つけた。
「大丈夫だったみたいね。」
とマールが先に降りて周囲を警戒し始めた。

その後は馬車で街に向かったが、その途中でファーストは彼女らに多くの金を手渡していた。

ギルドで、ファーストは10人ほどの女性の無残な遺体を取り出すと
「オークに殺された女達だ、彼女らが身元を知っている。手厚く弔ってくれ。」
と職員に幾らかの金を渡していた。

その後ギルマスの部屋に呼ばれ、オークの集落について聞かれた。
「オークの集落は、潰してきたから心配ない、攫われた女性も全て連れてきた。」
と言うファーストの言葉にギルマスは、不審な顔で
「200からのオークの集落を一人で潰しただと、信じられるか。」
と言うギルマスに
「自分ができないからと言って何故、俺ができないと思うのだ?お前は馬鹿か。」
と答えるファースト。
周りの3人も驚くがセシルだけは違う驚きのようだった。

「生意気なガキだな。」
とギルマスが立ち上がった瞬間。
「止めて!」
と言うセシルの声と、ギルマスがぶっ倒れるのが同時だった。

「何が起こったの?」
レイチェルが声を出す。
「馬鹿な男が弱いくせに俺に威圧をかけたから、威圧を返しただけだよ。死んではいない。」
と答えるファースト。
セシルはファーストを恐る恐る見ながら
「貴方は人の世界で暮らすには強すぎるの、貴方は誰なの?」
と力を絞って聞いた。

「ふ~ん。少しはわかるのか。俺はファースト、女神に呼ばれてこの世界を助けにきた者だ。俺に指図する者、行手を遮る者はこの世界には居ない。それだけのことだ、俺の用は終わった後はよろしく。」
と言うと唖然とする3人を置いて出て行った。

「女神に呼ばれた男?それはどう言う意味・・・勇者なの?」
混乱するレイチェルにセシルが
「勇者なんいう存在じゃないわ、彼は神に最も近い存在よ。」
と答えて汗を拭いた。
「怖かった。」
いまだに震える膝を押さえながら、セシルは殺されかかったギルマスを見ていた。
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