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森に拠点を作る
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ーー 拠点ができた、更に生きるための道具を作ろう
川から少し離れた山側に湯気が見える場所がある、時折硫黄のような匂いもする。
温泉があるようだ。
探す事2日、突然湧き出る温泉を複数見つけた、硫黄の塊と湯の花も見つけた。
「湯の花・・確かこれで皮が鞣せるはず。」
塩漬けにしていた熊の皮を水洗いして綺麗に油を削ぎ取ると、ミュウバンを加えた液をかけながら鞣していく。
途中からざらついた石で皮を扱き柔らかくしたのち水洗いして、木枠に伸ばすように貼り付け乾燥させる。
数日の作業だが上手くいけば毛皮の完成だ。
その後も大型の獣のような生き物を中心に狩り、毛皮や皮を採取する。
分厚い皮は柔らかくせずに形を決めると、固く鎧のように成形した。
ここまで来ると金属が欲しい。
ここで奇跡的な偶然が巡り合わせる。
モグラのような獣を見つけた時の話だ、石槍を突き入れるが全く刺さらないほど硬い皮膚を持つ生き物だった。
なんとか大きな石を叩きつける事で、仕留めることが出来たが捌くことが出来ない。
仕方なく口から出る血液を採取し飲んでみた。
[スキル錬金・抽出を手に入れました。]
とのメッセージじ、ひょっとしてと思いモグラのような生き物の死骸に手を付け、金属を抜き出すイメージを高めると。
手に重い感触が、そこにはみたこともない金属が塊になって乗っていた。
モグラのようなものは触ると柔らかく骨がないような状態に。
「これは使えるぞ!」
子供のように喜んだ俺はその時、年齢が45歳から20歳代まで若返っていた事に気づいていなかった。
その後もモグラのような生き物を捕まえては、謎金属を抜き取りながら肉を食ったら
[スキル穴掘りを手に入れました。]
と新たなスキルを会得した。
これは非常に有効なスキルで、自分が入るほどの穴を土を掻き取るような仕草で約1m掘ることが出来た。
適当な山肌にスキルを使い穴を掘っていく、30mほど掘った所で金属の層にぶち当たった。
スキルを使い抽出すると、シルバー色の謎金属だった。可能な限る抽出するとそれを持って拠点に帰った。
その他何種類かの鉱物から金属を抽出した俺は、小屋の中でその金属を整形する事にした。
先ずは金床と金槌を作る事にした。
一番堅そうな金属を手に目を瞑りイメージを固めて身体の中の何かを流し込むと、金属が柔らかくなった感じがしてそのまま形作る。
目を開けるとイメージ通りの物ができていた。
「これならイメージをだけでいいのか?」
そう呟きながら、剣や槍、小刀にナイフ、モリ、釣り針、縫い針などと考え付くほど作りながら、調理器具も作ってみた。
金属の武器や道具ができてからの生活は、断然豊かになった。
謎金属が細い糸のようにすることができることが分かったのだ。
やわらかいが切れない、丈夫な糸だ。
なめした革製品を縫製して、服や手袋、ブーツを作り上げ。
皮ベルトに剣や小刀を吊るして、皮袋を持って狩りに行く。
そして徹底的なスキルを手に入れる事になる。
袋を持つ獣を見つけた、様子を見ると大量の食料を腹の袋に入れているが、いつまで経っても一杯にならない。
「何か特別なスキル持ちか?」
新たに作った弓を使い遠方から狙う。
この辺りの生き物は小さいほど気配に敏感で、近付くことがむづかしい。
上手く矢が首に当たった。素早くそばに行き確保すると生き血をすすった。
[スキル収納を手に入れました。]
メッセージにガッツポーズの俺。
スキルを意識してその獲物をカバンに入れるイメージで、放り込むと獲物の姿が消えた。
取り出すイメージで手をカバンに差し込むイメージで手を握ると、獲物に触れ取り出すことが出来た。
何度か繰り返すとスムーズに出来るようになった。
この世界は「スキル」と「魔法」がある世界ではないか?
それなら出来るだけ多くの生き物のスキルを取得すればそれだけ生きられる。
俺はそれから更に狩りに精を出した。
ーー 初めての現地人。
この世界に来て早くも1年が経とうとしていた。
小屋は家と言えるほどに立派になり、着ている服や靴なども十分売り物になる完成度になった。
見つけた温泉を引いて露天風呂を増やしたりもした。
狩りも順調で罠との合わせ技で、かなりの大物も簡単に狩れるようになった。
そしてアイツとの出会い。
恐竜か?と思えるほど大きなトカゲの様な生き物。
こいつは体の表面がとても硬く、普通の剣では歯が立たなかった。
動きはそこまで早くない(自分と比べて)ので、目を集中的に攻撃を加え剣をいくつか持ち替えて攻撃してみた。
謎金属の剣に身体の中の何かを注ぎ込んで叩きつけると、嘘の様に硬い皮膚を切り裂き深々と切り裂いた。
「これなら勝てる。」
目を不思議金属の槍で潰してから、首をじっくり切り裂くと数回で切り落とせた。
吹き出す血液を浴びる様に飲むと
[スキル超再生・竜燐を手に入れました。]
「竜燐?コイツは竜なのか?」
収納して拠点に持ち帰り、肉を焼いて食べると
[スキル魔力増量・魔力超回復を手に入れました。]
[スキル物理耐性大・魔力耐性大を入手しました。]
とのダブルメッセージを聞いた。
そして翌日森の中を走っていると、遠くで人の声を聞いた気がした。
声がする方に向かって走ると、いつもの熊に襲われている少女を見つけた。
剣に魔力を注ぎ込み、後方から熊の首を一撃のもと斬り飛ばす。
ーー 襲われた少女。
「あーつ!ごめんなさい。」
思わず私は謝罪を口にして目を瞑った。
この森で、魔熊にであったら生きて帰れないというのは常識だ。
死の訪れを覚悟し少しでも痛みがない様に願っての、言葉だった。
「シュー。ドサ。」
不思議な音がして生暖かい雨が頬を濡らした。
目を恐る恐る開けると、噴水の様に首から血を噴き上げる魔熊。
首から上がなくその後ろに1人の少年が立っているのが見えた。
「え?魔熊はどうしたの?貴方は・・・助けてくれたの?」
理解がなかなか及ばないまま、汗を拭く様に顔の水気を手で拭くと、真っ赤だった。
「あ、魔熊の血。」
そのまま意識を失った。
目を覚ました私は、周りを確認しながら記憶を探る。
「確か魔熊に襲われて・・気がついたら、魔熊の首がなくて・・男の子がいて・・ええ?ここはどこ?」
周りを見回しながら体を見ると、上着が脱がされ頭も濡れていた。
「何が?」
と呟いているところに、先ほど見かけた少年が私に上着を持って現れた。
「気がついたみたいだね。血がついていたから髪と上着を洗っていたよ。」
と近くに服を干すと、肉を差し出した。
「あの熊の肉を焼いたんだ、意外と美味いからどうぞ。」
と串肉を差し出された、確かに美味そうな香りがする。
ごくりと生唾を飲み込み、私は受け取ると口にした
「美味しい」
おもおわず声が出るほど美味しかった。
あの悪魔の様な魔熊がこれほど美味しいなんて知らなかった。
ーー 初めての現地人は少女だった。
熊を収納すると、少女を見た。
意識を失っているが特に怪我はない様だ。
少女を担いで、拠点に向かう。
血で汚れている髪や顔を洗い、上着も脱がして血を洗い流しておく。
最近木の実で石鹸の様なものを見つけた、泡立ちのよく汚れも良く落ちるので重宝している。
服の血を洗い流し絞り、少女の近くに干しに向かうと。
目を覚ましてキョロキョロしていた、声をかけながら焼きたての串肉を差し出すと、うまそうに食べていた。
名前を聞くと「セレナ」と名乗り15歳の様だ。家は森の先にある開拓村の様で、20世帯が住んでいると教えてくれた。
「俺はこの森で多分1年ほど暮らしているが、君みたいな人は初めて見たがどうして?」
「この森にはあの魔熊の様な恐ろしい魔物が多く住んでいるので、滅多なことでは入らないんです。」
「それなら何を食べているんだ?」
「食べ物は森の浅いとこの獣や木の実、川や海の魚を主に食べています。」
「穀物、麦や米はないのか?」
「ここでは魔物が出てくるので、作っていませんが街ならば買うことが出来ます。」
「街まで遠いのか?」
「街までは馬車で3日ほどです。」
「お前はどうしてあそこで熊に襲われていたんだ?」
「私は母の薬を探しに森に入って、道に迷いその時あの魔熊に出会いました。」
「薬の素はなんだ?」
「この様な掌を広げた形の・・これです。どうしてこんなにここにあるのでしょう?」
「それは料理に使うと美味いから、よく取ってきている物だ。いるならやるよ。」
と言うと持っていた袋に詰めていた。
すでに日が暮れようとしていたので、
「明日には、村まで送ろう。」
そう言うと俺はセレナと言う少女を家に連れて行った。
「こんな所にこんな立派な家があるなんて。」
俺の自宅を見て驚いていた、どんなとこにこの子は住んでるんだ?
家の中を案内する、温泉を自宅内にも引いているので内風呂もある。
「なんて快適な家なの!お風呂まであるなんて。」
「ここに座りなさい、お茶を入れよう。」
と言いながらお茶っぱによく似た葉っぱを炒って作った、お茶葉にお湯を注いで湯呑みに入れて差し出すと。
「この器はどうやって作ったんですか?初めて見ます。」
と陶器を見たことがない様だ。
「美味しいわ、こんなお茶初めて飲みました。」
どんどんこの森から出たくなくなったな。
「貴方の名前を教えてくれませんか?私とあまり歳も変わらないと思うんだけど。」
と言われたところで、しばらく見ていないお手製の手鏡を見た。
「・・・何故だものすごく若い。15・6歳くらいにしか見えないし、髪の色が黒からシルバーに変わっている。」
ここのものを食べたからか?分からないが・・名前を聞かれたよな・・どうする。
「俺の名前は・・タケヒロだ。16歳だ。」
と言い切った。
「そう、タケヒロね。今更だけど助けてくれてありがとう。」
とお礼を言われた。
ーー 初めての村、そこは文化水準の低い開拓村でした。
「おはようセレナ、眠れたかい」
「おはようタケヒロ、とてもよく眠れたわ。お風呂もよかったし、ベットもふかふかで暖かくて。」
と喜んでいた様だ。
「朝食を食べたら村まで送るから準備してくれよ。」
と言いながら朝から肉と魚を並べると、どちらもペロリと平らげた。
「薬草以外に欲しいものはないのか?」
と言うと
「魔熊の肉が欲しいくらいかな。あの器も欲しいけど無理は言わないわ。」
と言いながら準備をそませたので、家を出て森を歩き始めた。
1時間くらい歩くと、確かに人が出入りした様な道を見つけた。
その道をたどり歩くと、森の外に出て遠くに柵で囲われた村が見えてきた。
「あそこかい?」
「ええあそこよ、お母さんが心配してると思うの。」
とここに来て心配顔を見せた。
柵の間に引き上げ式の木製の門があったその上に見張り台があり、男が立っていた。
「お、セレナじゃないか。昨日帰ってこないからみんな心配していたんだぞ。ん!その子は誰だ?」
「おはようございます、村長。昨日魔熊に襲われて、この子タケヒロに助けてもらったの。」
と答えると
「魔熊に襲われてよく無事でいられたな。」
と言いながら門を引き上げて村の中に入れてくれた。
「こっちよ、早く。」
と急かされながら歩く俺は、村の中の文化的低さにがっかりしていた。
一軒のあばら家に連れて行かれた俺は、
「ここが私の家よ、中に入って。」
「お邪魔します。」
と言いながら中に入ると中は、寝室と台所兼食堂に倉庫の3部屋だった。
トイレは裏にあり、風呂はなかった。
「その辺りに座っていてね。」
と言いながら薬を煎じ始めた。
「お母さん、心配かけてごめんね。これ薬よ。飲んで。」
と言いながら薬を飲ませていた様だ。
その時俺はあることを思い出した、森の獣が怪我や具合が悪い時に好んで食べていた花のことだ。
余分に取って収納していたのだ、お湯の残りを持ってきた湯呑みに注いでその花を漬ける。
十分成分が出たところで、お茶の葉を入れて味を整える。
寝室にそのお茶を持って入り、
「この薬も効果があると思うよ。」
とセレナに私ながら、薬を飲んでいる女性に頭を下げた。
「うん、ありがとう。お母さん彼が助けてくれたの。」
と声をかけた。
俺の湯呑みを受け取り匂いを嗅ぎながら、
「これも飲んで見て。」
と言われた母親は、湯呑みを見ながらゴクリと飲んだ。
しばらく様子を見ていると、
「なんだか調子が良くなった気がするわ、お腹が空いたみたい。」
と母親が言うのを聞いて俺は、セレナを手招きし
収納からまだ湯気の出ている魔熊の串焼きを乗せた皿を手渡した。
コクリと頷くセレナ、
「お母さん美味しい串焼きよ食べて。」
と差し出すと
「本当においしわ」
と食べ始めた。多分もう大丈夫だろう。
川から少し離れた山側に湯気が見える場所がある、時折硫黄のような匂いもする。
温泉があるようだ。
探す事2日、突然湧き出る温泉を複数見つけた、硫黄の塊と湯の花も見つけた。
「湯の花・・確かこれで皮が鞣せるはず。」
塩漬けにしていた熊の皮を水洗いして綺麗に油を削ぎ取ると、ミュウバンを加えた液をかけながら鞣していく。
途中からざらついた石で皮を扱き柔らかくしたのち水洗いして、木枠に伸ばすように貼り付け乾燥させる。
数日の作業だが上手くいけば毛皮の完成だ。
その後も大型の獣のような生き物を中心に狩り、毛皮や皮を採取する。
分厚い皮は柔らかくせずに形を決めると、固く鎧のように成形した。
ここまで来ると金属が欲しい。
ここで奇跡的な偶然が巡り合わせる。
モグラのような獣を見つけた時の話だ、石槍を突き入れるが全く刺さらないほど硬い皮膚を持つ生き物だった。
なんとか大きな石を叩きつける事で、仕留めることが出来たが捌くことが出来ない。
仕方なく口から出る血液を採取し飲んでみた。
[スキル錬金・抽出を手に入れました。]
とのメッセージじ、ひょっとしてと思いモグラのような生き物の死骸に手を付け、金属を抜き出すイメージを高めると。
手に重い感触が、そこにはみたこともない金属が塊になって乗っていた。
モグラのようなものは触ると柔らかく骨がないような状態に。
「これは使えるぞ!」
子供のように喜んだ俺はその時、年齢が45歳から20歳代まで若返っていた事に気づいていなかった。
その後もモグラのような生き物を捕まえては、謎金属を抜き取りながら肉を食ったら
[スキル穴掘りを手に入れました。]
と新たなスキルを会得した。
これは非常に有効なスキルで、自分が入るほどの穴を土を掻き取るような仕草で約1m掘ることが出来た。
適当な山肌にスキルを使い穴を掘っていく、30mほど掘った所で金属の層にぶち当たった。
スキルを使い抽出すると、シルバー色の謎金属だった。可能な限る抽出するとそれを持って拠点に帰った。
その他何種類かの鉱物から金属を抽出した俺は、小屋の中でその金属を整形する事にした。
先ずは金床と金槌を作る事にした。
一番堅そうな金属を手に目を瞑りイメージを固めて身体の中の何かを流し込むと、金属が柔らかくなった感じがしてそのまま形作る。
目を開けるとイメージ通りの物ができていた。
「これならイメージをだけでいいのか?」
そう呟きながら、剣や槍、小刀にナイフ、モリ、釣り針、縫い針などと考え付くほど作りながら、調理器具も作ってみた。
金属の武器や道具ができてからの生活は、断然豊かになった。
謎金属が細い糸のようにすることができることが分かったのだ。
やわらかいが切れない、丈夫な糸だ。
なめした革製品を縫製して、服や手袋、ブーツを作り上げ。
皮ベルトに剣や小刀を吊るして、皮袋を持って狩りに行く。
そして徹底的なスキルを手に入れる事になる。
袋を持つ獣を見つけた、様子を見ると大量の食料を腹の袋に入れているが、いつまで経っても一杯にならない。
「何か特別なスキル持ちか?」
新たに作った弓を使い遠方から狙う。
この辺りの生き物は小さいほど気配に敏感で、近付くことがむづかしい。
上手く矢が首に当たった。素早くそばに行き確保すると生き血をすすった。
[スキル収納を手に入れました。]
メッセージにガッツポーズの俺。
スキルを意識してその獲物をカバンに入れるイメージで、放り込むと獲物の姿が消えた。
取り出すイメージで手をカバンに差し込むイメージで手を握ると、獲物に触れ取り出すことが出来た。
何度か繰り返すとスムーズに出来るようになった。
この世界は「スキル」と「魔法」がある世界ではないか?
それなら出来るだけ多くの生き物のスキルを取得すればそれだけ生きられる。
俺はそれから更に狩りに精を出した。
ーー 初めての現地人。
この世界に来て早くも1年が経とうとしていた。
小屋は家と言えるほどに立派になり、着ている服や靴なども十分売り物になる完成度になった。
見つけた温泉を引いて露天風呂を増やしたりもした。
狩りも順調で罠との合わせ技で、かなりの大物も簡単に狩れるようになった。
そしてアイツとの出会い。
恐竜か?と思えるほど大きなトカゲの様な生き物。
こいつは体の表面がとても硬く、普通の剣では歯が立たなかった。
動きはそこまで早くない(自分と比べて)ので、目を集中的に攻撃を加え剣をいくつか持ち替えて攻撃してみた。
謎金属の剣に身体の中の何かを注ぎ込んで叩きつけると、嘘の様に硬い皮膚を切り裂き深々と切り裂いた。
「これなら勝てる。」
目を不思議金属の槍で潰してから、首をじっくり切り裂くと数回で切り落とせた。
吹き出す血液を浴びる様に飲むと
[スキル超再生・竜燐を手に入れました。]
「竜燐?コイツは竜なのか?」
収納して拠点に持ち帰り、肉を焼いて食べると
[スキル魔力増量・魔力超回復を手に入れました。]
[スキル物理耐性大・魔力耐性大を入手しました。]
とのダブルメッセージを聞いた。
そして翌日森の中を走っていると、遠くで人の声を聞いた気がした。
声がする方に向かって走ると、いつもの熊に襲われている少女を見つけた。
剣に魔力を注ぎ込み、後方から熊の首を一撃のもと斬り飛ばす。
ーー 襲われた少女。
「あーつ!ごめんなさい。」
思わず私は謝罪を口にして目を瞑った。
この森で、魔熊にであったら生きて帰れないというのは常識だ。
死の訪れを覚悟し少しでも痛みがない様に願っての、言葉だった。
「シュー。ドサ。」
不思議な音がして生暖かい雨が頬を濡らした。
目を恐る恐る開けると、噴水の様に首から血を噴き上げる魔熊。
首から上がなくその後ろに1人の少年が立っているのが見えた。
「え?魔熊はどうしたの?貴方は・・・助けてくれたの?」
理解がなかなか及ばないまま、汗を拭く様に顔の水気を手で拭くと、真っ赤だった。
「あ、魔熊の血。」
そのまま意識を失った。
目を覚ました私は、周りを確認しながら記憶を探る。
「確か魔熊に襲われて・・気がついたら、魔熊の首がなくて・・男の子がいて・・ええ?ここはどこ?」
周りを見回しながら体を見ると、上着が脱がされ頭も濡れていた。
「何が?」
と呟いているところに、先ほど見かけた少年が私に上着を持って現れた。
「気がついたみたいだね。血がついていたから髪と上着を洗っていたよ。」
と近くに服を干すと、肉を差し出した。
「あの熊の肉を焼いたんだ、意外と美味いからどうぞ。」
と串肉を差し出された、確かに美味そうな香りがする。
ごくりと生唾を飲み込み、私は受け取ると口にした
「美味しい」
おもおわず声が出るほど美味しかった。
あの悪魔の様な魔熊がこれほど美味しいなんて知らなかった。
ーー 初めての現地人は少女だった。
熊を収納すると、少女を見た。
意識を失っているが特に怪我はない様だ。
少女を担いで、拠点に向かう。
血で汚れている髪や顔を洗い、上着も脱がして血を洗い流しておく。
最近木の実で石鹸の様なものを見つけた、泡立ちのよく汚れも良く落ちるので重宝している。
服の血を洗い流し絞り、少女の近くに干しに向かうと。
目を覚ましてキョロキョロしていた、声をかけながら焼きたての串肉を差し出すと、うまそうに食べていた。
名前を聞くと「セレナ」と名乗り15歳の様だ。家は森の先にある開拓村の様で、20世帯が住んでいると教えてくれた。
「俺はこの森で多分1年ほど暮らしているが、君みたいな人は初めて見たがどうして?」
「この森にはあの魔熊の様な恐ろしい魔物が多く住んでいるので、滅多なことでは入らないんです。」
「それなら何を食べているんだ?」
「食べ物は森の浅いとこの獣や木の実、川や海の魚を主に食べています。」
「穀物、麦や米はないのか?」
「ここでは魔物が出てくるので、作っていませんが街ならば買うことが出来ます。」
「街まで遠いのか?」
「街までは馬車で3日ほどです。」
「お前はどうしてあそこで熊に襲われていたんだ?」
「私は母の薬を探しに森に入って、道に迷いその時あの魔熊に出会いました。」
「薬の素はなんだ?」
「この様な掌を広げた形の・・これです。どうしてこんなにここにあるのでしょう?」
「それは料理に使うと美味いから、よく取ってきている物だ。いるならやるよ。」
と言うと持っていた袋に詰めていた。
すでに日が暮れようとしていたので、
「明日には、村まで送ろう。」
そう言うと俺はセレナと言う少女を家に連れて行った。
「こんな所にこんな立派な家があるなんて。」
俺の自宅を見て驚いていた、どんなとこにこの子は住んでるんだ?
家の中を案内する、温泉を自宅内にも引いているので内風呂もある。
「なんて快適な家なの!お風呂まであるなんて。」
「ここに座りなさい、お茶を入れよう。」
と言いながらお茶っぱによく似た葉っぱを炒って作った、お茶葉にお湯を注いで湯呑みに入れて差し出すと。
「この器はどうやって作ったんですか?初めて見ます。」
と陶器を見たことがない様だ。
「美味しいわ、こんなお茶初めて飲みました。」
どんどんこの森から出たくなくなったな。
「貴方の名前を教えてくれませんか?私とあまり歳も変わらないと思うんだけど。」
と言われたところで、しばらく見ていないお手製の手鏡を見た。
「・・・何故だものすごく若い。15・6歳くらいにしか見えないし、髪の色が黒からシルバーに変わっている。」
ここのものを食べたからか?分からないが・・名前を聞かれたよな・・どうする。
「俺の名前は・・タケヒロだ。16歳だ。」
と言い切った。
「そう、タケヒロね。今更だけど助けてくれてありがとう。」
とお礼を言われた。
ーー 初めての村、そこは文化水準の低い開拓村でした。
「おはようセレナ、眠れたかい」
「おはようタケヒロ、とてもよく眠れたわ。お風呂もよかったし、ベットもふかふかで暖かくて。」
と喜んでいた様だ。
「朝食を食べたら村まで送るから準備してくれよ。」
と言いながら朝から肉と魚を並べると、どちらもペロリと平らげた。
「薬草以外に欲しいものはないのか?」
と言うと
「魔熊の肉が欲しいくらいかな。あの器も欲しいけど無理は言わないわ。」
と言いながら準備をそませたので、家を出て森を歩き始めた。
1時間くらい歩くと、確かに人が出入りした様な道を見つけた。
その道をたどり歩くと、森の外に出て遠くに柵で囲われた村が見えてきた。
「あそこかい?」
「ええあそこよ、お母さんが心配してると思うの。」
とここに来て心配顔を見せた。
柵の間に引き上げ式の木製の門があったその上に見張り台があり、男が立っていた。
「お、セレナじゃないか。昨日帰ってこないからみんな心配していたんだぞ。ん!その子は誰だ?」
「おはようございます、村長。昨日魔熊に襲われて、この子タケヒロに助けてもらったの。」
と答えると
「魔熊に襲われてよく無事でいられたな。」
と言いながら門を引き上げて村の中に入れてくれた。
「こっちよ、早く。」
と急かされながら歩く俺は、村の中の文化的低さにがっかりしていた。
一軒のあばら家に連れて行かれた俺は、
「ここが私の家よ、中に入って。」
「お邪魔します。」
と言いながら中に入ると中は、寝室と台所兼食堂に倉庫の3部屋だった。
トイレは裏にあり、風呂はなかった。
「その辺りに座っていてね。」
と言いながら薬を煎じ始めた。
「お母さん、心配かけてごめんね。これ薬よ。飲んで。」
と言いながら薬を飲ませていた様だ。
その時俺はあることを思い出した、森の獣が怪我や具合が悪い時に好んで食べていた花のことだ。
余分に取って収納していたのだ、お湯の残りを持ってきた湯呑みに注いでその花を漬ける。
十分成分が出たところで、お茶の葉を入れて味を整える。
寝室にそのお茶を持って入り、
「この薬も効果があると思うよ。」
とセレナに私ながら、薬を飲んでいる女性に頭を下げた。
「うん、ありがとう。お母さん彼が助けてくれたの。」
と声をかけた。
俺の湯呑みを受け取り匂いを嗅ぎながら、
「これも飲んで見て。」
と言われた母親は、湯呑みを見ながらゴクリと飲んだ。
しばらく様子を見ていると、
「なんだか調子が良くなった気がするわ、お腹が空いたみたい。」
と母親が言うのを聞いて俺は、セレナを手招きし
収納からまだ湯気の出ている魔熊の串焼きを乗せた皿を手渡した。
コクリと頷くセレナ、
「お母さん美味しい串焼きよ食べて。」
と差し出すと
「本当においしわ」
と食べ始めた。多分もう大丈夫だろう。
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