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第一章 誕生、転生
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吾輩は、猫で・・・あった。
今世は、ヒューマンと言う書生に似た者であるという。
名は・・・今世もまだない。
思えているのは、大きな甕の中で溺れた記憶と。
その後、真っ白い空間で美しいだけで表情の乏しい「女神」と自称する者に会ったことぐらいだ。
その女神なる者から、
「其方の魂はとても面白い。そこで其方の世界の女神に乞うて貰い受けた。今世はヒューマンとして我が世界で自由に生きてもらいたい、そこで何か望みはあるか?」
と聞かれた。
そこで吾輩は、
「この世界が以前の世界でないのであれば、吾輩は2本足で歩き手というもので物を作ってみたい。」
と答えたら、
「それは当然であろう。しかも今世は魔法も使えるぞ。」
と聞いたことのない「魔法」と言う言葉を言われたが、吾輩はそれがどんなものかさっぱりわからなかった。
ただ、「分かった。」と答えただけだった。
その後いくつかの確認と希望を問われたが、「お好きに」と答えたことだけは覚えている。
さて今の状態だ。
今世も吾輩は、何処ぞのジメジメした路地裏の隅で目を覚ました。
手足を確認すると!
前脚が・・手に、後ろ脚が人なるものの足に変わっていた。
更には身体は、子供なるものの大きさのようだ。
さらに確かめていると。
どうやら顔は、ヤカンのようにつるりと毛のない珍妙な姿に変わり、元の主人のような似合わぬ頼りない髭も生えていないようだ。
髭がないとどうにも不安であるが、と考えていると髭に変わる感覚が吾輩の中にあるのに気づいた。
この感覚があの女神なる者の言った「気配察知」というもののようだ。
吾輩は、急激な空腹を覚え、周囲に食べるものがないかと首を捻って見回したが、この身体の首はあまり回らないようで、身体ごと向きを変えねば真後ろがよく確認できなかった。
食べ物は、見当たらない。
尖った鼻をひくつかせ、吾輩は食べ物の匂いを調べていると。
『鷹の目を取得しました。幸運がカンストしました。』
と言う声が頭の中に響いた、鷹と言うとあの吾輩の天敵と言える鳥の一種では無かったか?
そう考えていたところ、突然視界が空高く舞い上がった。
吾輩の視界は、今いる場所の遥か上空に位置し、周囲を見渡そうとすると今度はクルクルと回り始めたのだ。
これはいい、食い物は何処だ?
と呟きながら周囲を見渡すと、今いる路地裏から50歩ほど陽に向かい進むと、何やら食べ物を売っている出店が数件並んでいるのが見えた。
視界を元に戻し、出店のあった方向に四つ足で進むと。
非常に進みにくい、そこで吾輩は二本足でバランスをとりながら、手を広げて歩くことにするとうまい具合に進むことができた。
ヒューマンと言うのは、書生の様なものなのだと改めて確信した。
そう言えば前世で書生らが「銭」なるもので、本や食い物を購っていたと耳にしたことがあった。
今世も多分銭が必要なのであろうが、吾輩にはその銭がない。
せめて残飯でもあさって、空腹を満たすことにしよう。
吾輩が気配を消しながら抜き足差し足で、食べ物屋と思われる出店の裏に近づくと。
「なんだお前!うん!・・・えらい痩せこけてるじゃねえか。ほれ、これでも食っとけ。」
と言うと出店のオヤジが、何かの串焼きを3本ほど差し出した。
おずおずと前脚をいや、手を差し伸ばしそれを受け取るとオヤジの様子を目の横にとらえながら、串を口に運んだ。
「ん!・・・美味い!」
思わずそう口にすると、それを見ていたオヤジが
「そうだろ、俺の串は世界一うまいんだから。小僧、そこで待っとけよ。」
と言うとオヤジは、串焼きをせっせと焼いては客に提供していた様だった。
その様子を見ていて吾輩は、銭を確認していた。
どうやらこの串は、一本が茶色の小銭3枚の価値がある様だ。
陽が通りの建物に隠れる頃、オヤジは吾輩に向かって、
「お前、どうせ住むとこもないんだろ?店を片付けるからてつだえ!」
と言うと「あれをそこに袋に。」とか「これをその木箱に。」と指図して、手伝いをさせ店仕舞いした。
その後、
「ついて来い。」
と言うとサッサと歩き出した、吾輩は慌ててその後を付いて歩き出す。
オヤジの背中を夕陽が照らす姿を見ると、何か暖かな感覚が吾輩を包む気がした。
「そら辺に座っとけ!」
ドアを開けオヤジはそう言うと、荷物を別の部屋に収めると、何かをし始めた。
此処はどうやらオヤジの棲家のようだ。
周りの家と比べると、やや大きいい感じがするが下女や書生の気配はしない。
食べ物屋と言うのは、書生や下女がいないものなのだと覚えた。
暫くするとオヤジが、
「腹減っただろ?飯にするぞ。」
と言いながらテーブルに幾つかの皿と、コップとスプーンを並べ始め吾輩に「空いてる席に座れ」と言うので、椅子に座るとスープを皿に注いでくれた。
「さあ食え」
と言いながらオヤジは、酒を飲みながらスープを飲んでいた。
その様子を見ながら吾輩もパンをスープに付けて、初めての食事という物を味わっていた。
しかし、椅子なるものは、座面の柔らかな部分に丸くなるならば良いが、自分の尻を木の板の上に乗せて座るなどと言う姿勢は、少々以後ごちが良くない。
などと思いながらも、満更でもないと思い始めていた。
今世は、ヒューマンと言う書生に似た者であるという。
名は・・・今世もまだない。
思えているのは、大きな甕の中で溺れた記憶と。
その後、真っ白い空間で美しいだけで表情の乏しい「女神」と自称する者に会ったことぐらいだ。
その女神なる者から、
「其方の魂はとても面白い。そこで其方の世界の女神に乞うて貰い受けた。今世はヒューマンとして我が世界で自由に生きてもらいたい、そこで何か望みはあるか?」
と聞かれた。
そこで吾輩は、
「この世界が以前の世界でないのであれば、吾輩は2本足で歩き手というもので物を作ってみたい。」
と答えたら、
「それは当然であろう。しかも今世は魔法も使えるぞ。」
と聞いたことのない「魔法」と言う言葉を言われたが、吾輩はそれがどんなものかさっぱりわからなかった。
ただ、「分かった。」と答えただけだった。
その後いくつかの確認と希望を問われたが、「お好きに」と答えたことだけは覚えている。
さて今の状態だ。
今世も吾輩は、何処ぞのジメジメした路地裏の隅で目を覚ました。
手足を確認すると!
前脚が・・手に、後ろ脚が人なるものの足に変わっていた。
更には身体は、子供なるものの大きさのようだ。
さらに確かめていると。
どうやら顔は、ヤカンのようにつるりと毛のない珍妙な姿に変わり、元の主人のような似合わぬ頼りない髭も生えていないようだ。
髭がないとどうにも不安であるが、と考えていると髭に変わる感覚が吾輩の中にあるのに気づいた。
この感覚があの女神なる者の言った「気配察知」というもののようだ。
吾輩は、急激な空腹を覚え、周囲に食べるものがないかと首を捻って見回したが、この身体の首はあまり回らないようで、身体ごと向きを変えねば真後ろがよく確認できなかった。
食べ物は、見当たらない。
尖った鼻をひくつかせ、吾輩は食べ物の匂いを調べていると。
『鷹の目を取得しました。幸運がカンストしました。』
と言う声が頭の中に響いた、鷹と言うとあの吾輩の天敵と言える鳥の一種では無かったか?
そう考えていたところ、突然視界が空高く舞い上がった。
吾輩の視界は、今いる場所の遥か上空に位置し、周囲を見渡そうとすると今度はクルクルと回り始めたのだ。
これはいい、食い物は何処だ?
と呟きながら周囲を見渡すと、今いる路地裏から50歩ほど陽に向かい進むと、何やら食べ物を売っている出店が数件並んでいるのが見えた。
視界を元に戻し、出店のあった方向に四つ足で進むと。
非常に進みにくい、そこで吾輩は二本足でバランスをとりながら、手を広げて歩くことにするとうまい具合に進むことができた。
ヒューマンと言うのは、書生の様なものなのだと改めて確信した。
そう言えば前世で書生らが「銭」なるもので、本や食い物を購っていたと耳にしたことがあった。
今世も多分銭が必要なのであろうが、吾輩にはその銭がない。
せめて残飯でもあさって、空腹を満たすことにしよう。
吾輩が気配を消しながら抜き足差し足で、食べ物屋と思われる出店の裏に近づくと。
「なんだお前!うん!・・・えらい痩せこけてるじゃねえか。ほれ、これでも食っとけ。」
と言うと出店のオヤジが、何かの串焼きを3本ほど差し出した。
おずおずと前脚をいや、手を差し伸ばしそれを受け取るとオヤジの様子を目の横にとらえながら、串を口に運んだ。
「ん!・・・美味い!」
思わずそう口にすると、それを見ていたオヤジが
「そうだろ、俺の串は世界一うまいんだから。小僧、そこで待っとけよ。」
と言うとオヤジは、串焼きをせっせと焼いては客に提供していた様だった。
その様子を見ていて吾輩は、銭を確認していた。
どうやらこの串は、一本が茶色の小銭3枚の価値がある様だ。
陽が通りの建物に隠れる頃、オヤジは吾輩に向かって、
「お前、どうせ住むとこもないんだろ?店を片付けるからてつだえ!」
と言うと「あれをそこに袋に。」とか「これをその木箱に。」と指図して、手伝いをさせ店仕舞いした。
その後、
「ついて来い。」
と言うとサッサと歩き出した、吾輩は慌ててその後を付いて歩き出す。
オヤジの背中を夕陽が照らす姿を見ると、何か暖かな感覚が吾輩を包む気がした。
「そら辺に座っとけ!」
ドアを開けオヤジはそう言うと、荷物を別の部屋に収めると、何かをし始めた。
此処はどうやらオヤジの棲家のようだ。
周りの家と比べると、やや大きいい感じがするが下女や書生の気配はしない。
食べ物屋と言うのは、書生や下女がいないものなのだと覚えた。
暫くするとオヤジが、
「腹減っただろ?飯にするぞ。」
と言いながらテーブルに幾つかの皿と、コップとスプーンを並べ始め吾輩に「空いてる席に座れ」と言うので、椅子に座るとスープを皿に注いでくれた。
「さあ食え」
と言いながらオヤジは、酒を飲みながらスープを飲んでいた。
その様子を見ながら吾輩もパンをスープに付けて、初めての食事という物を味わっていた。
しかし、椅子なるものは、座面の柔らかな部分に丸くなるならば良いが、自分の尻を木の板の上に乗せて座るなどと言う姿勢は、少々以後ごちが良くない。
などと思いながらも、満更でもないと思い始めていた。
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