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新領主会議とダメ女神

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ーー 青の休み

  新領主会議。

私は今回旧イーリッヒ侯爵地方の15の新領主と学園を卒業したばかりの、領主候補または年若い領主で集まり情報交換を行う、新領主会議を呼びかけた。
セガール王国内には大小80余りの領主が存在し、その内の30程を対象に呼びかけたのだ。
その結果呼びかけに応じた新領主は、20人。

今日はその20人で新領主会議を開くことにした。

集まったメンバーは、
・旧イーリッヒ侯爵地方から10人
・ケンドール公爵地方から7人
・サンドール侯爵地方から3人
であった。
当然この中には、私のクラスメイトのメンバーが入っている。

「今日集まってもらった皆様には、この新領主会議の趣旨をよく理解されてのものと感謝しております。
セガール王国内において、気候の変化がハッキリとしてきた今、それに対応した政策をする必要が今後の領地発展に繋がると、考えての呼びかけでした。
私は今まで開発改良した、領地を豊かにする手法を無償で公開する準備があります。
ただそれには私の指導を受けていただくと言う条件がありますが、効果については私が保証いたします。

そして毎年青の休みにこの会議を行なっていきたいと考えておりますので、ご賛同できる方は奮って参加をお持ちしております。」

と言う私の開会の挨拶から会議は始まった。

話し合われた議題は、
・農耕地の再生とその効果について
・農業の合理化と農具の開発指導
・食料備蓄のノウハウとその指導
・衛生的な街づくりと意識改革
・魔物対策と魔物に強い街づくり
・人材育成活動のノウハウ
・特産物の開発と販売路の拡大
これら7つについて、私は指導書を用意し説明を始めた。

「ここに書かれた手法や結果については、長いもので約10年間の実績があります。これから四季がハッキリしてくれば対応していない領地との差は、さらに明確なものと思われます。
特に旧イーリッヒ侯爵地方の領主の方は、参加されていない5つの領主の方と比べていただきたい。
元々同じ条件の地方であるのでその差が出るのかどうかで、私の提唱する領地改革が成功するものなのかが分かると思われます。

そして他の領主又は領主候補の方々は、従来のやり方と比べてどうなのかと正しい目で比べて欲しいのです。」

私は説明しながら、先ずは効果を見てくれるように強く言って発言を終えた。

その後は、新しいレシピの料理やお酒の見本を兼ねての、商品の見本市である。
仮組みの部屋を模した幾つかの見本の中に、貴族用、宿泊所用、厨房用、お風呂用、領民用のモデルルームを用意して、紹介しつつ実際に触れてもらったのだ。

「このお風呂の設備はとても魅力的ですな。」
「この寝具は素晴らしい。」
「これほどの物を領民に与えるのですか?」
「この白い食器は・・薄い石でしょうか?」
「これが水着・・これが防寒着。これは・・狩りようの装備と収納袋ですか。」
「この料理はうまいですな、特に酒も美味い。」
「また新しいケーキを作ったのね。」
などと参加した新領主達の反応は、予想以上にあったようだ。

その夜は迎賓館に泊まってもらい、いくつかの道具や家具を使ってもらった。
次に日の解散の際には、多くの取引の話が担当の家臣とされていた。

成功のうちに第一回の会議は終了した。


ーー エリス男爵新領主    side


新しく領地持ちとなった私は、一から始める領地経営に忙しい毎日を送っていた。
ここには箱物はほぼ出来上がっているが、それを使う人がいない。
直ぐに私は元のお仕えしていたエストニア伯爵様に、人材の提供をお願いした。
直ぐに私の求める以上の人材が送られてきて、領地経営はスムーズな出だしとなった。

そんな時にエストニア伯爵様から「新領主会議」なるものの参加を求める手紙が来た。
私は即日参加の返事を出すと共に、現在の問題事項をまとめ出した。


            ◇


会議当日。

エストニア伯爵領に集まった新領主達は全部で、20人。
旧イーリッヒ侯爵地方から10人が参加していたが、セガール公爵地方及びその寄子と言える領主たちは来ていなかった。
「当然かもしれないが・・・さらに力の差が広がりそうだ。」
と思わず呟いた。

会議の内容は、これからの領地開発のノウハウを無償で教えると言うもので、破格の条件だった。
そしてエストニア伯爵領では普通であり、私が手に入れたいと思っていた物を提供してくれると言う。
私は直ぐに可能な限りの購入を申し込んだ。
多分今年の黄の季節の穀物の収穫量はエストニア伯爵領と同じだけはあるはずなので、十分経営が成り立つ筈だ。

魔物対応についても、ギルドの経験上エストニア伯様のやり方や装備はとても優れたものだったと、実感していたので直ぐに取り入れることにした。当然いただいた人材の中にはそれができる者が多くいたので、これにつても問題ないだろう。

多くのお土産をいただき領地に帰る私は、明るい未来を手にとるように感じていた。


ーー エストニア伯爵   side

今回の新領主会議について、残ったいつものメンバーと領主代行のミカエル男爵を交えた検討会を行った。

「みんなから見た参加者の反応はどうだった?」
と私が問うと
「戸惑っている者が半分、やる気を見せているのが半分というところかな。」
とマッケンジー伯爵が言うとみんなも頷いた。
「来年の第二回目の会議の頃には、その結果が明らかになって参加する人数や意気込みが変わるんじゃないかな。」
とクロニアル伯爵が発言すると、「思う」と言う声が重なる。

「今回旧イーリッヒ侯爵地方の参加者で、エリス男爵がとても乗り気だったからその影響がいい方に向かうと思う。」
と私が言うと皆同意してくれた、そこのミカエル男爵が
「私は今回、セガール公爵地方の参加者がいなかったことに、とても危機感を王国として感じています。
今王国内の派閥は、ケンドール公爵とサンドール侯爵の共闘派閥とそれ以外のセガール公爵派閥という関係になりつつあります。
しかしこの関係は力が均衡していてこそ成り立つ関係です、今から先エストニア伯爵様の提唱する、領地開発の手法を取り入れるかどうかがその分岐点だと思っています。
これから先の貴族内の力関係次第では、国が割れる可能性があります。
来年はもっと積極的にセガール公爵地方の貴族に声をお掛けしましょう。」
と提案してくれた。

確かにミカエル男爵が言うことは起こりうる事だ、私もお父様やお母様にその事を頼んでみよう、と思うた会議であった。


ーー 青の季節。

残雪が消え完全に青の季節となったこの頃、私はいくつかの懸念事項があった。
それは
・季節がハッキリしたことで、農作物の生育に変化が現れそうな気がする
・女神が私を呼んだ理由が他にもあるなら、気をつける必要がある
・豊かになる国と貧しい国がハッキリしてくると、戦争というワードが出てくることが心配である。
これらが今懸念している事だ。

新領主会議に参加した領地の要請を受けて、私は指導に回る忙しい日々を送りながら、次第に気温の上がるのを肌で感じていた。

エリス男爵領に訪れた時は、初夏と言える気候になっていた。
「今年は早めに暑くなり出したですね。農作物の暑さ対策が必要になるかもしれません。」
と言いながら私は、自動で水を撒くスプリンクラーの試作品が完成したので、エリス男爵に使ってもらおうと持ってきていたのだった。
「これが自動で水を撒く・・スプリンクラーですか。」
と言いながら目を輝かせるエリス男爵。

茎を元気よく伸ばし始めた田畑を回りながら、スプリンクラーを設置してゆく。
さらに
「農作物だけではなく、赤の日の温度が例年以上に上がれば、領民や家臣にも体調を崩す者が増えてくると思い、その対処として・・・などを考えておいて準備していたください。」
と提言すると
「そうですか・・。直ぐに対処します。」
と答えてくれた。
これが今年の猛暑と言われた赤の日の、異常気象に対応できた領地とそれ以外の農作物の収量差に大きく関わっていた。

当然私は、ケンドール公爵を通じて同じような情報を共有していた。


ーー 魔素ではなく気候変動による生活の変化。

ここに、自分の管理する世界の様子を見ていた女神の一柱がいる。
「これからは私の神力を使うことなく生きていけそうね。さすが私だわ、あの子を連れてきて大正解。もう心配する必要ななさそうね。」
と言いながら何処かに姿を消す女神は、あのダメ女神。
この後、例年では考えられなかった異常気象で、この世界の生き物が苦しむことを全く考えていないまま何処かに姿を消した女神は、滅亡しかけた世界を見てどうするのであろうか。

「どうもこの頃の気候はおかしすぎる。これでは干ばつや洪水などの災害も予定していなけでばならないかもしれない。」
独り言を言いながら私は、それぞれに対処するための計画を実行することにした。


ーー 先ずは治水と土木工事から。


領内を流れる川を点検しながら、堤防を築いてゆく私。
これまでこの世界に魔物や魔王以外の天災は存在しなかった。
これは神の何らかの力があったのだと考えていた。
それがなくなったのであろう。

治水の目処がつくと私は、農業用の貯水池をいくつか作っていく。
それを見ていたミカエル男爵が
「エストニア伯爵様、ここまで準備する必要があるのでしょうか?」
と疑問を口にする。
「転ばぬ先の杖と言うものですよ。」
と答えて私はメンバーや新領主達に同じような準備をする様に情報を流した。


ーー 赤の休み。災害の始まり。


赤の休みに入ってから急に大雨が降り出した。
この世界の記録を見ても、川の氾濫という文字は見られない。
それが今回初めて世界を襲った。

各地で異常気象が起こり始めた、大雨が降る地方があれば、雨の降らない地方も。
まだそれほどまでの規模ではないが、準備のできていない地方は影響が大きく出たようだ。
大雨は川を増水させ、堤防を乗り越えて市街地までを湖にように変えていった。
農作物は流され、家屋も多くが被害を受けた。
私の注意を受けて半信半疑ながらも対処していた領地は、それほどの被害はなかったようで、それ以外の領地の被害を耳にして顔を青くしていたようだ。

やっと水が引いた青の季節の頃には一転、焼け付くような日差しが人や作物を責め立てる。
自動水撒き機を導入していた、エリス男爵領をはじめとした領地は、何とかその厳しい日差しを凌いでいるようだ。

これにより、この先数年後の予定の派閥の力の差が、あっという間に目前に迫ってきた。

王国は食糧不足になるのは間違いないと見て、緊急対策の重鎮会議を急遽行った。
被害のひどいのはセガール公爵地方の領地が中心で、それ以外の地方でもエストニア伯爵の情報をどの程度信じて対処したかで、その被害は変わっていた。

「今年の備蓄は足りそうか?」
と国王は宰相に問えば
「我が王国分については問題ありませんが、他国も同じような被害であると聞き及んでおります。今後の状況から目を離せないと考えております。最悪の状況を想定して、国境の警備を厳重にしようと思っております。」
と答えた。

「戦争」と言う文字が皆の頭に現れる。

セガール公爵がおもむろに立ち上がると、ケンドール公爵を見ながら頭を下げた。
「我が地方の貴族や領民を助けて欲しい。」
絞り出すような声に、その場の重鎮も目を見張る。
「くだらぬプライドで、我が地方は今年の食糧生産はほぼ皆無、さらに大水のため食料貯蔵庫も被害を受け、10日後の食糧も不足すると思われておる。どうか我が地方を助けて欲しい、このとおりだ。」
とさらに頭を下げた。

ケンドール公爵は、
「頭を上げて下さいセガール公爵。今回の災害は過去にも記録のないもの、仕方ありませんよ。たまたま我が息子が心配性で大袈裟に騒いでいたのが、上手くいっただけで私も信じられないほどでした。」
と言いながらセガール公爵に手を取り、支援の確約をしていた。

ケンドール公爵としては年々増加する備蓄の食料を、吐き出せる今回の災害を不幸中の幸いと考えていたのだ。
これが予想以上の好結果を生んだようだ。

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