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勇者ヒカルとレベル

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ーー トーラル王国の英雄 大剣のラルフと魔道士シルフ

トーラル王国は、巨大サンドワーム討伐を英雄ラルフと魔道士シルフに託した。
英雄ラルフは、トーラル王国軍軍団長のラルフ=ストライカー子爵の事。
二つ名は「大剣のラルフ」と呼ばれ、トーラル王国最強の戦士てある。

魔道士シルフは、王国軍魔道士長のシルフ=サファイア伯爵の事。
二つ名は「千の魔道士」と言われ全属性に近い魔法を使うと言われている。

両英雄のが率いる五千の兵が川を挟み魔物と対峙する。
魔物の先導者は真っ赤な目を持つアラクネ、巨大な蜘蛛の体に人の女性によく似た上半身が生えたような姿をして、人語を操る魔物である。
率いるサンドワームは、およそ20体いずれも長さ20mほどの巨大なミミズのような虫系の魔物である。

川を渡る橋は一本のみ、英雄ラルフが兵を率い渡河するのを千の魔道士シルフ率いる魔法士軍が、水魔法を使いサンドワームに攻撃を開始した。

サンドワームは、砂漠の魔物弱点は水、大量の水がサンドワームを襲う。
砂に潜り水を避けようとするサンドワームの下の砂地が、いつの間にか硬い岩盤に変わっていた。
「小癪な人間よ、ワレが人族を滅ぼしてくれる。」
激昂したアクネラが己の糸を飛ばし、川を単独で飛び越え始めた。

英雄ラルフは、水を浴び弱ったサンドワームに兵士と共に襲いかかる。
身体の太さ3m以上も有るサンドワームは、頭らしいものがないため切り裂き心臓を破壊しなければ倒せない。
巨大な丸太を尖らせたものを兵士が百人が1本抱えサンドワームの腹に突き刺す、体液を飛ばして苦しむサンドワームに2度3度と丸太を突き刺し、心臓を見つけたところで斬り飛ばすのだ。

2時間もすると半分以上のサンドワームが倒されていた。

その頃川を渡っていたアラクネは、川の上で火魔法をその体に浴びせられていた。
虫系の魔物の殆どが火の魔法に弱い属性がある。
アラクネもその例外でない、糸を燃やされ川の中央付近に浮いている状態で炎攻撃を受け、人型の上半身はほぼ消し炭のようになったアラクネは、未だ戦意を失わず。

とうとう川を渡り切った。
「魔物としてもあっぱれな奴、我が魔法で成仏するが良い。」
と言うと魔道士シルフが氷魔法を発動する。
弱り切ったアラクネにそれを交わす余力はなかった。
蜘蛛の体を凍り付かせとうとう討伐されたのだった。

その頃、サンドワームと戦っていた英雄ラルフらも最後のサンドワームを仕留めていたところであった。

こうしてトーラル王国は、魔王軍の第一波を見事殲滅したが、その被害は甚大なものであった。


ーー 西部大深林のサイクロプス


トラザール王国を壊滅させたサイクロプス率いる魔王軍は、進路を東に取りセガール王国へ侵攻し始めた。
魔物の数は約5000、全て大型の魔物で構成されたその軍勢は、速度こそ遅いが破壊力は絶大だった。

トラザール王国とセガール王国を隔てる大河を挟み、セガール王国軍と睨み合う中サイクロプスは、魔王軍の魔物に川を渡河するよう命じた。
5000もの魔物が一斉に川を渡り始めた。
「川を渡せるな!移動型バリスタで突き殺せ!」
王国軍の指揮官が命じる、強力なバリスタの丸太のような矢が魔物を串刺しにしていくが、あまりの数の多さに川を渡り切る魔物が1匹2匹と増えていく。

巨大な魔物は、王国軍を翻弄し始めた。
そこに連絡を受けて転移魔法でエストニア伯爵が現れた。
「勇敢なる王国軍よ、魔物から距離を取れ!」
と声をかけ、土魔法で魔物と王国軍に間を分断するエストニア伯爵。

十分な距離が空いたのを確認してエストニア伯爵は魔法攻撃に移る。
「ライジン」
未だ水の中の魔物も雨のように降り注ぐ雷に身体を撃ち抜かれ、次々に命を絶たれる。

そこに巨大なサイクロプスが現れる、身体から雷に打たれた煙を立てながら。
「お前がこの魔物を統べる者だな。」
エストニア伯爵の言葉に笑いながら、サイクロプスはその拳をエストニア伯爵に叩きつける。

「身体強化最大!」
エストニア伯爵は、その拳を片手で受け止める。
驚くサイクロプスの両足に目掛け大剣を振り抜く、膝から下を斬り飛ばされたサイクロプスが地面に倒れ込む。
その驚きの顔を上げたところにさらに剣を振り下ろすと、首が転がり落ちる。

これで魔物に統率は崩れ、後は騎士団の猛攻で魔物らは殲滅される。
サイクロプスの頭を収納したエストニア伯爵は、後を王国軍に任せ王城に転移する。

王城に戻ったエストニア伯爵は、すぐに報告に走る。
「報告いたします。西武方面魔王軍の討伐の応援に向かいましたエストニア伯爵、魔王軍を先導するサイクロプスを打ち倒しその後王国軍と共に魔王軍の魔物を殲滅いたしました。
これがその戦利品であるサイクロプスの首です、御改めください。」
と巨大な首を取り出して披露した。
「見事で有る、更なる魔王軍の進軍に備え警戒を命ずる。」
との言葉を受け王城を後にしたエストニア伯爵は、実家で有るケンドール公爵家に立ち寄る。

「父上、エストニア伯爵ただいま西部魔王軍の討伐より戻りました。」
「よし、それで成果は?」
「はい、トラザール王国を殲滅した魔王軍の大型魔物5000を国境近くの大河で会い見え、これを全て打ち果たしました。」
「見事で有る、我がケンドールの誇りとなる働き、さらなる働きを期待する。」
と公爵としての言葉を賜った後は、急に素に戻り
「怪我はないか?敵の大将は?」
「怪我はありません、敵大将は巨大なサイクロプスでありました。」
と答えると、「そうか」と頷く公爵であった。


ーー 聖皇国の勇者

聖皇国に古い祠を祀る教会がある。
神託を受けた教会関係者が、皇国内の捜索を始めた3日目にその少年を見つけた。

少年の名は、神童光(シンドウ ヒカル)15歳。
祠のそばで倒れているのを近くのみらの少女が見つけ、自宅で介抱していた。

目覚めた少年は、初めは驚きと警戒の色が強かったが、次第に落ち着きを取り戻し
「僕は、この世界の女神に呼ばれて来ました。この国の王に連絡してください。」
と言うのを聞き少女は村の教会の神父に連絡を取り今回の発見となった。

少年はすぐに聖皇国王都に連れられて、教皇様に拝謁すると現在の魔王軍との戦いの情報を教えられた。
「勇者よ、その方は未だ力不足である、来る魔王との戦いのためこの国で力をつけるが良い。」
と聖騎士団長に預けられた少年は、勇者として訓練を受け始めた。

ちょうどミセール王国が魔物に王都を襲われた頃の事。

「勇者どのかなり良くなって来ています。明日からは実践経験を積むために森に魔物を狩りに行こうと考えています。」
と聖騎士団長に言われた勇者は
「分かりました、レベルを上げたいと思います。よろしくお願いします。」
と了承した。

次の日、聖騎士の案内で勇者ヒカルは西部大深林近くに向かった。

「ここから先は魔物が出ます、まずは小物から倒していきましょう。」
と言う聖騎士団長の言葉に頷く勇者。
その日はおおよそ30余の魔物を倒し、レベルを15ほど上げた。
基礎身体能力が高い勇者は、レベル15であっても騎士の副隊長クラスに迫る能力を見せ始める。

「順調のようですな、目標はどこまで?」
その調子を見ていた宰相直属の部下が今後の予定を訪ねる。
「まずは私より強くなってもらわなければなりません。レベル目標は50です。」
この世界には種族限界のレベルがある、人種なら50である。
ただし勇者はその枠からはみ出した存在で99までのレベルを獲得し、さらに対魔王との戦いでは、2倍つまり198まで上がると言われている。
この世界最強の古竜がレベル200と言われるのでその次に高いレベルである。

それから3ヶ月かけて勇者ヒカルはレベルを50まで上げた後、限界突破の儀式を受ける。
教会にて司祭が勇者用の儀式を行い限界突破のスキルを得る。

その後また森に入り今度は、さらに強い魔物と戦いレベルを上げる。
さらに3ヶ月後、勇者ヒカルはレベル99の限界に達した。
そこでヒカルが聖騎士団長に尋ねる。
「ところで魔王はどのくらいのレベルを持っているのでしょうかそして、その配下の魔物は?」
「伝説によると魔王はレベル99~200の間と言われております。配下の魔物は99以下のものです。」
「と言うことは僕のレベルでもぎりぎりと言うところなんですね。」
「ハイなので勇者様には対魔王に専念できるように、パーティーを組んでもらいます。」
とこれからのことを教えてもらった。


ーー 勇者パーティー


その後聖皇国は勇者もパーティーを募集した。
「魔王を倒しため、勇者のパーティーメンバーを集めている。我はと思うものは聖皇国に来れ!」
と言う謳い文句で世界中の教会を通じて宣伝された。
当然セガール王国にもその連絡はきたが、国王は
「我が王国は、既に魔王軍を2つ討伐しておる。しばらくは内政の強化につからを入れる。」
と方針を決めて貴族からの参加はなかった、ただ冒険者についてはその限りではないが、なぜかセガール王国の冒険者は消極的だった。

その後各国から集められた能力自慢、武威自慢が集まり勇者パーティーが結成され、大森林を巡る魔王討伐の旅が始まったのだった。

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