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魔王軍との戦いセミール王国編

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ーー  ミセール王国王都における攻防戦


「お前!そこで何をしている。早く逃げろ!魔物がすぐそこまできているぞ!」
後抑えの騎士達が後方に弓を放ちながら魔物を抑えて、しんがりを務めている。
「私のことは構わないでください。門を閉めて結構です。」
と言い切ると、説得は無駄と思ったのか兵士らは外に出ると門を外から閉め始めた。


私の目の前に多くの魔物が姿を現し始めた。
逃げ遅れた王都民を助けることは既に無理な状況である。
私は魔力を高めてゆく、私の体から魔力が陽炎のように立ち上がってき始めた。
その姿を見た魔物が恐れ立ち止まり魔の前に山のように膨れ上がる。
小山のように集まった魔物に
「ライジン」
魔力を高めた雷撃を雨のように叩きつけた。

「「「グオオオオー」」」
多くの魔物の叫び声が聞こえた後、付近に静寂が訪れる。

次の魔物の群れが近づいて来る、私はまた魔力を高める。
同じことを5回繰り返したところで、魔物の数が急に減った。
「まだ魔王と思える相手を見ていないな。」
独り言を言いながら私は、人のいなくなった無人の王都を歩き西門に近づく。

西門の外にかなりの魔力を持つ存在がいるようだ。
門の外に出ると、頭にツノを持つ人型の魔物が立っていた。
「お前は魔王かそれともその配下か?」
と問えば、その魔物は
「俺は・・魔王の側近、四天王の一人ミニタウルスのガーリー。お前が我が配下を葬った者は?」
「ああそうだ、今度は私が相手だ。」
と言うと、ミノタウルスのガーリーと名乗った魔物は大きな斧を振り回しながら私に突進してきた。

私は収納から大剣を取り出すと、身体強化を最大にして真っ向から相手をする。
「ガキーン!」
激しい音と火花を散らしながら力比べになる。
背の小さい私が大きなミノタウルスの上からの力を、涼しい顔で受けながら押し返す。
まさか押し返されると思っていなかったミノタウルスは、タタラを踏んで驚きの目で私を見る。
しかしその隙を見逃す必要はない、私はそのまま神速の踏み込みでミノタウルスの面前まで移動すると下から掬い上げるように大剣を振り抜いた。

ミノタウルスの両手が斧を掴んだまま肘から先が空に舞い上がる。
その後を追うようにミノタウルスの頭が跳ね上がる。
頭と腕を失った大きな体が前のめりに倒れて、静けさが周囲を取り巻くように闇に包まれる。
私は頭と斧を収納すると転移魔法でセガール王国まで移動する。

王城に入り国王への拝謁を申し込む。
暫くして宰相が私を呼ぶ。
ついて行くと王の執務室であった。

「それで大森林はどうであったか?」
王の問いに
「はい陛下申し上げます。大深林まで我が領内に魔物の形跡なく、大森林を東に抜けたミセール王国側に魔物の大群が溢れ出た形跡が見つかり、その跡を辿ると王都に続いておりました。
「何!ミセール王国王都にか、それで?」
「はい、王都には西門付近から多くの魔物が侵入している状況で、王都の民は王都を捨てて北門及び東門から避難しておりました。」
「それでどうなった。」
「私は東門を閉めさせた後、東門の内側で魔物を待ちおよそ1万ほどの魔物を倒し、西門に向かいました。」
「何と1万もの魔物を倒したと。それで?」
「魔物を先導した者がいると確信していましたので、それを探すと。西門の外に一頭の巨大なミノタウルスがおりました。」
「ミノタウルスがその魔物の先導者か。」
と言うと国王に頷きながら
「私の問いにそのミノタウルスは、「俺は・・魔王の側近、四天王の一人ミニタウルスのガーリー。」と名乗りを上げたことから、私との一騎打ちと相成りました。そして私がそのミノタウルスを討伐して戻ってきたと言うのがあらましです。ミノタウルスの頭と斧をお確かめください。」
と言いながら収納から巨大な斧とそれを振るうことが当然のような巨大なミノタウルスの頭を取り出して見せると。

「よくやった、してその魔物が魔王ではないと言うことは、他にも魔物を先導する魔物が存在すると言うことで良いのか?」
と問う国王に
「確かなことはわかりませんが、多分そうだと思われます。」
と答えると
「他の大森林にもそのような存在がいて魔物を先導して人の世界を蹂躙する可能性もあるの。すぐに他の大森林にも兵士を派遣せよ。」
と国王は宰相に命じた。

「エストニア伯爵よよくミセール王国王都を守った。褒美は魔王討伐が済んだおりに渡そう。更なる助力を頼む。」
と言う言葉に私は頭を下げて承った。


ーー 西部大深林、砂漠地帯での異変


エストニア伯爵がセガール王国で報告を行っている頃、西部大深林でも魔物の大移動が始まっていた。その方向はトラザール王国方面。

大災悪が発生した地域に魔物は強く引き寄せられるようだ。
今度の魔物を率いるのは、巨大なサイクロプス。
1万を超える大型の魔物を従えて、トラザール王国へ侵攻し始めた。

更に時を同じくして、中央大森林北側の大砂漠に生息する巨大サンドワームの群れが真っ赤な目をしたアラクネに扇動されるように、トータル王国の人の街を目指して移動を始めた。

残る南大森林においても静かな変化が始まり出した。
南大森林に魔王は誕生していたのだ。
魔王は自分の部下の成長を待つため、南大深林での活動を抑制して、他の大森林と大砂漠に部下の魔物を操って、災悪を発生しているのだ。


トラザール王国とトーラル王国の同時魔物の進行は、エストニア伯爵の派遣を思い止まらせるには十分なものだった。
「エストニア伯爵よ暫くセガール王国から動くでない。セガール王国は大森林と大砂漠全ての挟まれた王国であり、いつ何処から魔物が侵攻してきてもおかしくない状況下にある。
よって貴公は暫く王国から離れることを自粛せよ。」
と言うのが王命であった。


エストニア伯爵は、各国の情報を集めることにした。
特にグスタタング王国には、南大森林の動向視察の強化を王女に依頼した。
法衣とは言え同国の貴族位を持つエストニア伯爵としては他国で一番気にかかる王国なのである。

日毎に魔物による被害が知らされて来る。
大砂漠の巨大サンドワームは川で行く手をがばまれているが何処までの多くの街や村を壊滅させている。

西部大深林から溢れ出た魔物は、トラザール王国内を壊滅的な被害に陥れている。
川がセガール王国とトラザール王国を隔てているものの、いつセガール王国側に魔物が進軍するかは不透明な状況。
セガール王国の王国軍は三方の大森林を警戒しながら、警戒中である。


そして僅か10日で、トラザール王国の壊滅の情報が流れてきた。
「トラザール王国の王都及び王国軍は、魔物と王都目前で戦い戦線を突破した魔物の群れが王都を蹂躙、王都と王城双方ともほぼ壊滅的な損害を受けた模様です。」
との報告が持たされた。


ーー 勇者は何処に


聖皇国の教皇の間。
「如何程の人が亡くなったことか、更に邪神の力が満ちてしまう。」
女神教の教皇は、現状を嘆くもどうすることもできなかった。

そこへ女神の神託を受けた巫女が姿を表す。
「教皇様、女神様からのご信神託にございます。」
「何!それで何と?」
「はい、ご神託では勇者を使わしたこれを育て魔王討伐に当たるように。」
「何と、勇者殿をか。分かったそれでどの国へ使わしたのか?」
「はい我が聖皇国にと仰せられました。」
「分かった、国内の情報を集めよ!勇者を探し出せ。」
と言う話が行われ、勇者探しがおこなわれ始めた。
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