天地創造から始まる物語。〜勇者より強い主人公は陰から助けようとするが・・・。

モンド

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女神の暗躍

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ー セブン  side


「さっきの人達は・・魔王を倒す勇者たちだったのかな?でも・・・やられかかっていたね。今代の魔王は強いようだ、僕も陰ながら手伝おうかな。」
と独り言を言いながら魔人3体を倒して得たレベルがとうとう限界に達した。

「ん!限界が伸びた?いや次の段階に至ったのか。亜神から幼神に変わっている。僕は神になるの?おかしいな。」
と自分のステータスを見ながら呟くセブン、神は人の世に出現し力を行使できないためセブンの存在はイレギュラーな存在なのである。

そして魔王軍も勇者たちもその事実を知らないまま時代は動き始める。

今日もセブンは日課のレベル上げのために魔の森を徘徊しながら強き魔物を探していた。
すると魔力溜まりを見つける、そこは祠のような入り口が地上に飛び出したような地下系のダンジョンだった。

「これがダンジョンか?よし今日からここを僕の修行場所にしよう。マーキングしていつでもここに来れるように、と。」
そんな独り言を言いながら周囲を見えないように隠蔽する。

次の日からセブンはダンジョン攻略にハマり出すのだった。


ーー 勇者  side


「まだまだだ!」
満身創痍の勇者は崩れそうになる身体を聖剣で支えながら振り絞るように叫びながら、魔の森での魔物狩りに挑んでいた。
今代の勇者は更なるレベルアップのために厳しい修行に身を置いていたのだ。

魔物のスタンピードがあると聞けば真っ先に向かい魔物を斬りまくった、強力な魔物が現れたと聞けば寸暇を惜しんで討伐に向かった。

勇者のレベルが上がると同じように評判も上がり始めた、そうすると勇者パーティーに参加を望む者が増え始める。
「まだダメだ、もっと強くなければ同じ轍を踏んでしまう。」
最近の勇者の決まり文句だ。

教会はそんな勇者の姿に
「もう少し勇者としての威厳を持ってもらわなければ、軽々しく他国に助成するものではなかろうに。」
と苦々しく思っているようだ。

教会はその一方で勇者を助けた子供の姿をした者を探していたが、ようとしてその者の情報は手に入れられなかった。



ーー 魔王軍  side


7人のうち3人もの魔人を失った今代の魔王は慎重になっていた。
「あれらを一瞬で斬り殺した者は誰なのか?まさか・・第一、第二、第三の魔人らではなかろうな?」
身内に疑いを持ち始めた魔王は自分のそばに残りの魔神を置き、遠征に出すこともなく魔王城に中で燻っていた。

それを見ていた第二、第三の魔人2人は
「どうやら今度の魔王様は臆病風に吹かれて外に出られぬようだ、我らが魔王様に代わり出た方が早くないか?」
「いや未だ早計、もう少し様子を見ようではないか。」
と話し合っていた。


第一の魔人は、何もせずただ魔王城に居座ったままだった。



ーー 創造神アテネ   side


「勇者はかなり苦労しているようですね。しかし魔人を討伐しているのが彼とは・・・ままならないものですね。人の力で人の生存圏を守らずしてこの後の安寧があろうと考えているのでしょうか?思い上がった者たちに少しばかり神罰を与えましょう、いつもの様に彼に依頼を・・・。」

創造神である女神は、直接自分の造った世界に手を出せないためセブンを使って運命を改変しようと考えていたのだ。

「しかし彼は私の予想を遥かに超えて強くなりましたね。私の計画では今の力を得るには2000年ほど必要だと考えていたのですか・・・地球の魂と私の魂のカケラを使ったために予想以上の魂となったようです。今後はこの手の手段は封印ですね。」
と呟きながらセブンの夢枕に思念を送った。



ー 天啓?使命?


セブンは自宅の寝室で魔力欠乏気味になりながら眠りについていた。
日頃から鍛錬をかかさぬセブンは眠る直前までダンジョンで魔力を行使して訓練を行なっていたのだ。

深い眠りに堕ちたはずのセブンの意識が鮮明に覚醒し始めると、創造神アテナが枕元に現れた。

「我が愛し子よ、聞きなさい。今から貴方に使命を与えます、勇者の障害となっている強欲な選民意識の人々の目を醒させ神への敬いを再認識させなさい。」
という内容の使命を与えて女神は消えていた。

翌朝目覚めたセブンは使命について考えていた。

「女神様からの依頼なので受けるのは構わないが・・・面倒な依頼だな。僕がしていると判らないようにしないと後々面倒だ、姿形を変えて任務をこなしてみよう。」
と呟くと
「創造魔法・・変化!」
と唱えると、そこには20歳ほどのガッチリとした若者が立っていた。

「・・・この姿でいいか、後は装備を変えて・・・先ずは教会からだな。」
と呟くと転移魔法で勇者が住む聖王国の王都に飛んでいた。


ー 聖王国王都


広く見事な石畳が王都中を走り、多くの人で賑わう市場には身綺麗な服を着た多くの聖王国民が買い物をしていた。

そこに見える者はほぼ人族で、多種族の姿は殆ど見受けられない。極小数の亜人と呼ばれる種族が首に隷属の首輪をして鞭で打たれ、みすぼらしい姿で主人である人族の命で働く姿が見られる。

聖王国は女神教を国宗としているが、完全に人族至上主義の国なのである。
たった350年ほどの間に女神の教えはいつの間にか歪められ人族以外の人種を下に見るようになっていたのだ。

女神の憂鬱の種の一つでもあるこの選民意識が、この世界をこの国を更には勇者パーティーを弱体化していたのだった。


満足な食事も睡眠も与えられないこの国の奴隷、つまりは亜人と呼ばれる種族は裏道を使い過酷な労働を強いられていた。
1人の獣人が疲労の為に荷物を担いだまま道端に倒れた。

獣人の歳は13歳、白狼族という獣人族の中でも力と素早さでは群を抜く種族であった。
そんな白狼族がなぜ今奴隷として死にかけているかといえば、3年前に冒険者に密猟されて売られたのだった。

そこに雇い主の人族が姿を現した。
「こんな所で死にかけていやがったか!全く役に立たぬ亜人が!」
と怒鳴りその顔を蹴り飛ばすもグッタリとした獣人は声ひとつ上げる力もなかった。
「もう使えないか、おいお前荷物を運んで来い。」
と連れていた他の獣人に言いつけると、倒れている獣人の従属の首輪に手を置き呪文を口ずさむと首輪を外してその場を立ち去ったていった。

残された獣人は解放されたのではない、奴隷契約で死を命じられたのだ。
ほぼ死にかけた獣人の命の炎が奴隷契約の力でさらに減少する、これを解除することが不可能であることはこの世界の常識であった。
故に誰もその獣人に手を差し出そうとする事もなくただ目を背けて日常をお送るのであった。


そこに1人の青年が姿をいつの間にか見せていた。
「これは酷い、女神様の子に優劣はないと言うのに。」
と呟くとその獣人を抱き抱え煙のように姿を消したのだった。


ー  白狼族の少女 side


私は白狼族族長の娘、名はまだない。
白狼族は10歳の誕生日に族長から名を授けられる、私はその前日に人族の冒険者に攫われたのだった。

あの日は翌日の命名式を控えて同じ日生まれの3人と命名式に必要な木の実を探しに森に入っていた。
木の実があるのは森の中心部、白狼樹と呼ばれる大樹が付ける木の実を自ら採取して、己の魔力をその実に注ぎ命名式の時にその実を神に供えるのだ。
そうして名を受けると白狼種としての力を受けることができるのである。

その為私は白狼族としての能力を手にしていない為、容易く冒険者に捕まったのだった。
一緒に捕まった2人も同じ、しかし2人ともすでにこの世にはいない。
私も今2人の元に旅立とうとしていた、するととても温かい魔力が私を包むと今まで私を苦しめていた飢え・痛み・疲労・睡魔・絶望が解けるように消えていって、私は久しぶりに穏やかに眠りについていたのだった。

とても久しぶりに気持ち良い目覚めをした私は大きく伸びをして目を開けた。
そんな私の目に飛び込んだのは見知らぬ天井だった。

「ここは?私は・・・!」
使いの途中で意識を失い倒れた記憶を呼び起こした私は、恐怖に突き動かされて寝ていたベッドから飛び起きて周囲に気配を探った。
何時もなら朝目覚めから鞭で打たれ殴られていた私は今の状況がよく分からなかった。
寝ていたのは人族が使う寝心地の良く清潔なベッド、着ている服も人族の着る品の良い服。
部屋も小綺麗な宿のようだ、身体の傷も汚れた体毛も綺麗になっている。

最近は女であることが分かり始めた身体を隠す為にあえて汚していた体毛が・・・身体中を洗われたようだ。
もう隠すこともできない、多分気付かれたのだろう・・だからこのような姿でここに居るのか?
『もう生きる希望もない、汚される前にいっそ死んでしまいたい!でもこの首輪が・・!』
そう思いながら首輪に手を伸ばすが、首輪がない。
『!どういうことなんだ。首輪が外れている?』信じられない気持ちで部屋の中を見渡す。

『ベッドがもう一つある、私は・・・また売られたのか?それとも魔法で縛られているのか?』
何も分からないがここから逃げることはできないのだろうとその場に座り込んでしまった。

今までの奴隷生活が彼女から生きる残る力を奪っていたようだ。


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