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謎が深まる少年と王都旅行

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ーー  レクレーションが終了した3日後の辺境伯の城の一室


「閣下報告します。」
興奮気味のサファイアが学校行事のレクレーションの様子を報告し始める。
次第に辺境伯の顔が険しく変わる、報告が終わり
「もう一度確認するが今の報告に間違いはないのだね。」
「はい間違いありません。信じられないことですが彼シャドー君は、王国内でも飛び抜けた魔法師でかつ魔道具製作者だと言いきれます、後調理の鉄人でもあります。」
と答えるサファイアに辺境伯は
「どうかね、私に支えると言うと思うかね。」
と確認の問いに
「確かにあれ程の魔法師であれば王国でも囲いたくなるでしょう。しかも彼ほどの腕があればどこか他の王国に出ることも可能でしょう。ですので出来ればお嬢様のお力を使って懐柔するのが良いかと。」
と答えるサファイアに
「やはりそうか。分かった今日にでもカレンに聞いたみよう。」
と答えた辺境伯。


その日の夕食時、カレンは父に
「カレン学校のレクレーションは如何だったかね?」
と聞かれて思わず興奮気味に事細かに話をし始めるカレンの言葉から辺境伯は、娘がシャドーという同級生に好意以上のものを抱いていると感じた。
「それではカレンに命じる、そのシャドーという同級生の心を掴んで私の元に連れて来なさい。期間は卒業までの間だ、できるね。」
と聞くと
「ええ、その下命確かに承りました。この身に代えても彼を虜にして見ます。お父様。」
というと力強く頷いた。

それを見ていた辺境伯婦人は
「まあ大変、それなら今から淑女の教育を早めなければいけませんわね。」
というとカレンは忘れていた物を思い出したように
「お母様、コレはシャドー君からの貰い物なのですが、とても美容に良い物なのでお母様もお使いになられませんか?」
と四種類のガラスの入れ物に入った物を侍女に持って来させて説明し始めた。
その後は2人して浴室に向かい長らく戻ってこなかった。


その夜、寝室に現れた妻を見て驚きと共に興奮した辺境伯がいたそうで、もう1人2人子供ができる可能性が生まれたとか。



◯   1学年3月目

 学校行事で修学旅行があるようだ、行き先は王国の王都で将来の為に王都を体験させるためだ。
まるで前世で体験した京都旅行のようだ、違う種類の教会なんかあるのかな?

旅行中は以前チームを組んだ4人で集団行動を取るという、自分たちの力で新しい街を開拓するのが目的のようだ。
僕は王都で家族のお土産を買うことにした、珍しいものがあれば良いのだけれど。


ー 出発の日

初夏の青空が旅立ちの日を喜んでいるような天気だ。
気持ちのよい風に少し熱が含まれだした。

大きなボストンバッグを抱えたカレンが汗を拭きながら現れた。
「カレン旅行には侍女やメイドは居ないんだぞ、そんな大荷物どうやって持ち運ぶつもりなんだよ?」
とカミュが声をかけると
「大丈夫よ、シャドー君が預かってくれるから、ね!」
と僕を見ながら笑顔を見せた。
「ああわかりましたよ、荷物は僕が預かります。」
と苦笑いしながら答えたところにチカがコレも大きなバッグを持って現れた、それを見た僕らは笑うしかなかった。

「ええ!?」
何がおかしいのか分からないチカは、改めて僕に近づくと
「シャドー君、お願いがあります。荷物・・」
「はいどうぞ。」
チカが言い終わる前に僕は荷物を収納した。
「あ!・・ありがとう。」
すかさずカレンが
「ね、言ったとおりでしょ。シャドー君は優しいから大丈夫だって。」
と言いながら2人はさっさと馬車に乗り込んだ。

顔を見合わす残された僕とカミュは、
「女性は荷物が多いからしょうがないかもね。」
と納得するのだった。


ー 往路行程


王都までは馬車で4日の行程だ、途中2つの貴族領を抜けて王都に入るのだが、二つとも辺境伯が寄親になっている男爵領と子爵領だ。

今日の宿泊は辺境伯領の端にある町アルファーだ。
街道沿いにある村で宿場町のような立ち位置で、旅館や料理屋が人口の割に多いのだ。

町で1番の旅館に案内された僕ら、というよりカレンかな。
「結構豪華な部屋ね。」
呑気なことを言うカレンにカミュが
「お嬢様は自分のお立場が分かっていないようですね。」
「カミュ君、どう言う意味ですの?」
「王都までの行程で立ち寄る宿泊所は皆、辺境伯の寄子なのでしょう。当然カレンお嬢様には気を使うでしょ。」
と当然のように答えるカミユにカレンは
「それは考え違いよ。多くのお金を落とすことが寄親の務めなのよ、気を遣っているのは私の方よ。」
「え、そうなんですか。コレは失礼なことを申し上げましたご容赦を。」
と素直に頭を下げた。
「ええ、受け入れましたわ。それじゃ食事にしましょう。」
と素早く切り替えたカレンが階下の食堂に向かうのを3人が後を追う。

まだ辺境伯の領内なので味はいつもの感があった。



ー 2日目


ガレロ男爵領の街に到着した、ここで一泊するのだ。

「ここは父と仕入れで一度訪れたことがあるんだ。」
とカミュが言いながら街のことを語った。
「男爵領だけどここはあそこに見える山で良い鉱石が取れるので裕福なんだよ。」
「鉱石と言うとミスリルなんかかな?」
僕の言葉にカミュが
「そうです、他に魔導鋼なんかもよく獲れると聞いてるよ。」
と教えてくれた、コレは帰りにでも仕入れをしようと僕は心にメモしていた。

夕方の食事の時にチカが
「味付けが辺境伯領と違いますね。」
と声を出すと
「おお分かるかいお嬢さん、ここいらでは畑が痩せているから濃ゆい味付けになるんだよ。」
と旅館のおじさんが答えてくれた。
鉱山があるための弊害なのかな?と思いながら僕は食事を楽しんだ。


ー 3日目


子爵領に入り風景自体が変わってきた、丘陵地隊のようであまり高い木などは見られなく遠くに美しい湖が見えてきた。
「あそこに見えるのがドリス子爵領自慢の湖だよ。」
と御者が説明してくれた。
「確か・・あの湖には、大きな魚がいて・・美味しいそうよ。」
カレンがそう追加で話をした、魚の名前が出なかったようだ。

夕食にはその大きな魚の姿煮が出てきた。
『コレはシャケだな。』僕はそう思いながら一口口に入れると、シャケだ。
「美味しい魚だね。」
僕が言うと皆も頷きながら無言で口を動かしていた。(カニかよ)


ー 4日目 王都


4日目の昼前に王都の街門を潜り王都の街並みが見え始めた。
天気に恵まれたおかげでほぼ予定通りの行程で王都についた一行は、辺境伯の王都別邸に荷を下ろした。
例年ここに宿泊しながら王都観光を楽しむのだ。


「良いですか、必ずチームで行動してください。何かあった時はこのメダルを見せて衛兵を呼びましょう。」
と引率の教師が念を押して、3日間の王都見学が始まった。
一応全員で見学をする場所もあるがそれは明日の午前中のこと、ほぼ自由行動だ。


遅めの昼食を摂りそれぞれチームごとに王都に向かう生徒たち。

僕達のチームはと言うと、
「先ずは教会に行きますわよ。」
とカレンが言う、王都にある創造神の教会は特別なのだと言う。
馬車を拾い教会へ向かう、王都は広い歩いては日が暮れると言われるほどだ。

1時間ほど馬車に揺られて教会に着いた、馬車で1時間、本当に広い。

馬車を降りると目の前に巨大な建物が・・「高い」。

「ここが教会よ、お布施をして祈りを捧げましょう。」
とカレンが皆を急かせて教会に入る。
流石と言うか荘厳な佇まいに神秘的な雰囲気が神秘的な演出を醸し出す。
「祈りの間で祈りますわよ。」
とカレンの後について祈りの間で祈りを始めると、突然全ての音と色が消えた。


「ようこそ我が愛子よ。楽しく生きているようで嬉しく思っています。今後も伸び伸びと生きてくださいね。」
と女神が微笑むといつの間にか元の祈りの間に変わっていた。


「次はギルドに行こうよ。」
僕が提案して馬車を拾い冒険者ギルドに向かった。

ギルドも大きな建物だった、見上げる建物に圧倒されながらドアを開けて中に歩を進める。
ここでの目的はレクレーションで狩った魔物と村で狩りをした魔物を買い取ってもらうことだ。
辺境伯では買取制限がかかったためここで売ることにしたのだ。
「どのくらいになるのか興味があるね。」
カミュが商人の子どもらしい意見を言いながら買取のカウンターに向かい
「魔物の買取をお願いしたいのですが。」
と声をかけると、担当の職員が不審な目をして
「子供が魔物だと、噛みつきネズミでも捕まえたか?」
とバカにした口調で僕らを睨みつけた、そこで僕らはメダルを取り出し見せながら
「ここでは狭いな、大量にあるからどこに出せば良いか案内してください。」
と言うと、職員はメダルに驚いたもののまた小馬鹿にした目で
「ここにだしてみろ!忙しいんだ早くしな。」
とイライラしながら言い出した。

僕は皆の顔を見ながら頷くと収納から次々に魔物を取り出し始めた。
「え!待て、待て、待ってくれー!」
小山のような魔物に職員が悲鳴を上げて騒ぎになった。

「何を騒いでいる!」
大柄な男が現れて職員に問うと、職員は
「この子供らが山のように魔物を出して私の仕事の邪魔をしたので叱るとこです。」
と嘘を言い始めたが、大柄な男は僕らのメダルを目にして
「お前、子供らのあのメダルを見ていながら適当な仕事をしていたのだろう。あのメダルが何か知っているんだろうな。」
と言う大型な男の問いに職員の男は恐る恐る
「あれは・・どこか地方の貴族領のメダルですよね。だからなんですか?」
と開き直る職員に大型の男は
「あれは辺境伯様のメダルだしかも一つは家族のメダル、高位貴族の子弟と言うことだ。しかもあの地には魔の森がある魔物の素材ならそこらの小物とは訳が違う、ここにでも出せと言ったんだろ。お前は引っ込んでいろ俺が対応する。」
と言って職員を下げると
「済まなかった、素材がまだあるなら裏で買い取るので収納し直して俺の後についてきてくれ。」
と頭を下げて裏に続く通路に歩き出した、僕は素早く魔物を収納すると4人で後をついて裏に向かった。

裏には大物の買取と解体場があり、多くの職員が魔物を解体していた。

「この一角に出してくれ。」
と言われ僕は次々に魔物を取り出していく。
「おいおい、まだ有るのか?コレはAランク・・コレも・・」
山を3つ作ったところで
「今回はコレくらいで良いか。」
と言いながら出すのをやめた僕に大柄な男は
「まだも持っているのか?コレだけの量でも2日は掛かるぞ、大丈夫か?」
と聞いてきたので
「3日間滞在するので大丈夫です明日の夕方来ますね。」
と言いながら僕らはギルドを後にした。


ーー 王都冒険者ギルドのギルマス 疾風のガム   side


俺は元Sランク冒険者のガム、今は王都の冒険者ギルドのギルマスをしている。

今日えらい男を見た、いや子供なのだが震えが止まらなかった。
職員が騒ぎを起こしていたので覗きに行くと、魔力の塊がそこに居た。
素知らぬ顔で話を聞くと子供らと軽く見た職員が横柄な態度をとったようだ。
辺境伯のメダルを持った者を軽く見る者はこのギルドには居てはいけない、あそこは魔の森を持つ貴族なのだから。

しかしあの小僧は、異常だった。
俺は鑑定が使えるが全く違うステータスしか見えなかった、多分偽装だろう。
しかもあの収納量まだ収納している様子だ、そして魔力の量・・・ドラゴンの前に立っていた気がした。
「シャドー・・・か。覚えておこう。」

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