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#2「ワンド鑑賞会」
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「うーん……なーんかきったないなー。なんか手に持った感じも馴染まないし」
カマロは片目を細めながら、ワンドの出来をそう表現してみせた。
「でも、それからはすごい魔力を感じるよ。それに秘められている魔力は、ここから眺めていても伝わってくるほどだ!現場の具合からしても、きっとそれは特殊な遺物であるに違いない」
カマロの傍には、カマロと同じように目を細めながらワンドを見つめるムーニャの姿があった。
「フムフム。なるほど。むっちゃんがそういうなら、間違いないな!」
カマロはおもむろにワンドの切っ先を口元にもっていき、それをまるで飴細工でもねぶるかのように舌の上で遊ばせてみせた。
「どうだい?どんな味がするんだい?」
「うーん……なーんかしょっぱいような辛いような……なんか、人間の汗の味に似てるよーな」
「間違いない。このワンドは龍の遺物に違いないよ! 何者かが龍の風に触れて、ワンドの姿に変えられてしまったんだ! おそらく元は人間の姿であったはずだよ!」
「ほえー。これもともと人間だったんだ。すんご。ワンドにされるとこんな味になるんだな~」
「ほら、これと舐め比べてみるといい」
ムーニャはマントの中から数種類のワンドを取り出すと、それをカマロに舐め比べてみるように促した。
ムーニャが差し出したワンドはどれも金属のようにテラテラと輝きを放っており、大きさもカマロが拾ったものと同じくらいで、形状もみないびつであった。
「あ、これむっちゃんがたまに使ってるやつじゃん!」
カマロは差し出されたワンドを一つずつ口の中に入れ、舌でねぶり始めた。
「うわ、なーんか血の味がするやつが混じってるぞ!? 味わいも深みがある感じだし、塩味もずいぶんと強いような」
「そのワンドも全部このあたりのおおまがポイントでムーニャが見つけたんだ。どれも人間由来のワンドだよ! でも、ワンドにされた状況によって形や味が随分と変わるみたいだね」
「ほえー! 同じ人間でも、ワンドにされた状況次第でこんなに味が変わるんだなー!」
「カマロンが見つけたワンドは現場の状況を見るに、苦しみはそれほど伴わなかったはずだよ。血の味がするって言ってたワンドを見つけた現場は、それはそれはひどい状態だったんだ」
「フムフム。つまり、ワンドにされた時の状態がそのまま味に出るってことなのか!」
「概ねそうだと言えるね。ただ、稀に例外が紛れていることがあるんだ」
ムーニャがおもむろに取り出したそれは、全体が深い紫色に包まれており、金色に輝く粒状の模様が無数に入ったワンドであった。
「これには腹痛のワンドと名付けたんだ」
「え! むっちゃんそれ、カマロが初めて見るワンドだぞ! しかも、すっごく変な名前のワンドだな~!」
「そうだとも! なにしろ、このワンドは取り扱いにとても注意が必要だからね!」
「へ~! なにがそんなに危険なんだ?」
「ムーニャはリクエストに応じて、この二つのワンドを使って、カマロンにちょっとした実験を見せてあげるよ! さあ、いでよゴイ!」
ムーニャは懐からもう一本のワンドを取り出すと、それを小気味よく振って見せた。
すると、ワンドの切っ先が薄っすらと白んでいき、次の瞬間には眩い閃光が霧散した。
ムーニャとカマロの眼前には焦げ臭い黒煙が立ちのぼっており、その黒煙の中からは男性の野太い咳払いの声が聞こえてきた。
「ゲホ、ゲホ!」
「え、え! むっちゃん! なんか煙の中から裸の人間が出てきたぞ!?」
「これはゴイのワンド! ワンドの中に閉じ込められた者の思念を呼び出し使役することのできるワンドなんだ! このワンドは、実験をするときにとても重宝するものだよ」
ムーニャはゴイのワンドを懐にしまうと、今度は腹痛のワンドを握りしめながら、その場にしゃがみ込み、マントの中から水筒とお椀を取り出した。
そして、取り出した水筒とお椀を地面に配置し、お椀の上に腹痛のワンドをかざしたかと思えば、ムーニャは自分の鉤爪を器用に操りながら、腹痛のワンドの表面を削り、その削りカスをお椀の中にぽろぽろと落とした。
「え、むっちゃんそれどうなってるの? もしかして削ってる?」
「これはこうやって使うワンドなんだ。いわゆる特殊型ワンドというやつだね」
ムーニャが腹痛のワンドを削り始めるやいなや、黒煙の中に現れた男性は、まるでうがいでもしているかのようなだみ声の悲鳴を上げながら、凄まじい形相で身悶えしはじめた。
その姿は、さながら鷲に頭を潰された蛇が路上でのたうち回っているかのようである。
「むっちゃん・・・なんか人間がむっちゃ苦しんでるぞ!」
「これが腹痛のワンドの効果なんだ! 目視できる範囲にいる誰かに腹痛を与える代物なんだよ! ただ、普段から使っていないと標的に対する精度が落ちてしまうんだ! だから扱いには注意が必要なんだよ」
「ほえー! すっご!」
「さあどうぞ! これが腹痛のワンドの味だよ」
ムーニャは腹痛のワンドの削りカスの入ったお椀の中に水筒から水を注ぎ入れ、それをワンドの切っ先で軽く混ぜると、どうぞと言いながらカマロに渡した。
「え、むっちゃん・・・これ、カマロが飲んでいいの?」
「もちろん。ムーニャ特製の、腹痛のスープだよ!」
カマロは手渡されたお椀に口をつけ、ムーニャ特製なのだという腹痛のスープを飲み干してみせた。
「・・・むっちゃん! これ、なんだかすっごく甘くて、いい匂いがするぞ! さっき舐めたワンドとは大違いだ! まるでハチドリから直接蜜をすすっているみたいだ!」
「これはとても特殊な部類のワンドなんだよ! このワンドを発見した現場はとても凄惨な状況で、立ち会った冒険家達は誰も触れようとすらしなかったんだ。でも、ムーニャだけは違った。ムーニャはこのワンドを見つけるやいなや、勇敢にもすぐさま味鑑定を行ったんだ!」
カマロは片目を細めながら、ワンドの出来をそう表現してみせた。
「でも、それからはすごい魔力を感じるよ。それに秘められている魔力は、ここから眺めていても伝わってくるほどだ!現場の具合からしても、きっとそれは特殊な遺物であるに違いない」
カマロの傍には、カマロと同じように目を細めながらワンドを見つめるムーニャの姿があった。
「フムフム。なるほど。むっちゃんがそういうなら、間違いないな!」
カマロはおもむろにワンドの切っ先を口元にもっていき、それをまるで飴細工でもねぶるかのように舌の上で遊ばせてみせた。
「どうだい?どんな味がするんだい?」
「うーん……なーんかしょっぱいような辛いような……なんか、人間の汗の味に似てるよーな」
「間違いない。このワンドは龍の遺物に違いないよ! 何者かが龍の風に触れて、ワンドの姿に変えられてしまったんだ! おそらく元は人間の姿であったはずだよ!」
「ほえー。これもともと人間だったんだ。すんご。ワンドにされるとこんな味になるんだな~」
「ほら、これと舐め比べてみるといい」
ムーニャはマントの中から数種類のワンドを取り出すと、それをカマロに舐め比べてみるように促した。
ムーニャが差し出したワンドはどれも金属のようにテラテラと輝きを放っており、大きさもカマロが拾ったものと同じくらいで、形状もみないびつであった。
「あ、これむっちゃんがたまに使ってるやつじゃん!」
カマロは差し出されたワンドを一つずつ口の中に入れ、舌でねぶり始めた。
「うわ、なーんか血の味がするやつが混じってるぞ!? 味わいも深みがある感じだし、塩味もずいぶんと強いような」
「そのワンドも全部このあたりのおおまがポイントでムーニャが見つけたんだ。どれも人間由来のワンドだよ! でも、ワンドにされた状況によって形や味が随分と変わるみたいだね」
「ほえー! 同じ人間でも、ワンドにされた状況次第でこんなに味が変わるんだなー!」
「カマロンが見つけたワンドは現場の状況を見るに、苦しみはそれほど伴わなかったはずだよ。血の味がするって言ってたワンドを見つけた現場は、それはそれはひどい状態だったんだ」
「フムフム。つまり、ワンドにされた時の状態がそのまま味に出るってことなのか!」
「概ねそうだと言えるね。ただ、稀に例外が紛れていることがあるんだ」
ムーニャがおもむろに取り出したそれは、全体が深い紫色に包まれており、金色に輝く粒状の模様が無数に入ったワンドであった。
「これには腹痛のワンドと名付けたんだ」
「え! むっちゃんそれ、カマロが初めて見るワンドだぞ! しかも、すっごく変な名前のワンドだな~!」
「そうだとも! なにしろ、このワンドは取り扱いにとても注意が必要だからね!」
「へ~! なにがそんなに危険なんだ?」
「ムーニャはリクエストに応じて、この二つのワンドを使って、カマロンにちょっとした実験を見せてあげるよ! さあ、いでよゴイ!」
ムーニャは懐からもう一本のワンドを取り出すと、それを小気味よく振って見せた。
すると、ワンドの切っ先が薄っすらと白んでいき、次の瞬間には眩い閃光が霧散した。
ムーニャとカマロの眼前には焦げ臭い黒煙が立ちのぼっており、その黒煙の中からは男性の野太い咳払いの声が聞こえてきた。
「ゲホ、ゲホ!」
「え、え! むっちゃん! なんか煙の中から裸の人間が出てきたぞ!?」
「これはゴイのワンド! ワンドの中に閉じ込められた者の思念を呼び出し使役することのできるワンドなんだ! このワンドは、実験をするときにとても重宝するものだよ」
ムーニャはゴイのワンドを懐にしまうと、今度は腹痛のワンドを握りしめながら、その場にしゃがみ込み、マントの中から水筒とお椀を取り出した。
そして、取り出した水筒とお椀を地面に配置し、お椀の上に腹痛のワンドをかざしたかと思えば、ムーニャは自分の鉤爪を器用に操りながら、腹痛のワンドの表面を削り、その削りカスをお椀の中にぽろぽろと落とした。
「え、むっちゃんそれどうなってるの? もしかして削ってる?」
「これはこうやって使うワンドなんだ。いわゆる特殊型ワンドというやつだね」
ムーニャが腹痛のワンドを削り始めるやいなや、黒煙の中に現れた男性は、まるでうがいでもしているかのようなだみ声の悲鳴を上げながら、凄まじい形相で身悶えしはじめた。
その姿は、さながら鷲に頭を潰された蛇が路上でのたうち回っているかのようである。
「むっちゃん・・・なんか人間がむっちゃ苦しんでるぞ!」
「これが腹痛のワンドの効果なんだ! 目視できる範囲にいる誰かに腹痛を与える代物なんだよ! ただ、普段から使っていないと標的に対する精度が落ちてしまうんだ! だから扱いには注意が必要なんだよ」
「ほえー! すっご!」
「さあどうぞ! これが腹痛のワンドの味だよ」
ムーニャは腹痛のワンドの削りカスの入ったお椀の中に水筒から水を注ぎ入れ、それをワンドの切っ先で軽く混ぜると、どうぞと言いながらカマロに渡した。
「え、むっちゃん・・・これ、カマロが飲んでいいの?」
「もちろん。ムーニャ特製の、腹痛のスープだよ!」
カマロは手渡されたお椀に口をつけ、ムーニャ特製なのだという腹痛のスープを飲み干してみせた。
「・・・むっちゃん! これ、なんだかすっごく甘くて、いい匂いがするぞ! さっき舐めたワンドとは大違いだ! まるでハチドリから直接蜜をすすっているみたいだ!」
「これはとても特殊な部類のワンドなんだよ! このワンドを発見した現場はとても凄惨な状況で、立ち会った冒険家達は誰も触れようとすらしなかったんだ。でも、ムーニャだけは違った。ムーニャはこのワンドを見つけるやいなや、勇敢にもすぐさま味鑑定を行ったんだ!」
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