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12. ピロートークの逡巡 ※
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●ピロートークの逡巡
しばらくの間、2人は動かず、ただ息を整えていた。やがてタカシが優しくナツの髪を撫でると、ナツの体から離れ、避妊具を外した。それを見てとったナツは体を起こし、タカシのものを口に含んだ。
「え?ナツ…?」タカシは驚いたが、ナツの情熱的な奉仕に身を委ねた。
タカシはナツの髪を優しく撫で、「ありがとう、ナツ」と囁いた。
ナツは自分でも驚いていた。こんな行動をとるなんて、以前の自分では考えられなかった。
タカシの熱いものを口に含みながら、ナツは考えていた。自分のセックスに対する姿勢は大きく変わってしまったのかも。いや、むしろ、これがほんとの自分だったのかもと。
タカシの白濁した男の精を絞り取ってしまうと、ナツは、横たわるタカシの胸に頬を寄せた。心地よい温もりと、彼の鼓動が伝わってくる。
「ナツ…こないだの話だけど…」
タカシの言葉がナツを現実に引き戻した。
「うん…」
ナツは小さく返事をした。胸の中で複雑な思いが渦巻いている。
「結論を急ぐつもりはないんだけど…。今はどう思ってる?」
タカシの言葉に、ナツは一瞬息を呑んだ。彼の腕の中で、微かに体が震える。
「タカシ…私…」
言葉につまるナツ。どう答えていいか分からない。
「分かってる。君には旦那さんがいるって。でも…」
タカシは言葉を探すように少し間を置いた。
「俺は本気なんだ。中学生の頃から、ずっと…」
その言葉に、ナツの心臓が高鳴った。中学生の頃の初恋の記憶が蘇る。
「タカシ…私も、あの頃のこと覚えてる。でも…」
ナツは言葉を選びながら、ゆっくりと話し始めた。
「私には夫がいるの。確かに…浮気されて、今はぐらついてる。でも…」
タカシの胸から顔を離し、彼の目を見つめる。
「『付き合う』って言われると、何か違和感があるの。夫もいるし…」
タカシは黙ってナツの言葉に耳を傾けていた。
「分かった。無理強いはしない」
タカシはそう言いながら、優しくナツの髪を撫でた。
「でも、また会えるよね?」
ナツは少し考え込んだ後、小さくうなずいた。
「…うん、会いたい」
タカシの顔に安堵の表情が浮かぶ。
「ありがとう。次は何がしたい?」
その言葉に、ナツは少し考え込んだ。そして、思い切って聞いてみることにした。
「タカシ…本当に私でいいの?」
「え?」
「だって、タカシはすごくモテそうだし…他に相手がいるんじゃない?」
タカシは驚いたような表情を浮かべた。
「いないよ。今は君のことしか考えられない」
その言葉に、ナツは少し安心したような、でも同時に不安も感じた。
(本当に嘘はないのかな…)
ナツの頭の中では、タカシの言葉の真偽を探ろうとする思考が巡っていた。
(こんなに上手なのは、やっぱりたくさんの女性と経験を積んできたからなのかな…)
そんな疑念が頭をよぎる。でも、それを口に出すことはできなかった。
「そう…」
ナツはそう言って、再びタカシの胸に顔をうずめた。温かい体温と、彼の心臓の鼓動。
「ねえ、タカシ」
「ん?」
「私のこと…どう思ってるの?」
タカシは優しく微笑んで、ナツの髪を撫でた。
「ナツは…俺の忘れられない、初恋の人だったよ。そして、こうやって改めて巡り合って、また恋に落ちちゃった。あの頃のナツと変わらない部分も好きだし、変わった部分も好きだよ」
そういうと、タカシはナツを見つめ、そっと唇を重ねた。柔らかく、優しいキスだった。
「ナツ…俺は本気だ。君のことが好きだ」
タカシの真剣な眼差しに、ナツは胸が高鳴るのを感じた。でも、同時に現実も突きつけられる。
「私も…タカシくんのことが好き。でも、今の私には夫がいて…」
タカシは優しく頷いた。
「わかってる。焦らないでほしい。俺は、こうやってたまに会えるだけで嬉しいんだ」
ナツは感謝の気持ちを込めて、タカシに寄り添った。タカシの腕の中で、安らぎと不安が交錯する。ナツの心は、まだ揺れ動いていた。
●翌朝の心変わり
翌朝のナツは、重苦しい気分とともに目覚めた。昨夜の出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。タカシの優しい手触り、熱い吐息、そして二人の体が重なり合う感覚。それらは確かに心地よかったが、今となっては罪の意識が全てを覆い隠していた。
(私...何てことを...)
ナツは布団で顔を両手で覆う。確かに夫のユウトとの関係は冷めきっており、結婚という誓いを先に破ったのは彼のほうだった。それでも自分も結婚という誓いを、自分も破ってしまった。それも1度ならずとも2度までも。その事実は重く、今ナツの心を押しつぶそうとしていた。
ラブホテルのレシートの件以後、別室で寝るようになったユウトを、それでも刺激しないようにそっと起き出し、化粧室に向かった。情事の痕跡は昨晩帰ってすぐに洗い流したつもりだったが、鏡に映る自分の姿を見つめると、昨夜の情熱の痕跡がまだ残っているような気がした。
(これ以上...深みにはまるわけにはいかない)
ナツは決意を固めた。タカシとの関係は、ここで終わりにしなければ。スマートフォンを手に取り、謝罪の言葉とともに別れを告げるメッセージを送信した。送信ボタンを押す指が震えた。
しばらくして、タカシからの返信が届いた。タカシは理解を示しつつも、最後に一度だけ約束通りのデートをしたいと申し出てきた。確かに、最後のお別れをする機会としては適切なのかもしれない。しかしもう一度タカシに会って、また同じ過ちを繰り返さない自信が自分になかった。迷った末、ナツは返事をせず、スマートフォンを置いた。
●崩れ去った束の間の平穏
数日が過ぎ、ナツの日常は元に戻りつつあった。職場に行って仕事をし、自宅に帰って家事をし、ユウトとつかの間の会話を交わす。しかし、その平穏は長くは続かなかった。
ある日、家の掃除をしていると、ゴミ箱の中に破られた紙くずを見つけた。普段なら気にも留めないことだったが、最近のユウトの様子と重ね合わせると、どうしても気になってしまう。
(まさか...)
不安な気持ちを抑えきれず、ナツは破られた紙片を丁寧につなぎ合わせた。気の遠くなるような作業だったが、終わってみると、クレジットカードの明細書が現れた。1つ1つの明細を確認していくと、怪しい明細が1件。「レストランXX」とあるものの、ネットで検索してもそんな名前のレストランが存在しない。しかもその日付はラブホテルのレシートの一件があった日以降の日付で、カレンダーと照らし合わせてみると、ユウトが遅く朝帰りをした日と一致していた。ナツは意を決して、すぐにQ&Aサイトで匿名のアカウントを作成し、明細の名前について尋ねた。
ほどなくして返事があった。ラブホテルはクレジットカードの明細にレストランの名前を騙ることがあり、「レストランXX」はまさに都内のとあるラブホテルチェーンが明細に使用する名称だという回答だった。
「やっぱり...」
胸の中で何かが音を立てて崩れ落ちる感覚。ナツは椅子に座り込み、しばらくの間、何も考えられなくなった。
しばらくの間、2人は動かず、ただ息を整えていた。やがてタカシが優しくナツの髪を撫でると、ナツの体から離れ、避妊具を外した。それを見てとったナツは体を起こし、タカシのものを口に含んだ。
「え?ナツ…?」タカシは驚いたが、ナツの情熱的な奉仕に身を委ねた。
タカシはナツの髪を優しく撫で、「ありがとう、ナツ」と囁いた。
ナツは自分でも驚いていた。こんな行動をとるなんて、以前の自分では考えられなかった。
タカシの熱いものを口に含みながら、ナツは考えていた。自分のセックスに対する姿勢は大きく変わってしまったのかも。いや、むしろ、これがほんとの自分だったのかもと。
タカシの白濁した男の精を絞り取ってしまうと、ナツは、横たわるタカシの胸に頬を寄せた。心地よい温もりと、彼の鼓動が伝わってくる。
「ナツ…こないだの話だけど…」
タカシの言葉がナツを現実に引き戻した。
「うん…」
ナツは小さく返事をした。胸の中で複雑な思いが渦巻いている。
「結論を急ぐつもりはないんだけど…。今はどう思ってる?」
タカシの言葉に、ナツは一瞬息を呑んだ。彼の腕の中で、微かに体が震える。
「タカシ…私…」
言葉につまるナツ。どう答えていいか分からない。
「分かってる。君には旦那さんがいるって。でも…」
タカシは言葉を探すように少し間を置いた。
「俺は本気なんだ。中学生の頃から、ずっと…」
その言葉に、ナツの心臓が高鳴った。中学生の頃の初恋の記憶が蘇る。
「タカシ…私も、あの頃のこと覚えてる。でも…」
ナツは言葉を選びながら、ゆっくりと話し始めた。
「私には夫がいるの。確かに…浮気されて、今はぐらついてる。でも…」
タカシの胸から顔を離し、彼の目を見つめる。
「『付き合う』って言われると、何か違和感があるの。夫もいるし…」
タカシは黙ってナツの言葉に耳を傾けていた。
「分かった。無理強いはしない」
タカシはそう言いながら、優しくナツの髪を撫でた。
「でも、また会えるよね?」
ナツは少し考え込んだ後、小さくうなずいた。
「…うん、会いたい」
タカシの顔に安堵の表情が浮かぶ。
「ありがとう。次は何がしたい?」
その言葉に、ナツは少し考え込んだ。そして、思い切って聞いてみることにした。
「タカシ…本当に私でいいの?」
「え?」
「だって、タカシはすごくモテそうだし…他に相手がいるんじゃない?」
タカシは驚いたような表情を浮かべた。
「いないよ。今は君のことしか考えられない」
その言葉に、ナツは少し安心したような、でも同時に不安も感じた。
(本当に嘘はないのかな…)
ナツの頭の中では、タカシの言葉の真偽を探ろうとする思考が巡っていた。
(こんなに上手なのは、やっぱりたくさんの女性と経験を積んできたからなのかな…)
そんな疑念が頭をよぎる。でも、それを口に出すことはできなかった。
「そう…」
ナツはそう言って、再びタカシの胸に顔をうずめた。温かい体温と、彼の心臓の鼓動。
「ねえ、タカシ」
「ん?」
「私のこと…どう思ってるの?」
タカシは優しく微笑んで、ナツの髪を撫でた。
「ナツは…俺の忘れられない、初恋の人だったよ。そして、こうやって改めて巡り合って、また恋に落ちちゃった。あの頃のナツと変わらない部分も好きだし、変わった部分も好きだよ」
そういうと、タカシはナツを見つめ、そっと唇を重ねた。柔らかく、優しいキスだった。
「ナツ…俺は本気だ。君のことが好きだ」
タカシの真剣な眼差しに、ナツは胸が高鳴るのを感じた。でも、同時に現実も突きつけられる。
「私も…タカシくんのことが好き。でも、今の私には夫がいて…」
タカシは優しく頷いた。
「わかってる。焦らないでほしい。俺は、こうやってたまに会えるだけで嬉しいんだ」
ナツは感謝の気持ちを込めて、タカシに寄り添った。タカシの腕の中で、安らぎと不安が交錯する。ナツの心は、まだ揺れ動いていた。
●翌朝の心変わり
翌朝のナツは、重苦しい気分とともに目覚めた。昨夜の出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。タカシの優しい手触り、熱い吐息、そして二人の体が重なり合う感覚。それらは確かに心地よかったが、今となっては罪の意識が全てを覆い隠していた。
(私...何てことを...)
ナツは布団で顔を両手で覆う。確かに夫のユウトとの関係は冷めきっており、結婚という誓いを先に破ったのは彼のほうだった。それでも自分も結婚という誓いを、自分も破ってしまった。それも1度ならずとも2度までも。その事実は重く、今ナツの心を押しつぶそうとしていた。
ラブホテルのレシートの件以後、別室で寝るようになったユウトを、それでも刺激しないようにそっと起き出し、化粧室に向かった。情事の痕跡は昨晩帰ってすぐに洗い流したつもりだったが、鏡に映る自分の姿を見つめると、昨夜の情熱の痕跡がまだ残っているような気がした。
(これ以上...深みにはまるわけにはいかない)
ナツは決意を固めた。タカシとの関係は、ここで終わりにしなければ。スマートフォンを手に取り、謝罪の言葉とともに別れを告げるメッセージを送信した。送信ボタンを押す指が震えた。
しばらくして、タカシからの返信が届いた。タカシは理解を示しつつも、最後に一度だけ約束通りのデートをしたいと申し出てきた。確かに、最後のお別れをする機会としては適切なのかもしれない。しかしもう一度タカシに会って、また同じ過ちを繰り返さない自信が自分になかった。迷った末、ナツは返事をせず、スマートフォンを置いた。
●崩れ去った束の間の平穏
数日が過ぎ、ナツの日常は元に戻りつつあった。職場に行って仕事をし、自宅に帰って家事をし、ユウトとつかの間の会話を交わす。しかし、その平穏は長くは続かなかった。
ある日、家の掃除をしていると、ゴミ箱の中に破られた紙くずを見つけた。普段なら気にも留めないことだったが、最近のユウトの様子と重ね合わせると、どうしても気になってしまう。
(まさか...)
不安な気持ちを抑えきれず、ナツは破られた紙片を丁寧につなぎ合わせた。気の遠くなるような作業だったが、終わってみると、クレジットカードの明細書が現れた。1つ1つの明細を確認していくと、怪しい明細が1件。「レストランXX」とあるものの、ネットで検索してもそんな名前のレストランが存在しない。しかもその日付はラブホテルのレシートの一件があった日以降の日付で、カレンダーと照らし合わせてみると、ユウトが遅く朝帰りをした日と一致していた。ナツは意を決して、すぐにQ&Aサイトで匿名のアカウントを作成し、明細の名前について尋ねた。
ほどなくして返事があった。ラブホテルはクレジットカードの明細にレストランの名前を騙ることがあり、「レストランXX」はまさに都内のとあるラブホテルチェーンが明細に使用する名称だという回答だった。
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