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第三章 世界が終わる前にやりたいこと
世界が終わる前にやりたいこと2
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世界が終わる前にやりたいこと。
・好きなものを食べる。
・観たい映画を観る。
・欲しいものを買う。
・行きたいところへ行く。
・会いたい人に会っておく。
茜が持っていた手帳を開くと、そこに箇条書きで書き付けていったのがそれだ。
「うーん、ありきたりだね」
「まあそんなもんだろ。普段思っているようなことが結局やりたいことなんだよ」
「そうだな。実現するにしても、三日間しかないんじゃ、あんまりたいしたことができるとも思えないしな」
「そうなんだよね。実際は三日もないから、実現できることって結構限られてくるんだよねー」
茜はそう言うと、手帳を見つめてため息をついた。僕はそんな彼女を見つめながら、自分はどうだろうかと自問した。
世界が終わる前にやっておきたいこと。
好きな食べ物や趣味のことなどが頭に浮かぶが、どれもぴんとくるものではない。本当にやっておきたいことは、もっと別のことであるような気がした。
じっと茜の横顔を見つめる。長い睫毛が小刻みに揺れている。ピンク色の艶やかな唇はぎゅっと引き締められ、なにか考えをめぐらせている様子だ。
ふと浮かんできたある思いを、僕はすぐに心で打ち消した。
それはやってはいけない。口にしてはいけない。
それを表に出してしまったら、きっと後悔することになる。
けれど、意識した瞬間から、それは僕のなかで大きく広がり、心を満たしていった。
茜は朔と、なにやら次に行くところを議論していた。その様子はまるであと二日で世界が終わるとは思えないほど楽しそうにすら見え、いつもと変わらない光景であるように思えた。
この関係を壊してはいけない。この気持ちは胸にしまって鍵をかけておかなければいけない。
たとえもうすぐ世界が終わってしまうのだとしても。
僕は自分自身にそう言い聞かせていた。
「まもなく、1番線に列車が到着します。白線の内側まで下がってお待ちください」
駅のホームにそんなアナウンスが流れていた。
僕たちは、とある場所に向かうため、駅にやってきていた。
「まさかいきなり旅に出ることになるとは」
「世界最後の勢いってこえーな」
「なんか付き合わせちゃったみたいでごめんね。いろいろ考えたなかで、これだけはやっておかないとと思って。っていうか、本当にいいの? 私だけで行ってもいいんだけど」
「いや、まあなんとなく流れでというか。他にやりたいことも決まらなかったし。それに、茜に付き合うのも面白そうだしな」
「そうだな。なんの因果かこんな状況に三人ともなってしまったんだ。ここで茜のやりたいことに付き合うのも悪くないと僕も思う」
朔と僕がそう言うと、茜はにこりと笑った。
世界が終わる前にやりたいことは、他にもいろいろとあった。しかし、そのなかでもっとも強く茜がやりたいと言ったのは、田舎のおばあちゃんに会いに行くというものだった。
「辺りには田んぼや山ばっかりしかない、本当の超ど田舎なんだけどね。昔はよく遊びに行って、可愛がってもらってたのに、最近全然会いに行ってないな~って。いろいろ忙しいとか理由をつけて、両親がたまに行くのにもついていかなくなっちゃったんだよね」
それは、なんとなくわかる。
自分も思春期に入ったころから、ただでさえ親ともあまり外出したくなくなっていたのだ。そんななかで、離れて暮らす祖父母のところへわざわざ行こうとも思わなくなるのは仕方ないことでもある。……悲しいことだが。
「会えなくなるかもしれないなら、やっぱり会いに行かなくちゃって。昔あんなに可愛がってもらってたんだもん。ひと言くらい、ちゃんとお礼を言っておきたいし」
電車がホームに入ってきた。僕たちは開いたドアから吐き出されてきた人たちの無表情な顔を見送ると、代わりに電車に乗り込んでいった。
・好きなものを食べる。
・観たい映画を観る。
・欲しいものを買う。
・行きたいところへ行く。
・会いたい人に会っておく。
茜が持っていた手帳を開くと、そこに箇条書きで書き付けていったのがそれだ。
「うーん、ありきたりだね」
「まあそんなもんだろ。普段思っているようなことが結局やりたいことなんだよ」
「そうだな。実現するにしても、三日間しかないんじゃ、あんまりたいしたことができるとも思えないしな」
「そうなんだよね。実際は三日もないから、実現できることって結構限られてくるんだよねー」
茜はそう言うと、手帳を見つめてため息をついた。僕はそんな彼女を見つめながら、自分はどうだろうかと自問した。
世界が終わる前にやっておきたいこと。
好きな食べ物や趣味のことなどが頭に浮かぶが、どれもぴんとくるものではない。本当にやっておきたいことは、もっと別のことであるような気がした。
じっと茜の横顔を見つめる。長い睫毛が小刻みに揺れている。ピンク色の艶やかな唇はぎゅっと引き締められ、なにか考えをめぐらせている様子だ。
ふと浮かんできたある思いを、僕はすぐに心で打ち消した。
それはやってはいけない。口にしてはいけない。
それを表に出してしまったら、きっと後悔することになる。
けれど、意識した瞬間から、それは僕のなかで大きく広がり、心を満たしていった。
茜は朔と、なにやら次に行くところを議論していた。その様子はまるであと二日で世界が終わるとは思えないほど楽しそうにすら見え、いつもと変わらない光景であるように思えた。
この関係を壊してはいけない。この気持ちは胸にしまって鍵をかけておかなければいけない。
たとえもうすぐ世界が終わってしまうのだとしても。
僕は自分自身にそう言い聞かせていた。
「まもなく、1番線に列車が到着します。白線の内側まで下がってお待ちください」
駅のホームにそんなアナウンスが流れていた。
僕たちは、とある場所に向かうため、駅にやってきていた。
「まさかいきなり旅に出ることになるとは」
「世界最後の勢いってこえーな」
「なんか付き合わせちゃったみたいでごめんね。いろいろ考えたなかで、これだけはやっておかないとと思って。っていうか、本当にいいの? 私だけで行ってもいいんだけど」
「いや、まあなんとなく流れでというか。他にやりたいことも決まらなかったし。それに、茜に付き合うのも面白そうだしな」
「そうだな。なんの因果かこんな状況に三人ともなってしまったんだ。ここで茜のやりたいことに付き合うのも悪くないと僕も思う」
朔と僕がそう言うと、茜はにこりと笑った。
世界が終わる前にやりたいことは、他にもいろいろとあった。しかし、そのなかでもっとも強く茜がやりたいと言ったのは、田舎のおばあちゃんに会いに行くというものだった。
「辺りには田んぼや山ばっかりしかない、本当の超ど田舎なんだけどね。昔はよく遊びに行って、可愛がってもらってたのに、最近全然会いに行ってないな~って。いろいろ忙しいとか理由をつけて、両親がたまに行くのにもついていかなくなっちゃったんだよね」
それは、なんとなくわかる。
自分も思春期に入ったころから、ただでさえ親ともあまり外出したくなくなっていたのだ。そんななかで、離れて暮らす祖父母のところへわざわざ行こうとも思わなくなるのは仕方ないことでもある。……悲しいことだが。
「会えなくなるかもしれないなら、やっぱり会いに行かなくちゃって。昔あんなに可愛がってもらってたんだもん。ひと言くらい、ちゃんとお礼を言っておきたいし」
電車がホームに入ってきた。僕たちは開いたドアから吐き出されてきた人たちの無表情な顔を見送ると、代わりに電車に乗り込んでいった。
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