僕たちは星空の夢をみる

美汐

文字の大きさ
21 / 64
Chapter.4 下見とハイキング

4 視線

しおりを挟む
「わたしはどうしてだかわからないけど、この道を駆け足で走っていたの。今日みたいに天気がよくて、水面がきらきら光っていた」

 沙耶ちゃんは夢で見たことの詳細な様子を、歩きながら語っていった。上流へと、ゆっくりとした足取りで進んでいく。沢の水は清らかに澄み渡っていた。

「そうしてしばらく進んでいくと、ちょうど……たぶんこの辺りで沢の様子が変わったの」

 沙耶ちゃんは足を止め、水面をじっと見つめた。僕も沙耶ちゃんの視線の先に目をやる。しかし今は特になんの変化もない。透き通った流れが目の前を通り過ぎていくばかりだ。
 沙耶ちゃんの目には、見えているのだろうか。夢で見たという、赤い色が。

「そしてその流れの元を見ようと、上流を振り向いたところで夢は終わったの」

 沙耶ちゃんは沢の上流に視線をやる。それに沿うように、階段状の遊歩道が続いている。

「ということは、ここから先の上流に赤い濁りを作る原因、きっかけとなる場所があるということになるな」

 沙耶ちゃんの斜め前を歩いていた美周は、沢の上流を見つめながらそう言った。沙耶ちゃんの見た夢はここで終わっている。その先はまだなにもわからない。

「行ってみよう」

 そう言って、美周が歩みを進めた。
 あとを追おうと僕が足を踏み出すと、ふいにどこかから視線を感じた。それは、遊歩道もなにも整備されていない、沢の向こう岸の山の斜面からのものだった。人がいるはずのない場所に、その女は立っていた。紺色の縞模様の着物を着て、髪は日本髪に結われている。今の時代にはあまりにも違和感があり、あきらかに不自然だった。

 すぐに僕は、それが生身の人間ではないことを察した。いつの時代の霊なのか。くわしいことはわからないが、長い時間を経てきた霊であることは、その姿を見れば推察できた。なぜそこにいるのか。そんなことはわかるはずもない。それに、知る必要もないことだ。
 僕はその霊が、特に害のあるものだとは思わなかった。その表情に、特別な感情を見いだせなかったからだ。害のないものなら気にすることはない。こういった霊は、特別に珍しいものでもない。日本中のどこにでもいるものなのだ。

「小太郎ちゃん。どうしたの?」

 立ち止まった僕に、沙耶ちゃんが不思議そうに声をかけてきた。沙耶ちゃんたちに、あの女の姿は見えていないのだろう。当然のことだが、なんとなく胸が塞がる思いがした。

「いや、なんでもないよ。行こう」

 今はそれよりも、沙耶ちゃんの夢のことだ。僕は先を行く美周のあとを追った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...