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Chapter.4 下見とハイキング
6 バスケットの中身
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合宿所まで戻ると、沙耶ちゃんが玄関の端っこに置いておいたバスケットを持ってきて言った。
「せっかくだから、どこかでお弁当食べよう。みんなのぶんも作ってきたから」
そうではないかと薄々思ってはいたが、あのバスケットの中身は弁当だったのだ。しかも僕たちのぶんまであるとは。沙耶ちゃんの手作り弁当が食べられるとは、それだけでもここまで来た甲斐があったというものだ。
「沙耶くんのお弁当か! それは楽しみだ。じゃあ、そうだな。ちょっとまた歩くことになるが、展望台のあるところまで行ってみようか」
美周も、これにはかなり嬉しそうだった。
というわけで、僕たちは美周の案内のもと、展望台のあるところまで歩いていくことになった。距離としては、一時間もかからないくらいらしい。ちょうど着くころには昼食を食べるのにいい時間になっているはずだ。沙耶ちゃんのバスケットをいち早く僕が手にし、展望台まで持って歩くことになった。
この辺りはハイキングコースとしても割と有名なところらしく、ゴールデンウィーク中ということもあって、旅行で来ているらしい人たちも多く見かけられた。確かに、歩くのにはとても気持ちがいい場所だった。遠くには山を臨み、歩く道の脇には高原の野草たちが可憐な花を咲かせている。
「ハイキング楽しいねー」
沙耶ちゃんは、先程の川でのことが嘘のように楽しそうだった。足取りも軽やかで、今にもスキップをしそうなくらいだ。そんな様子を見て、とても安心した。予知夢のことばかり気にして、不安な気持ちばかり抱えて過ごす沙耶ちゃんを見たくはなかった。だが、この様子ならそんな心配は必要ないのかもしれない。
展望台に到着すると、その美しい眺望に思わずため息が出た。見晴らしがよく、遠くの山々が折り重なるように稜線を重ねている様は、圧巻だった。
「景色いいね」
「うん。来た甲斐あったね」
遠くの山々にはまだ残雪が白く残っていて、荘厳な美しさに心が打たれた。僕たちはしばらくその景色に見とれていた。
そのうち、相田がからかうように言った。
「沙耶、やっほーとか叫んだら?」
すると沙耶ちゃんは少し迷って、本当に「やっほー」と叫んだ。
「……こだましないね」
沙耶ちゃんのその行動に、僕たちは笑いを押さえきれなかった。美周でさえも、くすくすと笑っている。
「な、なにみんなして笑ってるのっ」
「いや、ごめん。そんなつもりじゃないんだけど」
「沙耶ごめん。本当にやるとは思わなかった。てゆーか、あんた素直すぎ」
「沙耶くんは本当に可愛いな」
そんなふうに言いながらも、みななおもくすくすと笑っていた。
「もうっ。みんなしてひどいよ!」
沙耶ちゃんと美しい景色に癒されたひとときだった。
相田は背負っていたリュックサックの中からレジャーシートを取り出し、適当な場所に広げた。なんとも用意のいいことだ。
それから僕たちはその上に座り、いよいよ沙耶ちゃんの作ったお弁当をいただくことになった。
「そんな期待するほどのものじゃないからね」
沙耶ちゃんはバスケットの蓋を開け、中から風呂敷の包みを取りだした。風呂敷を広げ、そこに入っていた二段になっているお重の蓋を開ける。
「わあ、おいしそうだね」
「おお、これは素晴らしい」
中には唐揚げや卵焼きやおにぎりがぎっしりと詰まっていた。いろどりよくプチトマトやブロッコリーなんかも入っている。
「ホント普通でしょ。なんか恥ずかしいなー」
「いや、そんなことないよ。全然おいしそうだから」
「そうだな。むしろ、こういうのこそがいいんだ」
「そうそう。男子なんて見た目よりも、がっつり感があったほうが喜ぶもんなんだから」
相田がそう言うと、沙耶ちゃんは照れたように笑った。
「そうかな。喜んでもらえたかな」
「もちろん!」
「もちろんだとも」
僕と美周は口を揃えて言った。
沙耶ちゃんの弁当はとてもおいしかった。唐揚げの味付けもしっかりしているし、卵焼きの焼き加減も絶妙だった。なかでもおにぎりは、沙耶ちゃんが一所懸命握ったものだと思うと、それだけで胸がいっぱいになってしまった。
「おいしいよー。沙耶」
「沙耶くんは天才だ」
「えへへ。朝四時に起きて頑張った甲斐あったよ」
「朝四時に起きてたの?」
「うん。だから結構寝不足気味だったりして」
言いながら、沙耶ちゃんは自分の目元を擦った。そこまでして弁当を作ってくれていたことに、また感動した。これはしっかり味わっておかないと。
「また、どうせ夜も興奮して寝られなかったんでしょ」
「ん……うん。よくわかるね」
「ってあんたは小学生か!」
相田は沙耶ちゃんをからかうのが楽しいらしい。確かにこの天然ぶりはたまらないものがある。
そんなふうに楽しい昼食タイムを過ごした。自然に囲まれた中で味わう沙耶ちゃんの弁当は格別で、忘れられない思い出になりそうだった。
食後、近くを散策し、それからまた合宿所まで戻っていった。
「さて、そろそろ帰ることにしようか」
美周がそう言った。時間を見ると、そろそろ午後四時になろうとしている。次のバスがもうすぐ来るころだ。
「バスに乗り遅れると、次また一時間待つことになるからな」
そう言うと、沙耶ちゃんが残念そうな顔をした。
「えー。もう帰る時間なんだ」
「帰りもまだ長いからね。早めに行かないと遅くなっちゃうよ」
「仕方ないね。もうちょっと遊びたかったけど」
沙耶ちゃんは名残惜しそうに言った。行くと決まったときはどうかと思ったけれど、沙耶ちゃんにとって、この旅はなかなか楽しいものだったようだ。
バス停に着き、しばらくするとバスがやってきた。僕たちがバスに乗り込むと、バスはすぐに動き出した。車窓から見える木々がどんどん後ろへと去っていく。それを見ると、やはり名残惜しさを感じた。
楽しい旅の時間は終わり、現実の世界へと戻っていくのだ。
「せっかくだから、どこかでお弁当食べよう。みんなのぶんも作ってきたから」
そうではないかと薄々思ってはいたが、あのバスケットの中身は弁当だったのだ。しかも僕たちのぶんまであるとは。沙耶ちゃんの手作り弁当が食べられるとは、それだけでもここまで来た甲斐があったというものだ。
「沙耶くんのお弁当か! それは楽しみだ。じゃあ、そうだな。ちょっとまた歩くことになるが、展望台のあるところまで行ってみようか」
美周も、これにはかなり嬉しそうだった。
というわけで、僕たちは美周の案内のもと、展望台のあるところまで歩いていくことになった。距離としては、一時間もかからないくらいらしい。ちょうど着くころには昼食を食べるのにいい時間になっているはずだ。沙耶ちゃんのバスケットをいち早く僕が手にし、展望台まで持って歩くことになった。
この辺りはハイキングコースとしても割と有名なところらしく、ゴールデンウィーク中ということもあって、旅行で来ているらしい人たちも多く見かけられた。確かに、歩くのにはとても気持ちがいい場所だった。遠くには山を臨み、歩く道の脇には高原の野草たちが可憐な花を咲かせている。
「ハイキング楽しいねー」
沙耶ちゃんは、先程の川でのことが嘘のように楽しそうだった。足取りも軽やかで、今にもスキップをしそうなくらいだ。そんな様子を見て、とても安心した。予知夢のことばかり気にして、不安な気持ちばかり抱えて過ごす沙耶ちゃんを見たくはなかった。だが、この様子ならそんな心配は必要ないのかもしれない。
展望台に到着すると、その美しい眺望に思わずため息が出た。見晴らしがよく、遠くの山々が折り重なるように稜線を重ねている様は、圧巻だった。
「景色いいね」
「うん。来た甲斐あったね」
遠くの山々にはまだ残雪が白く残っていて、荘厳な美しさに心が打たれた。僕たちはしばらくその景色に見とれていた。
そのうち、相田がからかうように言った。
「沙耶、やっほーとか叫んだら?」
すると沙耶ちゃんは少し迷って、本当に「やっほー」と叫んだ。
「……こだましないね」
沙耶ちゃんのその行動に、僕たちは笑いを押さえきれなかった。美周でさえも、くすくすと笑っている。
「な、なにみんなして笑ってるのっ」
「いや、ごめん。そんなつもりじゃないんだけど」
「沙耶ごめん。本当にやるとは思わなかった。てゆーか、あんた素直すぎ」
「沙耶くんは本当に可愛いな」
そんなふうに言いながらも、みななおもくすくすと笑っていた。
「もうっ。みんなしてひどいよ!」
沙耶ちゃんと美しい景色に癒されたひとときだった。
相田は背負っていたリュックサックの中からレジャーシートを取り出し、適当な場所に広げた。なんとも用意のいいことだ。
それから僕たちはその上に座り、いよいよ沙耶ちゃんの作ったお弁当をいただくことになった。
「そんな期待するほどのものじゃないからね」
沙耶ちゃんはバスケットの蓋を開け、中から風呂敷の包みを取りだした。風呂敷を広げ、そこに入っていた二段になっているお重の蓋を開ける。
「わあ、おいしそうだね」
「おお、これは素晴らしい」
中には唐揚げや卵焼きやおにぎりがぎっしりと詰まっていた。いろどりよくプチトマトやブロッコリーなんかも入っている。
「ホント普通でしょ。なんか恥ずかしいなー」
「いや、そんなことないよ。全然おいしそうだから」
「そうだな。むしろ、こういうのこそがいいんだ」
「そうそう。男子なんて見た目よりも、がっつり感があったほうが喜ぶもんなんだから」
相田がそう言うと、沙耶ちゃんは照れたように笑った。
「そうかな。喜んでもらえたかな」
「もちろん!」
「もちろんだとも」
僕と美周は口を揃えて言った。
沙耶ちゃんの弁当はとてもおいしかった。唐揚げの味付けもしっかりしているし、卵焼きの焼き加減も絶妙だった。なかでもおにぎりは、沙耶ちゃんが一所懸命握ったものだと思うと、それだけで胸がいっぱいになってしまった。
「おいしいよー。沙耶」
「沙耶くんは天才だ」
「えへへ。朝四時に起きて頑張った甲斐あったよ」
「朝四時に起きてたの?」
「うん。だから結構寝不足気味だったりして」
言いながら、沙耶ちゃんは自分の目元を擦った。そこまでして弁当を作ってくれていたことに、また感動した。これはしっかり味わっておかないと。
「また、どうせ夜も興奮して寝られなかったんでしょ」
「ん……うん。よくわかるね」
「ってあんたは小学生か!」
相田は沙耶ちゃんをからかうのが楽しいらしい。確かにこの天然ぶりはたまらないものがある。
そんなふうに楽しい昼食タイムを過ごした。自然に囲まれた中で味わう沙耶ちゃんの弁当は格別で、忘れられない思い出になりそうだった。
食後、近くを散策し、それからまた合宿所まで戻っていった。
「さて、そろそろ帰ることにしようか」
美周がそう言った。時間を見ると、そろそろ午後四時になろうとしている。次のバスがもうすぐ来るころだ。
「バスに乗り遅れると、次また一時間待つことになるからな」
そう言うと、沙耶ちゃんが残念そうな顔をした。
「えー。もう帰る時間なんだ」
「帰りもまだ長いからね。早めに行かないと遅くなっちゃうよ」
「仕方ないね。もうちょっと遊びたかったけど」
沙耶ちゃんは名残惜しそうに言った。行くと決まったときはどうかと思ったけれど、沙耶ちゃんにとって、この旅はなかなか楽しいものだったようだ。
バス停に着き、しばらくするとバスがやってきた。僕たちがバスに乗り込むと、バスはすぐに動き出した。車窓から見える木々がどんどん後ろへと去っていく。それを見ると、やはり名残惜しさを感じた。
楽しい旅の時間は終わり、現実の世界へと戻っていくのだ。
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