王立魔導研究所は今日も平和です❤︎

一花カナウ

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私と室長

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 この国で一番難しいとされる王立魔導研究所の採用試験を私が受けたのは半年ほど前のことだ。難関試験を首席で突破したおかげで好きな研究室を選ぶ権利を得てしまった私は、これといってやりたい研究があったわけではなかったので正直困っていた。
 そもそも、私がこの試験を受けることにしたのは、婚期を逃したからである。
 読書家の父の書斎であらゆる本を読みまくっていた私は、順調に頭でっかち人間に成長した。学力の高い女性はこの国では嫁にもらいたがらない傾向にあるためか、二十歳を超えても私のもらい手は出なかった。容姿としては大差ないはずの姉たちはといえば、十六歳で婚約して十八歳までには嫁いでいったというのに、なんていうことだ。
 そうして二十二歳を迎えてしまった私は親から結婚しろとはついに言われなくなり、代わりに研究所職員の道を勧められた。そこでなら私が培ってきた知識を活かせるだろうし、国の役に立てる。研究に没頭していて結婚できなかったと言い訳もできよう。国のためにしていることだからという大義名分は、両親を安心させるのに都合がよかった。
 それに、この国の研究者は既婚者も多く、その上仕事熱心で異性にかまけている余裕はない。娘の貞操を心配する両親としては、素晴らしい職場に見えたことだろう。
 とまあ、そんな消極的な理由で研究所職員を目指すことになってしまったので、どういう研究をしたいという意志や熱意が私にはなかった。
 とりあえず、どんな研究が行われているのかを詳しく知りたいと告げて、私は十五もある研究室の一つ一つを見学させてもらうことになった。純粋に魔法を研究している部署、魔物の研究、魔鉱石の研究、魔法に頼りすぎない医学の研究――どれも興味深かったが、私には合わない感じがした。
 そんなときに出会ったのが、アナスタージウス室長だ。魔物の中でも植物にカテゴリーされているものが専門で、捕獲や栽培、薬学的見地からの医療分野への応用を研究しているという。
 自分の研究分野をボソボソと喋るアナスタージウス室長の話を、私はそのとき全く耳に入れていなかった。なぜなら、一目惚れしてしまったから。パーティーで出会ったどの男性よりも、ずっと魅力的に見えたのだ。
 結局、私は室長の容姿でこの第五研究室の助手になることを選んだ。


 そして、王立魔導研究所の職員になってから早三ヶ月。私は楽しい日々を送っている。
 王立魔導研究所の宿舎で共同生活をするのは、伯爵令嬢として育ってきた私には少々厳しいものがあったが、毎日アナスタージウス室長に会えると思えば乗り越えられた。研究も想像していた以上に面白く、室長の助手として率先して実験に付き合ってきた。

 まあ、先日の実験で予期せぬ事態になってしまって、あれからあんな夢ばかり見ているんだけど……

 薬草の研究で出来上がった薬湯を二人で味見をしてみたのだが、どうも想定よりも催淫効果が強く出てしまったらしい。室長はほとんどシラフだったようだが、その一方で効き目がバッチリ出てしまった私は彼に介抱してもらった。夢ほどのこともしなかったのに、私は彼に触れられたことで余計に想いを募らせてしまったのだった。

 性欲が高まっちゃっているのは、あの薬湯の効果が完全に抜けていないからよね……ほんと怖いわ……

 怖いと思えど、研究はやめられない。おそらく天職なのだろう。この研究所を勧めてくれた両親には感謝だ。
 薬湯事件のあと、室長は中和剤だと告げて私に粉薬を処方してくれた。毎日決められた量を飲んでいるのにこんな調子が続くのなら、そろそろ相談したほうがいいかもしれない。

「おはようございます、アナスタージウス室長」
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