2 / 18
私と室長
1
しおりを挟む
この国で一番難しいとされる王立魔導研究所の採用試験を私が受けたのは半年ほど前のことだ。難関試験を首席で突破したおかげで好きな研究室を選ぶ権利を得てしまった私は、これといってやりたい研究があったわけではなかったので正直困っていた。
そもそも、私がこの試験を受けることにしたのは、婚期を逃したからである。
読書家の父の書斎であらゆる本を読みまくっていた私は、順調に頭でっかち人間に成長した。学力の高い女性はこの国では嫁にもらいたがらない傾向にあるためか、二十歳を超えても私のもらい手は出なかった。容姿としては大差ないはずの姉たちはといえば、十六歳で婚約して十八歳までには嫁いでいったというのに、なんていうことだ。
そうして二十二歳を迎えてしまった私は親から結婚しろとはついに言われなくなり、代わりに研究所職員の道を勧められた。そこでなら私が培ってきた知識を活かせるだろうし、国の役に立てる。研究に没頭していて結婚できなかったと言い訳もできよう。国のためにしていることだからという大義名分は、両親を安心させるのに都合がよかった。
それに、この国の研究者は既婚者も多く、その上仕事熱心で異性にかまけている余裕はない。娘の貞操を心配する両親としては、素晴らしい職場に見えたことだろう。
とまあ、そんな消極的な理由で研究所職員を目指すことになってしまったので、どういう研究をしたいという意志や熱意が私にはなかった。
とりあえず、どんな研究が行われているのかを詳しく知りたいと告げて、私は十五もある研究室の一つ一つを見学させてもらうことになった。純粋に魔法を研究している部署、魔物の研究、魔鉱石の研究、魔法に頼りすぎない医学の研究――どれも興味深かったが、私には合わない感じがした。
そんなときに出会ったのが、アナスタージウス室長だ。魔物の中でも植物にカテゴリーされているものが専門で、捕獲や栽培、薬学的見地からの医療分野への応用を研究しているという。
自分の研究分野をボソボソと喋るアナスタージウス室長の話を、私はそのとき全く耳に入れていなかった。なぜなら、一目惚れしてしまったから。パーティーで出会ったどの男性よりも、ずっと魅力的に見えたのだ。
結局、私は室長の容姿でこの第五研究室の助手になることを選んだ。
そして、王立魔導研究所の職員になってから早三ヶ月。私は楽しい日々を送っている。
王立魔導研究所の宿舎で共同生活をするのは、伯爵令嬢として育ってきた私には少々厳しいものがあったが、毎日アナスタージウス室長に会えると思えば乗り越えられた。研究も想像していた以上に面白く、室長の助手として率先して実験に付き合ってきた。
まあ、先日の実験で予期せぬ事態になってしまって、あれからあんな夢ばかり見ているんだけど……
薬草の研究で出来上がった薬湯を二人で味見をしてみたのだが、どうも想定よりも催淫効果が強く出てしまったらしい。室長はほとんどシラフだったようだが、その一方で効き目がバッチリ出てしまった私は彼に介抱してもらった。夢ほどのこともしなかったのに、私は彼に触れられたことで余計に想いを募らせてしまったのだった。
性欲が高まっちゃっているのは、あの薬湯の効果が完全に抜けていないからよね……ほんと怖いわ……
怖いと思えど、研究はやめられない。おそらく天職なのだろう。この研究所を勧めてくれた両親には感謝だ。
薬湯事件のあと、室長は中和剤だと告げて私に粉薬を処方してくれた。毎日決められた量を飲んでいるのにこんな調子が続くのなら、そろそろ相談したほうがいいかもしれない。
「おはようございます、アナスタージウス室長」
そもそも、私がこの試験を受けることにしたのは、婚期を逃したからである。
読書家の父の書斎であらゆる本を読みまくっていた私は、順調に頭でっかち人間に成長した。学力の高い女性はこの国では嫁にもらいたがらない傾向にあるためか、二十歳を超えても私のもらい手は出なかった。容姿としては大差ないはずの姉たちはといえば、十六歳で婚約して十八歳までには嫁いでいったというのに、なんていうことだ。
そうして二十二歳を迎えてしまった私は親から結婚しろとはついに言われなくなり、代わりに研究所職員の道を勧められた。そこでなら私が培ってきた知識を活かせるだろうし、国の役に立てる。研究に没頭していて結婚できなかったと言い訳もできよう。国のためにしていることだからという大義名分は、両親を安心させるのに都合がよかった。
それに、この国の研究者は既婚者も多く、その上仕事熱心で異性にかまけている余裕はない。娘の貞操を心配する両親としては、素晴らしい職場に見えたことだろう。
とまあ、そんな消極的な理由で研究所職員を目指すことになってしまったので、どういう研究をしたいという意志や熱意が私にはなかった。
とりあえず、どんな研究が行われているのかを詳しく知りたいと告げて、私は十五もある研究室の一つ一つを見学させてもらうことになった。純粋に魔法を研究している部署、魔物の研究、魔鉱石の研究、魔法に頼りすぎない医学の研究――どれも興味深かったが、私には合わない感じがした。
そんなときに出会ったのが、アナスタージウス室長だ。魔物の中でも植物にカテゴリーされているものが専門で、捕獲や栽培、薬学的見地からの医療分野への応用を研究しているという。
自分の研究分野をボソボソと喋るアナスタージウス室長の話を、私はそのとき全く耳に入れていなかった。なぜなら、一目惚れしてしまったから。パーティーで出会ったどの男性よりも、ずっと魅力的に見えたのだ。
結局、私は室長の容姿でこの第五研究室の助手になることを選んだ。
そして、王立魔導研究所の職員になってから早三ヶ月。私は楽しい日々を送っている。
王立魔導研究所の宿舎で共同生活をするのは、伯爵令嬢として育ってきた私には少々厳しいものがあったが、毎日アナスタージウス室長に会えると思えば乗り越えられた。研究も想像していた以上に面白く、室長の助手として率先して実験に付き合ってきた。
まあ、先日の実験で予期せぬ事態になってしまって、あれからあんな夢ばかり見ているんだけど……
薬草の研究で出来上がった薬湯を二人で味見をしてみたのだが、どうも想定よりも催淫効果が強く出てしまったらしい。室長はほとんどシラフだったようだが、その一方で効き目がバッチリ出てしまった私は彼に介抱してもらった。夢ほどのこともしなかったのに、私は彼に触れられたことで余計に想いを募らせてしまったのだった。
性欲が高まっちゃっているのは、あの薬湯の効果が完全に抜けていないからよね……ほんと怖いわ……
怖いと思えど、研究はやめられない。おそらく天職なのだろう。この研究所を勧めてくれた両親には感謝だ。
薬湯事件のあと、室長は中和剤だと告げて私に粉薬を処方してくれた。毎日決められた量を飲んでいるのにこんな調子が続くのなら、そろそろ相談したほうがいいかもしれない。
「おはようございます、アナスタージウス室長」
2
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
夢見るシンデレラ~溺愛の時間は突然に~
美和優希
恋愛
社長秘書を勤めながら、中瀬琴子は密かに社長に想いを寄せていた。
叶わないだろうと思いながらもあきらめきれずにいた琴子だったが、ある日、社長から告白される。
日頃は紳士的だけど、二人のときは少し意地悪で溺甘な社長にドキドキさせられて──!?
初回公開日*2017.09.13(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.03.10
*表紙イラストは、イラストAC(もちまる様)のイラスト素材を使わせていただいてます。
虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい
隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫
◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。
◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。
◼︎超高速展開、サクッと読めます。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
最強魔術師の歪んだ初恋
黒瀬るい
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。
けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる