王立魔導研究所は今日も平和です❤︎

一花カナウ

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私と室長

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「そう? ならいいけど……僕はあまり他人に興味がないから、きっと君の変化に疎い。何かあればすぐに教えてほしい」
「はい! 自己管理はできていると思いますので、ご心配なく」
「身体がキツかったら、異動届を提出してね。君は優秀な助手だ。他の研究室でもその力を発揮できる。無理はしないでおくれよ」
「お気遣いありがとうございます」

 私はにっこり微笑んで、元気ですアピールに励む。
 アナスタージウス室長はそうおっしゃるけれど、疎かったり鈍かったりするような感じはあまりしない。自分のことには無頓着なようだが、私に対しての気配りはかなり細かいような気がした。
 彼が第五研究室の室長になってから、これまで数人が助手として配属されたが、一年もたずに辞めている。私が配属されるまでの数年間にいたっては、彼は一人でこの研究室の成果を上げ続け、維持してきたらしい。

「室長こそ、研究以外にすることがないからと言って休まず働くのではなく、必要な休暇はきちんと取ってくださいね。助手が入ったんですから」
「フィルギニア君、僕を年寄り扱いしないでくれよ。君とは十以上も年が離れているとはいえ、まだまだ現役の研究者だよ。体力には自信があるんだ」
「わ、私はそういうつもりで心配したわけでは――」

 私がうろたえると、室長はクスクスと笑った。

「ごめんね、ちょっとからかいたくなっただけだよ。君のおかげで進んだ研究もたくさんある。僕はとても楽しい」
「そ、そうですか……」

 室長が、私をからかう?

 今日のアナスタージウス室長は機嫌がいいようだ。仕事の内容以外でこんなに喋るのは珍しい。だいたい私たちの会話は事務連絡が多いのだ。仕事の上司と部下だから、日常的に私語が多すぎるのは問題になるだろうけども。

「明日の天気もよさそうだし、たまにはフィールドワークにでも出ようか。お弁当を持って」

 薬湯の入ったカップを持って窓から外を眺めつつアナスタージウス室長が提案した。

「フィールドワーク⁉︎ とても興味深いです!」
「君が乗り気なようでよかった。馬には乗れるかな?」
「あ……乗馬は苦手で……」
「そう。じゃあ、僕の馬に二人で乗ろうか。馬車は使いにくい場所なんだ」
「わかりました!」

 足手まといになりたくないが、同乗させてくれるというなら行かないわけにはいかない。

 だって、合法的に接近できるチャンスなんて、そうそうないんだもの! 行くっきゃないでしょ!

 下心アリアリで、研究者としての良識を疑われる思考だが、行ったら行ったでちゃんとお仕事はするつもりだ。じゃないと、せっかくの室長からの評価を下げてしまうし、クビになりかねない。それは、一番あってはならないことだ。
 私が前のめり気味に返事をすると、眼鏡の奥の目が優しく細められた。

「とっても楽しみだ」
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