5 / 18
フィールドワークは危険がいっぱい⁉︎
1
しおりを挟む*****
翌日は朝から晴天だった。
アナスタージウス室長から渡されていた虫除けオイルを全身に塗って、フィールドワーク用の制服を着込む。
身体に密着する伸縮素材のインナーに、防刃素材でできた長袖ジャケットというスタイルだ。下はスパッツに短パンで、できるだけ肌は出ないようになっている。肩甲骨あたりまで伸びている髪はシニョンにして帽子に押し込んだ。ブーツも足首をしっかり覆うもので、簡単には壊れない丈夫なものある。
そろそろ暑さも感じられる気候であるが、服装でこうして身体を守るのは大切なことだと研修初日の制服支給時に教えられていた。
「ほほう……これで私も立派な研究員ですわね!」
鏡に映る私は、探検に行くかのような装いに見える。
実際、探検のようなものなのだろう。今日はフィールドワークに慣れるために、一番安全な場所に行くとのことだったが、それでも気は抜けない。戦争が遠い昔となった現代では、危険と隣り合わせの職業といえば、王立魔導研究所職員だったりするし。
「よーしっ。一日、頑張りますわ!」
室長の指示で食堂からお弁当を受け取って、私は第五研究室に向かう。
まもなく見えてきた研究室の前で、珍しくアナスタージウス室長が立っていた。王立魔導研究所から支給されたフィールドワーク用の制服を着込んでいる。彼が着ているのは長ズボンだったし、新品の私と違ってくたびれた感じになっていたけれど、同じ格好をしているのがそこはかとなく嬉しかった。
うふふ。今日も室長ったら素敵! フィールドワーク最高! ふだんは白衣しかお揃いにならないもんね。一見同じに感じられても、私は白衣姿のシルエットだけでは同じとは思えないのよ。
弾みそうになる声を抑えて、私はいつもどおりに振舞うことにした。
「おはようございます、アナスタージウス室長。指示どおりにお弁当、受け取ってきましたよ」
お弁当の入った鞄をアナスタージウス室長に向けて掲げた。
「ああ、よかった。これで準備はできたね」
穏やかに微笑まれると、私の鼓動は跳ねる。
ああ、本当に今日も素敵です、アナスタージウス室長。無精髭はそのままだし、髪もボサボサのままだけど、全身から漂う色気が、もう、私……ああ、興奮しすぎて鼻血が出そう。
「さあ、行こうか。荷造りは終わっているんだ」
アナスタージウス室長がこちらに手を差し出した。私はつい彼の手に自分の手を重ねてしまう。
「えっと……お弁当、重くないかい?」
「はい、大丈夫です!」
「そう」
言われて、この手がお弁当の鞄を受け取ろうと思って差し出されたものだと気づいた。だが、大丈夫と答えてしまったし、手を重ねてしまったしで、今さら手を離すのも名残惜しいし、どうしたものかななどと迷ってしまう。
「……まあ、いっか」
アナスタージウス室長も困ってしまったようで、でも、だからといって嫌がる様子もなく、そのまま私の手をぎゅっと握って歩きだした。
ひゃあっ! 嬉しい! デートみたい! どうせなら手袋なしで触れ合いたかったけど、あー、もう贅沢は言わないわ! きゃーっ!
頭の中はパニックである。このまま厩舎以外の場所に連れ込まれても、私、なんの問題もないですから!
そう浮かれているうちに、私はアナスタージウス室長が操る馬に乗っていた。そこで一度正気に戻る。
アナスタージウス室長が説明していたように、荷物は馬に積まれている。ここに二人乗りなんて、結構重そうだ。
「フィルギニア君、落とされないようにしっかり掴まってね」
「は、はい!」
彼と同乗するのは初めてであるが、実家にいた頃は父や兄と同乗して出かけることはしばしばあったので慣れてはいる。しっかりとアナスタージウス室長にくっつくと、薬草の独特の香りがした。
ああ、もっと触れていたい……
好きすぎてたまらない。一度抱かれたら、この衝動は解消されるのだろうか。それとも病みつきになってしまうだろうか。
仕事ができなくなったら、あなたのそばにはいられなくなってしまう……だから、それだけは避けないといけないのに。
湧き上がる自分の浅ましい感情と葛藤しながら、私はアナスタージウス室長にくっついていたのだった。
2
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
夢見るシンデレラ~溺愛の時間は突然に~
美和優希
恋愛
社長秘書を勤めながら、中瀬琴子は密かに社長に想いを寄せていた。
叶わないだろうと思いながらもあきらめきれずにいた琴子だったが、ある日、社長から告白される。
日頃は紳士的だけど、二人のときは少し意地悪で溺甘な社長にドキドキさせられて──!?
初回公開日*2017.09.13(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.03.10
*表紙イラストは、イラストAC(もちまる様)のイラスト素材を使わせていただいてます。
虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい
隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫
◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。
◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。
◼︎超高速展開、サクッと読めます。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
最強魔術師の歪んだ初恋
黒瀬るい
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。
けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる