王立魔導研究所は今日も平和です❤︎

一花カナウ

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フィールドワークは危険がいっぱい⁉︎

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 翌日は朝から晴天だった。
 アナスタージウス室長から渡されていた虫除けオイルを全身に塗って、フィールドワーク用の制服を着込む。
 身体に密着する伸縮素材のインナーに、防刃素材でできた長袖ジャケットというスタイルだ。下はスパッツに短パンで、できるだけ肌は出ないようになっている。肩甲骨あたりまで伸びている髪はシニョンにして帽子に押し込んだ。ブーツも足首をしっかり覆うもので、簡単には壊れない丈夫なものある。
 そろそろ暑さも感じられる気候であるが、服装でこうして身体を守るのは大切なことだと研修初日の制服支給時に教えられていた。

「ほほう……これで私も立派な研究員ですわね!」

 鏡に映る私は、探検に行くかのような装いに見える。
 実際、探検のようなものなのだろう。今日はフィールドワークに慣れるために、一番安全な場所に行くとのことだったが、それでも気は抜けない。戦争が遠い昔となった現代では、危険と隣り合わせの職業といえば、王立魔導研究所職員だったりするし。

「よーしっ。一日、頑張りますわ!」

 室長の指示で食堂からお弁当を受け取って、私は第五研究室に向かう。
 まもなく見えてきた研究室の前で、珍しくアナスタージウス室長が立っていた。王立魔導研究所から支給されたフィールドワーク用の制服を着込んでいる。彼が着ているのは長ズボンだったし、新品の私と違ってくたびれた感じになっていたけれど、同じ格好をしているのがそこはかとなく嬉しかった。

 うふふ。今日も室長ったら素敵! フィールドワーク最高! ふだんは白衣しかお揃いにならないもんね。一見同じに感じられても、私は白衣姿のシルエットだけでは同じとは思えないのよ。

 弾みそうになる声を抑えて、私はいつもどおりに振舞うことにした。

「おはようございます、アナスタージウス室長。指示どおりにお弁当、受け取ってきましたよ」

 お弁当の入った鞄をアナスタージウス室長に向けて掲げた。

「ああ、よかった。これで準備はできたね」

 穏やかに微笑まれると、私の鼓動は跳ねる。

 ああ、本当に今日も素敵です、アナスタージウス室長。無精髭はそのままだし、髪もボサボサのままだけど、全身から漂う色気が、もう、私……ああ、興奮しすぎて鼻血が出そう。

「さあ、行こうか。荷造りは終わっているんだ」

 アナスタージウス室長がこちらに手を差し出した。私はつい彼の手に自分の手を重ねてしまう。

「えっと……お弁当、重くないかい?」
「はい、大丈夫です!」
「そう」

 言われて、この手がお弁当の鞄を受け取ろうと思って差し出されたものだと気づいた。だが、大丈夫と答えてしまったし、手を重ねてしまったしで、今さら手を離すのも名残惜しいし、どうしたものかななどと迷ってしまう。

「……まあ、いっか」

 アナスタージウス室長も困ってしまったようで、でも、だからといって嫌がる様子もなく、そのまま私の手をぎゅっと握って歩きだした。

 ひゃあっ! 嬉しい! デートみたい! どうせなら手袋なしで触れ合いたかったけど、あー、もう贅沢は言わないわ! きゃーっ!

 頭の中はパニックである。このまま厩舎以外の場所に連れ込まれても、私、なんの問題もないですから!

 そう浮かれているうちに、私はアナスタージウス室長が操る馬に乗っていた。そこで一度正気に戻る。
 アナスタージウス室長が説明していたように、荷物は馬に積まれている。ここに二人乗りなんて、結構重そうだ。

「フィルギニア君、落とされないようにしっかり掴まってね」
「は、はい!」

 彼と同乗するのは初めてであるが、実家にいた頃は父や兄と同乗して出かけることはしばしばあったので慣れてはいる。しっかりとアナスタージウス室長にくっつくと、薬草の独特の香りがした。

 ああ、もっと触れていたい……

 好きすぎてたまらない。一度抱かれたら、この衝動は解消されるのだろうか。それとも病みつきになってしまうだろうか。

 仕事ができなくなったら、あなたのそばにはいられなくなってしまう……だから、それだけは避けないといけないのに。

 湧き上がる自分の浅ましい感情と葛藤しながら、私はアナスタージウス室長にくっついていたのだった。

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