王立魔導研究所は今日も平和です❤︎

一花カナウ

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最後までするならあなたがいい

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「とにかく、いい子だから我慢してね。気絶している君に何度も吐精しちゃって、冷静さを取り戻してからずっと後悔しているんだ。このくらいはさせて」
「え、え……待って、何度もって……」
「本当に、こんなつもりじゃなかったんだ……薬湯事件のときに気づくことができれば、回避できていたんだろうけど……本当に申し訳ない……」

 指はしっかりと仕事をしているが、うなだれたアナスタージウス室長は心なしか縮んで見える。

「謝るくらいなら、きちんと説明してください。何でこんな……あと、水を浴びて服を着たいんですけど」

 いつまでも半裸でいるのはごめんなのだが、全身粘液まみれの汗まみれで不快である。まだ甘い匂いを感じるし、変な気分になっているのは触れられているからだけではないのだろう。洗い流して、服も洗濯をして、さっぱりしたい。

「ああ、そうだね。服は処置が終わってからで。あとは、いろいろ言いにくいんだけど……」
「もったいぶっていないで、教えてください」

 薬湯事件のことが持ち出されたのも気にかかる。この事態を回避できたかもしれなかったのに見落としてしまっていたとも言われたが、つまりは何がどうだというのだろう。

 薬湯事件も、粘液まみれ事件も、別に誰かが悪いというわけではないんじゃないの? 運がなかっただけの事故ではないの?

 私が責めるように言うと、アナスタージウス室長は空いているほうの手で頬を掻く。うーんと唸ったあとに、盛大なため息をついた。

「――君はね、特殊体質の持ち主なんだよ。薬物の効能が変わってしまうタイプの。僕とは違ってね」
「特殊……体質……?」

 薬物の効能が変わる、って? それに、僕とは違って、って何?

 私が目を瞬かせていると、アナスタージウス室長は言葉を続けた。

「僕がこの研究を始めた理由、さっきははぐらかしてしまったけれど、実はこの特殊体質にあるんだ」
「え、室長も特殊体質……?」

 聞き返せば、室長はゆっくり頷く。

「僕は生まれつき薬や毒に対して非常に鈍いんだ。それはどうも丈夫なのとは違うらしくてね。その違いに興味があって、僕は植物系の研究者になったんだよ」

 このことはみんなには内緒だよ、と続けられて、私は自分が彼にとって特別な存在になれたような気がした。嬉しい。

「――そして、フィルギニア君。君は、無効化してしまう傾向の僕とは違って、薬物や毒物の効果を変更してしまうタイプのようだ。効き目を想定以上に引き上げてしまうことが多いのかな。検証が足りないから断定は避けるけど」

 なるほど、それなら薬湯事件の理屈は通る。

 だけど、室長に処方してもらった中和剤はあんまり効いていないのよね……。そういう面では、本来の効能を変えてしまうって予想は正しそうだけど。

 アナスタージウス室長の考察は続く。

「その上、君の体液――例えば汗だけど、それと虫除けオイルが反応してしまったらしくて、ね。それがさっきの植物を刺激してしまったんだ。フェロモンが強く出た、ってことなんだけど……それで、本来はおとなしくて安全なのに、凶暴化したわけ」

 なんとも迷惑な! でも、それが本当だったら、私はもうこの実験場に入れないわよね……助手のお仕事はどうすれば……

「最後の一線を越える前に見つけられたからよかったけれど、あのままだと君は何度もしつこく侵されて、達したときに発生する女性特有の香りを養分として吸い取られるところだったんだ。かつては拷問に利用したそうだよ」

 聞きたくない注釈が入った。

 なんつー植物をこんな場所で育てているんですか、室長……

 おそらく、彼の趣味でこういう植物を育てているわけではないのだろう。
 獣道を歩きながらこの実験場で管理している植物の説明を受けたとき、その主な用途は医療用だった。しかしその一方で、管理している一部は国で利用されてきた武器としての植物だったので、歴史的な価値を含めて育てて保存しているのだと考えられる。通路からも離れた深い場所で育てられていることも、安全管理の一環だったに違いない。

 現象については、これ以上の解説はいらないだろう。検証が必要な部分もあるので、ここで議論をするには情報が足りない。
 となると、私には別の疑問が湧いてくる。

「待ってください。自分が襲われた理由はわかりましたが……室長、どうして私を……その、抱いたんですか?」
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