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私と彼の日常生活
19.疑問に感じなかったのか?
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「ぐっ」
「ちょっと熱が出ますけど、通常の反応なので我慢ですよ」
オパールが唸ったので私は患部をさする。熱い。術としては順調な傾向だ。
「――なあ、君」
「はい?」
オパールの瞳の輝きが揺れる。同名の宝石と同じように複数の色が混ざる瞳は、私を誘惑するように妖しく光った。
「オレがどうして怪我をしたのか疑問に感じなかったのか?」
どうして怪我をしたのか。
腕を落とすほどとは珍しい。私と組んでいたときにこれほど損傷が激しい怪我をしたことはなかったと思う。
私が首を傾げると、オパールは薄く笑って唇を動かす。
「護送中の精霊使いが魔物に変わったのが真実なのか疑問に思わなかったのか?」
続けて問いかけてくる。
オパールが嘘をつかないといけない理由がわからないし、この瘴気の濃さを思うに彼の報告は真だと判断できる。
私が言葉を返そうと口を開いたタイミングで、オパールは自身の血まみれのマントを持ち上げた。
「この返り血がオレの相棒のものであるのは確定だとして、その死がどうしてもたらされたのか考えなかったのか?」
「――え?」
頭の中がぐるぐるする。
なにか見落としている気がする。
その正体を掴みかけたとき、私はオパールに押し倒されていた。
「オパールさん?」
「オパールっ!」
「おっと、動いてくれるなよ? 彼女を魔物にしたくないならな」
ルビが動くのを躊躇った。
オパールはテーピングを解いて、自分の左腕の感触を確認している。
「さすがだな。直るのが早えわ」
「……裏切ったんですか?」
「君からはそう見えるか?」
オパールの問いに私は首を横に振る。
「でも、この状況はそう判断されます」
「まあそうだろうな」
「どうして」
「人間の味方をしているのも退屈になってきたから、かな。君と一緒にいられるわけでもないし」
そう返事をして、転がっていた私を起こすなり抱きしめてきた。
「オパールさん?」
どういうことだろう。この抱擁は私をルビに渡さないようにするためのものとは違う気がする。私を壊そうというものでもない。
困惑していると、オパールに頬擦りされる。大型の飼い犬が戯れてきているみたいな感じだ。親愛の行為。
「……君さ。こうなる前にオレと逃げてくれたらよかったんだよ。特殊強襲部隊に行かず、オレのパートナーでいてくれたら……君からの求婚も、オレ、すごく嬉しかったのに」
「……ええ? ちょっと待ってください。私、よくわかんない」
――オパールさんは私を好いていたってこと? だとしても、話が繋がらないんだけど?
私はフラれたのではなかったのか。勢いで求婚した、あの時に。
オパールの腰に手を回してトントンと叩く。離してもらいたいのに逃れられない。本気を出せば脱出できるが、そうなるとオパールを壊すことになる。それは嫌だ。
私がもぞもぞしていると、ルビが唇を動かす。
「ちょっと熱が出ますけど、通常の反応なので我慢ですよ」
オパールが唸ったので私は患部をさする。熱い。術としては順調な傾向だ。
「――なあ、君」
「はい?」
オパールの瞳の輝きが揺れる。同名の宝石と同じように複数の色が混ざる瞳は、私を誘惑するように妖しく光った。
「オレがどうして怪我をしたのか疑問に感じなかったのか?」
どうして怪我をしたのか。
腕を落とすほどとは珍しい。私と組んでいたときにこれほど損傷が激しい怪我をしたことはなかったと思う。
私が首を傾げると、オパールは薄く笑って唇を動かす。
「護送中の精霊使いが魔物に変わったのが真実なのか疑問に思わなかったのか?」
続けて問いかけてくる。
オパールが嘘をつかないといけない理由がわからないし、この瘴気の濃さを思うに彼の報告は真だと判断できる。
私が言葉を返そうと口を開いたタイミングで、オパールは自身の血まみれのマントを持ち上げた。
「この返り血がオレの相棒のものであるのは確定だとして、その死がどうしてもたらされたのか考えなかったのか?」
「――え?」
頭の中がぐるぐるする。
なにか見落としている気がする。
その正体を掴みかけたとき、私はオパールに押し倒されていた。
「オパールさん?」
「オパールっ!」
「おっと、動いてくれるなよ? 彼女を魔物にしたくないならな」
ルビが動くのを躊躇った。
オパールはテーピングを解いて、自分の左腕の感触を確認している。
「さすがだな。直るのが早えわ」
「……裏切ったんですか?」
「君からはそう見えるか?」
オパールの問いに私は首を横に振る。
「でも、この状況はそう判断されます」
「まあそうだろうな」
「どうして」
「人間の味方をしているのも退屈になってきたから、かな。君と一緒にいられるわけでもないし」
そう返事をして、転がっていた私を起こすなり抱きしめてきた。
「オパールさん?」
どういうことだろう。この抱擁は私をルビに渡さないようにするためのものとは違う気がする。私を壊そうというものでもない。
困惑していると、オパールに頬擦りされる。大型の飼い犬が戯れてきているみたいな感じだ。親愛の行為。
「……君さ。こうなる前にオレと逃げてくれたらよかったんだよ。特殊強襲部隊に行かず、オレのパートナーでいてくれたら……君からの求婚も、オレ、すごく嬉しかったのに」
「……ええ? ちょっと待ってください。私、よくわかんない」
――オパールさんは私を好いていたってこと? だとしても、話が繋がらないんだけど?
私はフラれたのではなかったのか。勢いで求婚した、あの時に。
オパールの腰に手を回してトントンと叩く。離してもらいたいのに逃れられない。本気を出せば脱出できるが、そうなるとオパールを壊すことになる。それは嫌だ。
私がもぞもぞしていると、ルビが唇を動かす。
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