クジ引き婚ですのであしからずっ‼︎【完結】

一花カナウ

文字の大きさ
19 / 29
私と彼の日常生活

19.疑問に感じなかったのか?

しおりを挟む
「ぐっ」
「ちょっと熱が出ますけど、通常の反応なので我慢ですよ」

 オパールが唸ったので私は患部をさする。熱い。術としては順調な傾向だ。

「――なあ、君」
「はい?」

 オパールの瞳の輝きが揺れる。同名の宝石と同じように複数の色が混ざる瞳は、私を誘惑するように妖しく光った。

「オレがどうして怪我をしたのか疑問に感じなかったのか?」

 どうして怪我をしたのか。
 腕を落とすほどとは珍しい。私と組んでいたときにこれほど損傷が激しい怪我をしたことはなかったと思う。
 私が首を傾げると、オパールは薄く笑って唇を動かす。

「護送中の精霊使いが魔物に変わったのが真実なのか疑問に思わなかったのか?」

 続けて問いかけてくる。
 オパールが嘘をつかないといけない理由がわからないし、この瘴気の濃さを思うに彼の報告は真だと判断できる。
 私が言葉を返そうと口を開いたタイミングで、オパールは自身の血まみれのマントを持ち上げた。

「この返り血がオレの相棒のものであるのは確定だとして、その死がどうしてもたらされたのか考えなかったのか?」
「――え?」

 頭の中がぐるぐるする。
 なにか見落としている気がする。
 その正体を掴みかけたとき、私はオパールに押し倒されていた。

「オパールさん?」
「オパールっ!」
「おっと、動いてくれるなよ? 彼女を魔物にしたくないならな」

 ルビが動くのを躊躇った。
 オパールはテーピングを解いて、自分の左腕の感触を確認している。

「さすがだな。直るのが早えわ」
「……裏切ったんですか?」
「君からはそう見えるか?」

 オパールの問いに私は首を横に振る。

「でも、この状況はそう判断されます」
「まあそうだろうな」
「どうして」
「人間の味方をしているのも退屈になってきたから、かな。君と一緒にいられるわけでもないし」

 そう返事をして、転がっていた私を起こすなり抱きしめてきた。

「オパールさん?」

 どういうことだろう。この抱擁は私をルビに渡さないようにするためのものとは違う気がする。私を壊そうというものでもない。
 困惑していると、オパールに頬擦りされる。大型の飼い犬が戯れてきているみたいな感じだ。親愛の行為。

「……君さ。こうなる前にオレと逃げてくれたらよかったんだよ。特殊強襲部隊に行かず、オレのパートナーでいてくれたら……君からの求婚も、オレ、すごく嬉しかったのに」
「……ええ? ちょっと待ってください。私、よくわかんない」

 ――オパールさんは私を好いていたってこと? だとしても、話が繋がらないんだけど?

 私はフラれたのではなかったのか。勢いで求婚した、あの時に。
 オパールの腰に手を回してトントンと叩く。離してもらいたいのに逃れられない。本気を出せば脱出できるが、そうなるとオパールを壊すことになる。それは嫌だ。
 私がもぞもぞしていると、ルビが唇を動かす。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんとの親子丼をちょっと書きたくなっただけです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...