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私の隠し事、彼の秘め事
28.もうちょっとで私、思い出せそうなんですよ
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「抱けなかったんじゃない、抱かないと決めていただけだ。君が嫌がるといけないから」
「白い結婚を望んだのは私ですし、それを律儀に守っていただけたことには感謝しているんですけど、それにしては違和感があったんですよね。《ルビ》なのに、私が振った性的な話題も避けるから」
「同位体は同位体だからな。俺とは別の個体だ。関係ないだろ」
「さんざん仕事先でああいう煽られ方してきたんですよ? 私がノイローゼ気味になるくらい、ルビは性欲が強くて技術があるって聞かされてきたわけです。オパールさんもそういう認識だったのに、あなたは違う。個体差にしても、極端なんですよ」
「それは君を大事にしたいからだ。そういう気持ちがあっても不思議じゃないだろう?」
私はゆっくりと首を横に振った。
「大事にしたいと考えてくださったことを否定するつもりはないんですが、それはたぶん建前なのだろうって思うんですよね」
「なんで」
「もうちょっとで私、思い出せそうなんですよ」
「何を?」
「私があなたを襲った日のこと」
足を動かす。その反動で上体を起こし、状況を飲み込めていないルビの身体を横に倒す。瞬時に彼の上に私は乗った。
形勢逆転である。
「……油断しすぎでは?」
「む……そうだな」
ルビが不貞腐れたように横を向いた。格好がつかないとでも考えているのだろうか。ちょっと可愛い。
「私、自分の本性を知らないわけじゃないんですよ、ルビさん。興奮すると手におえなくなるのは、戦闘中だけでなく、こういう性的なことでもそうなんですって」
「なんだ、覚えていたのかよ」
「覚えてないですよ。興奮状態だと、私、記憶が跳んじゃうみたいなんで。止めてくれたオパールさんがこの仕事を始めた頃に教えてくれました」
そうだ。だから気をつけるように、八割くらいの力でやりくりしろって言われていたんだ。
私を働かせすぎないために、特殊強襲部隊行きを止められていたんだ。ハイになったら記憶が跳ぶし、なにをするかわからないから。
やっと繋がってきた。
どうして忘れているんだろう。興奮しすぎじゃなかろうか。
ルビが降伏の表情になっている。
「ああ、そういう……」
「よっぽど、気持ちよかったんでしょうね。あなたを抱いて、記憶跳ばしちゃうなんて」
私が顔を覗き込むようにすると、ルビは逃げた。
「……そういうことなんだろうな」
「で。また記憶が跳んでも、ルビさんが責任取ってくださるんでしたっけ?」
「そのつもりでいるが……」
「なら、隠し事も明かしちゃってください。都合よく忘れておくので」
ルビの耳元で囁いて、首筋に吸いつく。ルビがビクッと震えたのがすぐにわかった。気持ちがいいようだ。
「拷問かよ……。そもそも俺を襲うな」
「私、こっちの方が好きなんですよね」
「知ってる」
私が襲った日のことをルビが覚えているのであれば。知っているのは当然だ。
「白い結婚を望んだのは私ですし、それを律儀に守っていただけたことには感謝しているんですけど、それにしては違和感があったんですよね。《ルビ》なのに、私が振った性的な話題も避けるから」
「同位体は同位体だからな。俺とは別の個体だ。関係ないだろ」
「さんざん仕事先でああいう煽られ方してきたんですよ? 私がノイローゼ気味になるくらい、ルビは性欲が強くて技術があるって聞かされてきたわけです。オパールさんもそういう認識だったのに、あなたは違う。個体差にしても、極端なんですよ」
「それは君を大事にしたいからだ。そういう気持ちがあっても不思議じゃないだろう?」
私はゆっくりと首を横に振った。
「大事にしたいと考えてくださったことを否定するつもりはないんですが、それはたぶん建前なのだろうって思うんですよね」
「なんで」
「もうちょっとで私、思い出せそうなんですよ」
「何を?」
「私があなたを襲った日のこと」
足を動かす。その反動で上体を起こし、状況を飲み込めていないルビの身体を横に倒す。瞬時に彼の上に私は乗った。
形勢逆転である。
「……油断しすぎでは?」
「む……そうだな」
ルビが不貞腐れたように横を向いた。格好がつかないとでも考えているのだろうか。ちょっと可愛い。
「私、自分の本性を知らないわけじゃないんですよ、ルビさん。興奮すると手におえなくなるのは、戦闘中だけでなく、こういう性的なことでもそうなんですって」
「なんだ、覚えていたのかよ」
「覚えてないですよ。興奮状態だと、私、記憶が跳んじゃうみたいなんで。止めてくれたオパールさんがこの仕事を始めた頃に教えてくれました」
そうだ。だから気をつけるように、八割くらいの力でやりくりしろって言われていたんだ。
私を働かせすぎないために、特殊強襲部隊行きを止められていたんだ。ハイになったら記憶が跳ぶし、なにをするかわからないから。
やっと繋がってきた。
どうして忘れているんだろう。興奮しすぎじゃなかろうか。
ルビが降伏の表情になっている。
「ああ、そういう……」
「よっぽど、気持ちよかったんでしょうね。あなたを抱いて、記憶跳ばしちゃうなんて」
私が顔を覗き込むようにすると、ルビは逃げた。
「……そういうことなんだろうな」
「で。また記憶が跳んでも、ルビさんが責任取ってくださるんでしたっけ?」
「そのつもりでいるが……」
「なら、隠し事も明かしちゃってください。都合よく忘れておくので」
ルビの耳元で囁いて、首筋に吸いつく。ルビがビクッと震えたのがすぐにわかった。気持ちがいいようだ。
「拷問かよ……。そもそも俺を襲うな」
「私、こっちの方が好きなんですよね」
「知ってる」
私が襲った日のことをルビが覚えているのであれば。知っているのは当然だ。
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