【R-18】不眠症騎士と抱き枕令嬢【書籍版後日譚】

一花カナウ

文字の大きさ
13 / 13

エピローグ

しおりを挟む
「おはよう、レティ」

 眠りから覚めたレティーシャにセオフィラスが声をかけてきた。彼のシルエットを見るに、どうも彼はガウンを羽織っているようだ。

 今は何時かしら……?

 外はすっかり明るくなっている。部屋に差し込む陽射しがまぶしくて、レティーシャは目を細めた。

「お、おはよう……ございます、セオさま」

 自分がずいぶんと眠っていたらしいことに気づくと、申し訳なくて毛布を顔に引き寄せた。

 しかも、なんか恥ずかしいですし……

 こんな明るい部屋の中で、いまだ裸でいることが照れくさい。セオフィラスが身体を清めておくと宣言していたとおり、肌はさっぱりとしていて清潔になっているようだった。

「顔を隠さないで、レティ。もっとよく見たい」
「寝顔をずっとご覧になっていたのでしょう? よいではありませんか」
「覆ってしまったら、目覚めのキスができないのです」

 セオフィラスに寂しげな声色で促されてしまうと断れない。
 レティーシャがちょこっと頭を出せば、それに合わせるように毛布を引き剥がされた。

「なっ!」

 突然のことに、声は出せたもののレティーシャの身体は硬直してしまう。
 柔らかな肢体が陽射しにさらされる。白い肌がよりいっそう白く透けるように見えた。

「とてもきれいな肌ですね。白磁に似ている」

 セオフィラスの手がレティーシャの細い腰を撫でて胸元に伸びる。

「表面はとてもなめらかで、いつまでも触れていたいと思えます。柔らかくて温かく、心地がいい」

 寒さでツンと立った赤い頂きを指の腹で撫でて刺激されると、ヘソの下あたりがキュンと切なく疼いた。

「せ、セオさま……?」

 まじまじと見られるのは恥ずかしいし、触れられるとくすぐったい。

 どうしよう……

 それでも動くことができないのは、見られるのも触られるのも気持ちがよかったからだ。もっとそうしてほしいと感じているのに、そう伝えることははしたない気がして控える。
 だから、彼がどうしたいのかを訊ねるために名を呼んだ。

「レティ。俺はもっとあなたを知りたい。全身でもっと感じたい。レティはいかがですか?」

 その問いも胸の先を爪で軽く引っ掻きながらなので、レティーシャの唇からは甘い吐息がこぼれ始めていた。

「セオ、さまは……ずるいです……っ!」

 拒絶したと思われたくなくて、ムズムズする感覚を外に逃すこともできずに耐えてきた。

 もう限界……

 足の付け根が潤い始めていることをレティーシャは素直に認め、胸を撫でるセオフィラスの手を掴む。

「気持ちがよすぎて……ああ、セオさま、お願い……」
「可愛いレティ」

 待ちきれないとばかりにセオフィラスはレティーシャの上に覆いかぶさる。小さな嬌声が上がる唇にセオフィラスが自身の唇を重ねると、次は食むように唇を塞ぐ。舌を絡める濃厚な口づけに移行するまでに時間はかからなかった。

「はぁ……うんっ……んぁっ!」

 とろけるようなキスと胸の刺激に反応して、レティーシャは歓喜で身体をビクビクと震わせた。

「すぐにあなたの中を満たして差し上げます。掻き集めるなんてことが必要ないくらい、俺は溜め込んでいるのですよ? 受け取ってくれますよね、レティ?」

 ああ、そうなのね。

 こぼしても構わないくらいたくさんあるなら安心だと思うと、自然と足が開いた。閉じていなければ夜にもらったものを全て流してしまいそうで、懸命に力を入れていたのだ。

「ぜ……全部は難しいかもしれませんが……私はほしいです」
「レティ……」

 すぐにセオフィラスの昂ぶりがガウンの下から取り出される。蜜口にあてがわれると、レティーシャは招くように腰を持ち上げた。

「待って、レティ」

 ぬるっと先端が入ったことに驚いたのはセオフィラスの方だった。

「あ、あの、蓋をしないと出て行ってしまうから……」

 ドクドクと蜜が溢れている感覚がある。蜜とともに昨夜の分が流れ落ちてしまう。その前にどうにかしたくて、レティーシャが思いついたのはこの方法だった。

「……ああ、そうですね。ですが、刺激が」
「お、奥までどうぞ……?」

 セオフィラスが苦悩する表情を見せて、前髪を掻き上げ額に手を置く。目を閉じ何かを思案する顔をレティーシャが見つめていると、急に腰を突き上げられた。

「あっ!」

 ぐっと奥まで挿し込まれて、その拍子にぎゅっと彼の昂ぶりを締め付けた。

「痛みで嫌がっていたらと考えていたのですが……あなたがその気なら、遠慮することはなさそうですね」
「痛いのは……その、痛いですけど、私もセオさまを感じたいので……付き合わせてください」
「ああ、もう……っ! レティは黙っててください」

 そうはっきりと告げると、セオフィラスはキスをくれる。

「こんなに可愛い台詞を聞かされることになるとは思わなかった。後悔しても知りませんよ、レティ」

 可愛い台詞?

 なんのことを言っているのだろうと自分の言動を振り返る余裕は、レティーシャにはもうなかった。
 激しい口づけと抽挿で、思考がセオフィラスの与える快感に染まってしまったからだ。

 セオさま……好き……

 全身で彼を受け止める――その悦びに心も身体も満たされ、レティーシャは幸せを噛みしめる。彼との子どもがほしい以上に、自分が愛され求められていることが嬉しい。この行為が妻としての役割の一つだと思うと、より胸が高鳴った。

 私、セオさまのためにも頑張りますね。

 その時間は、日が暮れるまで続いたのだった。


*****


 ぐっすりと眠るレティーシャの頭を撫でると、彼女はくすぐったそうに身体をよじりながらも幸せそうに微笑んだ。

「……セオさま、好き……」

 寝言にどきりとさせられる。眠っていても可愛い。

 こんなに夢中にさせられるとは……

 セオフィラスは自分の想定と異なることに困惑し、ため息をついた。

 元気ならそれでいいのですが。

 隣でスヤスヤと眠るレティーシャは満足げだ。とはいえ、きっと疲れはあるだろう。
 レティーシャはセオフィラスの要求に全て応えてくれた。そんな姿は健気でいじらしく、セオフィラスの劣情を煽るのに充分すぎた。

「全く……少しは加減しないとな」

 ランドルフに「セオ兄は体力があるんだから、抱き潰さないように加減しろよー。執着するタイプなのはわかってるけど、初夜くらいは優しくな?」などと言われていたのを思い出す。一度レティーシャに眠るように促したのは、自分の癖も承知しているからだった。

「レティ。講義はまだまだ続きますから、覚悟してくださいね」

 夫としてセオフィラスに慣れる講義が始まったばかりであるということを、眠るレティーシャはまだ知らない。

《完》
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...