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第9話 家まで送るとはそういう意味ですか⁉︎
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近くの駐車場に向かうのだろうと思い、悠に従って歩くこと五分。見えて来たのは大きなマンションだった。ここ最近の再開発で建てられたもので、二十階まである高層マンションだ。エントランスがホテルみたいな作りになっていて、普通の人は少し入りにくい雰囲気が漂う。
この人、ここの住人なのかな?
車を取りに向かっているはずなので、このマンションの駐車場を目指しているのだろうと史華は考える。史華の手を握って迷わず歩いている悠の横顔はとても楽しげだ。
悠はオートロックを指紋認証で解除して、マンション内部に足を踏み入れた。高い天井にはキラキラした照明が設置され、幅の広い廊下を照らす。大理石らしく綺麗に磨かれて輝く床は、歩く足音をよく響かせた。
「ほえ~……」
庶民では生活できそうにない空気に刺激され、史華は惚けた声を出した。ドラマの中でしか見たことがない景色がそこにあって、自分が浮いてしまっているように感じられる。現実味がない。
エレベーターの中もキラキラした感じで、史華が知っているものとは広さも装飾も違う。キョロキョロしながらいちいち驚いているうちに、部屋に通されたことにやっと気付いた。
「あれ?」
ドアの閉まる音が背後でする。部屋のように思った場所が玄関であることをその音で理解した。
「ようこそ、史華ちゃん。俺のうちへ」
「はぁ?」
どういう意味だと史華が振り向くと、満面の笑みを浮かべた悠が見下ろしていた。
「家まで送ってくれるんじゃ……」
戸惑い、確認する史華に、悠は答える。
「うん。だから、ここ、俺のうち」
「じゃなくてっ⁉︎」
「俺は、家まで送るって言ったし、君は好きにしてくれと答えたよね?」
「そ、それは……」
確かにそういうやりとりは記憶にある。だが、こういう展開を予想していたわけではない。
「大丈夫だって。いきなり食べたりしないから」
狼狽えていると、悠は慣れた様子で靴を脱ぎ、スリッパを用意した。史華の分を床に置いて手で勧める。
「た、食べるって、何を……」
「美味しそうな史華ちゃんを、だけど?」
「あたしが美味しそう?」
意味がわからない。史華は首を傾げる。
その反応を見たからだろうか、悠がくすくすと笑い出した。
「この状況でそういう反応するって、君、どれだけすれてないんだよ。こういうシチュエーション、空想したことないの?」
妄想癖が酷いって自分で言っていたくせに、と続けて悠が楽しそうに笑う。
その指摘にやっと彼が何を言ってからかっていたのかを理解した。みるみるうちに身体が熱を帯びる。そして史華は大きく頬を膨らませた。
「あたし、一人で帰りますっ!」
「帰さないよ」
宣言して踵を返したはずの史華の身体は、簡単に悠の方に引き寄せられた。背負っていたミニリュックを引っ張られたらしい。小柄な身体はすっぽりと彼の腕の中に収まってしまう。
「そういう発言をするってことは、いやらしいことも考えたってことでしょっ! 信用できませんっ! しかも、敵の本拠地でなんて一緒にいられませんっ!」
出せるだけの大声で非難して、史華はもがいた。どんなにイケメンであっても、それは遠くから鑑賞するのに限るのであって、こうして接するなんてそもそもあり得ない。成り行きで付き合うことを強要されて、彼の家にお持ち帰りされてしまったけれど、これ以上は流石にごめんだ。
「敵の本拠地って……」
悠の呆れ声がかなり近くで聞こえる。史華の抵抗は全然効いていないらしい。
「睡眠不足と空腹で倒れていたわりには、随分と体力が余っているようだね」
よいしょ、と声がしたかと思うと、ひょいと身体が宙に浮いた。
この人、ここの住人なのかな?
車を取りに向かっているはずなので、このマンションの駐車場を目指しているのだろうと史華は考える。史華の手を握って迷わず歩いている悠の横顔はとても楽しげだ。
悠はオートロックを指紋認証で解除して、マンション内部に足を踏み入れた。高い天井にはキラキラした照明が設置され、幅の広い廊下を照らす。大理石らしく綺麗に磨かれて輝く床は、歩く足音をよく響かせた。
「ほえ~……」
庶民では生活できそうにない空気に刺激され、史華は惚けた声を出した。ドラマの中でしか見たことがない景色がそこにあって、自分が浮いてしまっているように感じられる。現実味がない。
エレベーターの中もキラキラした感じで、史華が知っているものとは広さも装飾も違う。キョロキョロしながらいちいち驚いているうちに、部屋に通されたことにやっと気付いた。
「あれ?」
ドアの閉まる音が背後でする。部屋のように思った場所が玄関であることをその音で理解した。
「ようこそ、史華ちゃん。俺のうちへ」
「はぁ?」
どういう意味だと史華が振り向くと、満面の笑みを浮かべた悠が見下ろしていた。
「家まで送ってくれるんじゃ……」
戸惑い、確認する史華に、悠は答える。
「うん。だから、ここ、俺のうち」
「じゃなくてっ⁉︎」
「俺は、家まで送るって言ったし、君は好きにしてくれと答えたよね?」
「そ、それは……」
確かにそういうやりとりは記憶にある。だが、こういう展開を予想していたわけではない。
「大丈夫だって。いきなり食べたりしないから」
狼狽えていると、悠は慣れた様子で靴を脱ぎ、スリッパを用意した。史華の分を床に置いて手で勧める。
「た、食べるって、何を……」
「美味しそうな史華ちゃんを、だけど?」
「あたしが美味しそう?」
意味がわからない。史華は首を傾げる。
その反応を見たからだろうか、悠がくすくすと笑い出した。
「この状況でそういう反応するって、君、どれだけすれてないんだよ。こういうシチュエーション、空想したことないの?」
妄想癖が酷いって自分で言っていたくせに、と続けて悠が楽しそうに笑う。
その指摘にやっと彼が何を言ってからかっていたのかを理解した。みるみるうちに身体が熱を帯びる。そして史華は大きく頬を膨らませた。
「あたし、一人で帰りますっ!」
「帰さないよ」
宣言して踵を返したはずの史華の身体は、簡単に悠の方に引き寄せられた。背負っていたミニリュックを引っ張られたらしい。小柄な身体はすっぽりと彼の腕の中に収まってしまう。
「そういう発言をするってことは、いやらしいことも考えたってことでしょっ! 信用できませんっ! しかも、敵の本拠地でなんて一緒にいられませんっ!」
出せるだけの大声で非難して、史華はもがいた。どんなにイケメンであっても、それは遠くから鑑賞するのに限るのであって、こうして接するなんてそもそもあり得ない。成り行きで付き合うことを強要されて、彼の家にお持ち帰りされてしまったけれど、これ以上は流石にごめんだ。
「敵の本拠地って……」
悠の呆れ声がかなり近くで聞こえる。史華の抵抗は全然効いていないらしい。
「睡眠不足と空腹で倒れていたわりには、随分と体力が余っているようだね」
よいしょ、と声がしたかと思うと、ひょいと身体が宙に浮いた。
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