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第24話 鏡に問いを
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化粧直しはどうにもならなくて、結局メイクを全部落としてやり直した。いつものすっぴんメイクで、時間のなさが窺える。こんな凡人顏だと彼と並ぶのが恥ずかしいのだが、悠が「普段の姿も充分に魅力的だよ」などと口説き始めたので開き直ることにした。
その後、悠が予約してくれたお店で昼食。眺めの良い素敵なレストランの半個室で、見慣れないお洒落なメニューにドキドキしながらいただいた。料理についても悠はそれなりに知識があるらしく、聞けばいろいろと返ってきて興味深い。ハーブ関連が特に詳しくて史華が褒めると、仕事でも使う知識だから仕方なく覚えたのだと苦笑いを浮かべて答えたのだった。
昼食を終えたら解散だろうと思っていた史華だったが、そのままショッピングをすることになった。悠と一緒にいると、周りの視線が彼に集まっているのがわかる。
やっぱりこの人目立つよね……。
釣り合わないことは百も承知しているので、周りの視線や言葉を気にするのはやめた。不毛なことだ。そんなことよりも、今を楽しむ努力をしたい。自分が楽しめているかはわからないのだが、悠が楽しそうにしているのを見られれば自分もいくらか楽しく感じられた。
悠の仕事で関わりがあったという雑貨屋にも足を運ぶ。やはりお洒落なものがたくさん揃っている。可愛いのだけど大人が使っても可愛すぎない気品のようなものを感じさせるデザインの商品は、株式会社ラブロマンスが手掛けたものである。会社のホームページにも載っていたが、改めて実物を見るとその良さがより伝わってくる。愛由美も好きそうだ。
「悠さんは、自社の商品をしっかり把握しているんですね」
ふと、当然だろうにそんな台詞が出てしまった。
「好きだからね。自信を持ってお勧めできる物しか出していないし」
無神経だったかもしれないと反省した台詞に、悠は怒ることなく答えてくれた。どこか慈しみを感じさせる言い方で、心から好いていることが伝わってくる。
「だから、社長なんですね。最初にホームページを見たとき、顔で社長をやっているのかと思いました」
正直に言うと、悠はぷっと噴き出して笑った。
「俺が継ぐことに決めたとき、他の経営陣は俺を傀儡にするつもりだったみたいだけどね。みんなそう思っていたようだから、俺が一番相応しいってところを見せつけてやっているんだ」
悠の台詞に、史華は勢津子の前で切った啖呵を思い出す。それだけ仕事に誇りを持っているということだ。
「かっこいいです」
勢津子を黙らせたあの台詞は、つまり他に社長として相応しい人間がいないことを示している。饒舌な彼女を黙らせたのだから、大層な手腕の持ち主であることを想起させた。
素直に褒めると、悠がニンマリとした。
「もう一度言って」
「かっこ……いいです」
催促されるとなんか恥ずかしい。照れ臭くてぷいっと横を向いた。
「俺の魅力が伝わっているみたいで何よりだ」
悠は史華の手を引いて店の外に出る。どこかへと向かっているようだ。
「えっと、次はどちらへ?」
「服、買おうかなって。史華ちゃん、あまりデート用の洋服を持っていないみたいだから」
そのくらいあります、と言って返しても良かったのだが、服がないのは事実だし、彼がどんな服を選ぶのかに興味が湧いた。ラブロマンスで作る商品のような服を選ぶのか、それ以外なのか。
淡い期待を抱いたとき、現実を思い出す。就活中である史華には悠が選びそうな洋服に支払える手持ちがない。
「え、選ぶだけで良いです! あたし、給料前でお金ないし」
「俺が買ってプレゼントするから、気にしなくて良いよ」
「気にしますよ!」
「俺のカノジョなんだから。――あ、別に今の格好が悪いと言っているわけじゃないんだよ。皆藤のところに連れて行ったとき、大幅衣装チェンジさせられなかったんだから、自信持って大丈夫。トレンドかどうかはさておき、君に似合っているって証拠だからさ」
そう言われると嬉しい。自信を持って良いのか。
「でも、悪いですし……」
「じゃあ、さっきのキスのお詫びとして受け取れば良いさ。許可を得る前にしちゃったし」
「あ、あれは――」
卑怯だ。お詫びとして受け取るという選択肢を選ぶように誘導している。
「わ、わかりました。でも、悠さんが選んだのが気に入らなかったら、この話はなしですからね」
「ふふ。良いよ。絶対に気に入ってもらえる自信があるから」
我ながらよい返しだと思ったのに、悠が自信満々にさらに返してくるのでむすっとしてしまう。彼のペースに乗せられっぱなしなのが、ちょっと気に食わない。
なんでこの人はこんなに自信を持てるのだろう……。
リードするその手を握り返して、史華は不思議に感じるのだった。
その後、悠が予約してくれたお店で昼食。眺めの良い素敵なレストランの半個室で、見慣れないお洒落なメニューにドキドキしながらいただいた。料理についても悠はそれなりに知識があるらしく、聞けばいろいろと返ってきて興味深い。ハーブ関連が特に詳しくて史華が褒めると、仕事でも使う知識だから仕方なく覚えたのだと苦笑いを浮かべて答えたのだった。
昼食を終えたら解散だろうと思っていた史華だったが、そのままショッピングをすることになった。悠と一緒にいると、周りの視線が彼に集まっているのがわかる。
やっぱりこの人目立つよね……。
釣り合わないことは百も承知しているので、周りの視線や言葉を気にするのはやめた。不毛なことだ。そんなことよりも、今を楽しむ努力をしたい。自分が楽しめているかはわからないのだが、悠が楽しそうにしているのを見られれば自分もいくらか楽しく感じられた。
悠の仕事で関わりがあったという雑貨屋にも足を運ぶ。やはりお洒落なものがたくさん揃っている。可愛いのだけど大人が使っても可愛すぎない気品のようなものを感じさせるデザインの商品は、株式会社ラブロマンスが手掛けたものである。会社のホームページにも載っていたが、改めて実物を見るとその良さがより伝わってくる。愛由美も好きそうだ。
「悠さんは、自社の商品をしっかり把握しているんですね」
ふと、当然だろうにそんな台詞が出てしまった。
「好きだからね。自信を持ってお勧めできる物しか出していないし」
無神経だったかもしれないと反省した台詞に、悠は怒ることなく答えてくれた。どこか慈しみを感じさせる言い方で、心から好いていることが伝わってくる。
「だから、社長なんですね。最初にホームページを見たとき、顔で社長をやっているのかと思いました」
正直に言うと、悠はぷっと噴き出して笑った。
「俺が継ぐことに決めたとき、他の経営陣は俺を傀儡にするつもりだったみたいだけどね。みんなそう思っていたようだから、俺が一番相応しいってところを見せつけてやっているんだ」
悠の台詞に、史華は勢津子の前で切った啖呵を思い出す。それだけ仕事に誇りを持っているということだ。
「かっこいいです」
勢津子を黙らせたあの台詞は、つまり他に社長として相応しい人間がいないことを示している。饒舌な彼女を黙らせたのだから、大層な手腕の持ち主であることを想起させた。
素直に褒めると、悠がニンマリとした。
「もう一度言って」
「かっこ……いいです」
催促されるとなんか恥ずかしい。照れ臭くてぷいっと横を向いた。
「俺の魅力が伝わっているみたいで何よりだ」
悠は史華の手を引いて店の外に出る。どこかへと向かっているようだ。
「えっと、次はどちらへ?」
「服、買おうかなって。史華ちゃん、あまりデート用の洋服を持っていないみたいだから」
そのくらいあります、と言って返しても良かったのだが、服がないのは事実だし、彼がどんな服を選ぶのかに興味が湧いた。ラブロマンスで作る商品のような服を選ぶのか、それ以外なのか。
淡い期待を抱いたとき、現実を思い出す。就活中である史華には悠が選びそうな洋服に支払える手持ちがない。
「え、選ぶだけで良いです! あたし、給料前でお金ないし」
「俺が買ってプレゼントするから、気にしなくて良いよ」
「気にしますよ!」
「俺のカノジョなんだから。――あ、別に今の格好が悪いと言っているわけじゃないんだよ。皆藤のところに連れて行ったとき、大幅衣装チェンジさせられなかったんだから、自信持って大丈夫。トレンドかどうかはさておき、君に似合っているって証拠だからさ」
そう言われると嬉しい。自信を持って良いのか。
「でも、悪いですし……」
「じゃあ、さっきのキスのお詫びとして受け取れば良いさ。許可を得る前にしちゃったし」
「あ、あれは――」
卑怯だ。お詫びとして受け取るという選択肢を選ぶように誘導している。
「わ、わかりました。でも、悠さんが選んだのが気に入らなかったら、この話はなしですからね」
「ふふ。良いよ。絶対に気に入ってもらえる自信があるから」
我ながらよい返しだと思ったのに、悠が自信満々にさらに返してくるのでむすっとしてしまう。彼のペースに乗せられっぱなしなのが、ちょっと気に食わない。
なんでこの人はこんなに自信を持てるのだろう……。
リードするその手を握り返して、史華は不思議に感じるのだった。
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