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第45話 好きになってもいいんですか?
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「悠さん?」
悠に背後から抱きしめられた状態で湯船に入っている。意外と厚い胸に背中を預けたままで問うと、彼が唇を耳に寄せてきた。
「なあに?」
「…………」
言おうか言うまいか迷って、つい沈黙する。
史華の腰に回された腕が締まる。
「不安になった?」
優しく問われて、史華はゆっくりと首を横に振る。
「じゃあ、気分が悪くなったかな?」
「お腹が空いたなとは思いましたけど」
「ああ、俺も。部屋で食べるか外で食べるかしようか。そろそろ十五時になるし。気が利かなくてごめんね」
「あ、別にそう言いたかったんじゃなくって……」
はあ、とため息をつく。そしてくるりと回転して、悠と向き合った。
「どうかした?」
心配そうな顔をしている。
史華は少し困った。迷ったけれど、正直に告白することを選ぶ。
「あたしが好きになっても本当にいいんですか? たくさんよくしてくれているのはわかるんですけど、どうしても気が引けてしまって。住む世界が違うから、価値観とか、特にお金に関したところとか、素直に喜べないっていうか……」
「なんだ。そんなことか」
悠は優しく笑った。
「そうだね。君はそういう部分が気になるタイプだ。仕方がないよ、そう感じてしまうのは。ただ、俺も見栄があるからね。無意識にお金を持っているらしいところを見せたくなるんだよ、周りがそういうアクションを求めてくるから」
苦笑に変わっていた。
悠さんは、周りの期待に合わせすぎてしまう人なんだ。
相手のことをよく見てよく考えている人だとは思っていた。それゆえの弊害もあるということか。
「ずっと期待を背負って生きてきたってことなんだろうね。父親が起こした会社が軌道に乗って有名になると、周りからは社長の息子だっていう目で見られるからさ。景気がいいところを見せたがる父親の影響もあるのかな。勢津子叔母さんもそういうタイプだし。着飾って、羽振りのいいところを見せて、儲けているところを見せろってのが教育方針だったんだと思う。――言い訳でしかないけど」
そしてため息。目がふせられた。
「……悪い。つまらない話をしたね」
愚痴だったのだろうか。唐突な悠自身の話に驚いて目をまるくしてしまったのを、誤解されたらしかった。
史華は悠の手を取って両手で包んだ。
「つまらなくなんてないです! あたし、悠さんのそういう気取らない部分がすっごく気になっているんで!」
なんでも話してほしい。今まで誰も聞こうとしなかった話をしてほしい。
あたしはちゃんと聞くよ。あなたがそうしてくれたみたいに。
「笑わない?」
そう問いかけながら見上げてくる顔は、拾われそうになっている仔犬のような印象を受けた。
「なんで笑うんですか。格好悪い話でも全然構いませんよ。あたしは悠さんに社長らしくないところも見せてもらいたいんです。その……もっと、あなたを知りたいから」
互いの見ているところと見られたいところの話をしたときから思っていた。現在の悠以外も知りたい。
「本当に?」
ふっと自然な笑みが浮かんだかと思うと、次には色っぽい表情に変わった。
「嬉しいけれど、また君を抱きたくなった。あまりその気にさせないでほしいな」
引き寄せられて、とろけるようなキスをする。
「あ、あの……」
「心配しないで。挿れたりしないから。ゴムないし」
「…………」
そういう意味じゃないんだけど、と抗議する言葉はキスで唇を塞がれてしまって声にならない。
「史華ちゃん、俺を好きになって。俺を見て、俺を受け入れて」
「は、い……」
ほどよく冷めた湯船の中で絡み合う。それはとても幸せな時間だった。
悠に背後から抱きしめられた状態で湯船に入っている。意外と厚い胸に背中を預けたままで問うと、彼が唇を耳に寄せてきた。
「なあに?」
「…………」
言おうか言うまいか迷って、つい沈黙する。
史華の腰に回された腕が締まる。
「不安になった?」
優しく問われて、史華はゆっくりと首を横に振る。
「じゃあ、気分が悪くなったかな?」
「お腹が空いたなとは思いましたけど」
「ああ、俺も。部屋で食べるか外で食べるかしようか。そろそろ十五時になるし。気が利かなくてごめんね」
「あ、別にそう言いたかったんじゃなくって……」
はあ、とため息をつく。そしてくるりと回転して、悠と向き合った。
「どうかした?」
心配そうな顔をしている。
史華は少し困った。迷ったけれど、正直に告白することを選ぶ。
「あたしが好きになっても本当にいいんですか? たくさんよくしてくれているのはわかるんですけど、どうしても気が引けてしまって。住む世界が違うから、価値観とか、特にお金に関したところとか、素直に喜べないっていうか……」
「なんだ。そんなことか」
悠は優しく笑った。
「そうだね。君はそういう部分が気になるタイプだ。仕方がないよ、そう感じてしまうのは。ただ、俺も見栄があるからね。無意識にお金を持っているらしいところを見せたくなるんだよ、周りがそういうアクションを求めてくるから」
苦笑に変わっていた。
悠さんは、周りの期待に合わせすぎてしまう人なんだ。
相手のことをよく見てよく考えている人だとは思っていた。それゆえの弊害もあるということか。
「ずっと期待を背負って生きてきたってことなんだろうね。父親が起こした会社が軌道に乗って有名になると、周りからは社長の息子だっていう目で見られるからさ。景気がいいところを見せたがる父親の影響もあるのかな。勢津子叔母さんもそういうタイプだし。着飾って、羽振りのいいところを見せて、儲けているところを見せろってのが教育方針だったんだと思う。――言い訳でしかないけど」
そしてため息。目がふせられた。
「……悪い。つまらない話をしたね」
愚痴だったのだろうか。唐突な悠自身の話に驚いて目をまるくしてしまったのを、誤解されたらしかった。
史華は悠の手を取って両手で包んだ。
「つまらなくなんてないです! あたし、悠さんのそういう気取らない部分がすっごく気になっているんで!」
なんでも話してほしい。今まで誰も聞こうとしなかった話をしてほしい。
あたしはちゃんと聞くよ。あなたがそうしてくれたみたいに。
「笑わない?」
そう問いかけながら見上げてくる顔は、拾われそうになっている仔犬のような印象を受けた。
「なんで笑うんですか。格好悪い話でも全然構いませんよ。あたしは悠さんに社長らしくないところも見せてもらいたいんです。その……もっと、あなたを知りたいから」
互いの見ているところと見られたいところの話をしたときから思っていた。現在の悠以外も知りたい。
「本当に?」
ふっと自然な笑みが浮かんだかと思うと、次には色っぽい表情に変わった。
「嬉しいけれど、また君を抱きたくなった。あまりその気にさせないでほしいな」
引き寄せられて、とろけるようなキスをする。
「あ、あの……」
「心配しないで。挿れたりしないから。ゴムないし」
「…………」
そういう意味じゃないんだけど、と抗議する言葉はキスで唇を塞がれてしまって声にならない。
「史華ちゃん、俺を好きになって。俺を見て、俺を受け入れて」
「は、い……」
ほどよく冷めた湯船の中で絡み合う。それはとても幸せな時間だった。
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