戦線の処女(おとめ)は気高き紅玉を番(つがい)に決める

一花カナウ

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戦場の処女は誘惑する

戦場の処女は誘惑する・1

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 辺りに満ちていた瘴気が薄まっていく。それと引き換えに、肉の焼け焦げた臭いと鉄の錆びた臭いが鼻につくようになった。

 ――魔物は駆逐できたみたいね……

 マーティナはほっと息をついた。
 同僚たちの肉体の断片やともに派遣された兵器である鉱物人形たちの宝石のような塊が、身を隠している廃墟の向こう側に多数散らばっている。においはそこから漂ってくるのだ。
 今回の魔物討伐は転送されたところに一撃を喰らい、いきなり部隊が半減するところから始まった。悲しみにくれている暇なんぞなく、体勢をすぐに立て直し反撃することに思考を割き、今に至る。

 ――やだな……まだゾクゾクする……

 戦闘が終わったことを知らせるシグナルが端末に届く。続いて届いたメッセージによると、事後処理班の到着まで半日かかるらしいとのことだ。
 マーティナはため息をついた。片道切符で戦場に送られる戦闘員たちは、事後処理班に回収されるまではホームに帰れない。今夜は野宿だ。
 身を隠していた廃墟に差し込む陽射しは屋内の奥まで届いている。間も無く日が暮れる。

 ――どれだけ生き残ったんだろう。

 暗くなる前に誰かと合流するべきだと思ったが、身体の疼きを鎮めてからにすべきかマーティナは悩んだ。
 この疼きは怪我やショックによるものではない。仲間の鉱物人形に魔力を与えるためにした口づけで、どうもスイッチが入ってしまったらしい。いつもなら戦闘を終えるまでには落ち着くのに、今日は戦闘が激しかったことと鉱物人形の彼の損傷具合が酷かったために魔力を大量に与える必要があったことなどから、身体が鎮まりきらなかったのだろうと判断した。

 ――彼は……ルビは残っているのかしら。

 術を使って周囲の情報を収集する。戦闘域に魔物の気配はない。瘴気も消えて清浄化が進んでいる。人間で残っているのはマーティナだけ。鉱物人形は一体だけのようだ。

 ――近づいてきている?

 残っていた鉱物人形が近づいているのがわかった。
 マーティナは咄嗟に隠れる場所を探す。だが、移動する前に見つかってしまった。

「無事のようだな」
「よくここがわかりましたね」

 逃げるのは変だと思い直し、マーティナは声をかけてきた赤い髪の青年に向き直りニコリと笑いかけた。
 彼に怪我はなさそうだ。返り血を浴びていたり砂埃に塗れていたりで汚れてはいるが、赤く煌めく戦闘装束には傷はない。マーティナはほっと安堵した。

「紅玉には導く力があるからな。探し物は得意だ」

 そう答えて、赤い髪の青年――紅玉の鉱物人形・ルビはマーティナの前にうやうやしく跪いた。
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