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戦場の処女は誘惑する
戦場の処女は誘惑する・11
しおりを挟む「マーティナ?」
「はい」
背後からふんわりと抱きしめられる。直接触れ合えないもどかしさを感じつつも、これで妥協するのは悪くない気がした。
ルビがマーティナの耳元に唇を寄せる。息がかかるとくすぐったい。
「……俺はたぶん、君の期待に応えられない」
期待。
そう告げられて、なんのことなのかマーティナはすぐに思い至らなかった。
「不能ではないことは確認しましたよ?」
「そういう話じゃなくてだな……いや、そういうのも含むが……俺は攻撃に特化しているからか、理性を失うとその攻撃性が強く出る」
――なんだ、そんなことか。
マーティナはルビの大きな手に自身の手を重ねた。
「気遣ってくれるんですね」
「そりゃあ、君を貸し出した部署に対する恩や君のパートナーであるオパールに申し訳ないからな」
――ほんと、真面目だな。
マーティナは小さく笑う。
「それでも、私を大事にしようとしてくれることには変わりありませんよ」
「……そうだろうか」
――ルビさんは本当に優しいな。
ふと、過去に受けた忌まわしい出来事が脳裏をよぎる。気づいたら、誰にも話さないつもりでいたことが口から漏れ出た。
「私、能力検査のときに、その……ひとにはあまり言えないようなことを、されたので、ルビさんの気遣いがすごく嬉しかったんですよね」
ルビの手がビクッとわずかに震えたのが伝わった。
――ああ、ルビさんはあの検査で何があったのかも知ってるのか……
あの日のことが思い出されそうになったタイミングで、ルビの手が私の頭を撫でた。嫌な記憶が薄れていく。
「オパールだって同じような振る舞いをしていたと思うが」
「オパールさんのそれは……遠慮というか、なんか、壁を感じてしまって。大事にしてくれているのはそうなんでしょうけど、わざと深入りしないように距離を置いているような、そんな感じで」
腫れ物に触るようなよそよそしさはなんなのだろう。思い過ごしだと最初は考えていたけれど、ともに過ごせば過ごすほど違和感を覚えるのだ。
マーティナは言葉を続ける。
「仕事以外でも、付き合いはあるんですけどね。一緒に買い物に行ったり、食事に行ったり、それは楽しいんですけど、異性として見れないし、魔力供給という面では、ある程度は情動も関与するので、相手に特別な感情があったほうが都合がいいんですけど、どうにもうまくいかなくって。魔力の相性でパートナーは決まっているんでしょうけどね。やっぱり仲のいいお兄さんくらいにしか思えないんで、少し、離れてみたかったんですよ」
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