戦線の処女(おとめ)は気高き紅玉を番(つがい)に決める

一花カナウ

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戦場の処女は誘惑する

戦場の処女は誘惑する・10

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 紅玉の鉱物人形の能力にあてられているという説明よりも道理にかなう気はする。でも、そんなことで相手をほしいと願うようになるのだろうか。

「ん? 少しは冷静になったか?」

 抱きしめる力が弱くなる。
 マーティナはルビをじっと見つめた。

「私、ルビさんのこと、好きですよ?」

 考えれば考えるほど、否定要素は減っていく。好きじゃないなら、なんだというのだろう。
 ルビは目を瞬かせた。ふさふさの睫毛が上下に動く。

「仕事のパートナーとして、だろう?」
「きっかけとしては仕事っぷりとその相性によるものですけど、こうして触れ合っていても嫌だとは思えないですし、あなたのその真面目すぎるところも好意的にとらえています。衝動はぎゅっとしてもらえたことでいくらか落ち着きましたけど……」
「なら、もういいだろ?」

 腕が離れようとするので、マーティナはルビを抱きしめた。

「あ、あの、離れたくないんです。や、やだ。事後処理班が来るまで触れていてほしいの」
「手を握るくらいなら」
「もっと全身で体温を感じたいの」

 ルビがため息をついた。

「あのな、マーティナ」
「そ、それに、この地域は夜間は冷え込みます。初手で装備のほとんどを失っているので、防寒具もないんです。術で冷気を防ぐことはできますけど、暖めることはできないので、その、隣で、くっついていただけないものか、と……」
「む……確かに冷えてはきたな。燃やせるようなものもあまりなさそうだし、暖をとるのは難しそうだ」

 周囲をざっと見渡して、ルビはつぶやく。
 冷気が忍び寄る。日が暮れてしまった。この状態で廃墟の街を移動するのは賢明ではなかろう。
 この機を逃してはいけない。有利な状況に話を持っていかねばとマーティナは思考を巡らせる。

「抱くとか抱かないとかは一度白紙に戻していただいていいので、温め合うことだけでも検討していただけないでしょうか?」
「だったら、まずは服を着てくれ」
「直接触れ合っていたほうが温かいんですが……」
「俺の理性を試すつもりか?」
「ですから、それについては私は構わないといいますか、むしろ望むところなのですが……」

 ルビは大きく息を吐き出し、マーティナを置いて彼女の上着とブラウスを持って戻る。順番に羽織らせて、ルビは自分の膝の上にマーティナを呼んだ。
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