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戦場の処女は誘惑する

戦場の処女は誘惑する・9

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「でもっ、私はルビさんがいいし、今、すぐに抱いてほしいの!」

 ルビの手を取って、マーティナは自身の胸に当てた。

「お願い。体が熱いの。どうにもできないんです。今すぐ私を鎮めてほしい」
「なんで」
「助けてください。ルビさん、あなたがほしい」

 彼にじっと見つめられると、体が期待するのがわかる。へその下あたりが切なく疼くのだ。

「いいか、マーティナ」

 射るような鋭い視線を向けられて、背中側がぞくりとした。

「はい」
「君のそれは、おそらく生存本能だ。仲間が多数死んだ。暗くなって視界から彼らの情報が薄れた今なら、落ち着きを取り戻せると思う」
「正気じゃないから私を抱けない、と?」

 悲しい。切ない。
 触れることを許してほしいだけなのに。
 マーティナの問いに、ルビは真剣な表情でゆっくり頷いた。

「そうだ。君は他部署から借りている存在だ。借りている以上、返さないといけない」
「それはわかっています」
「その上で、俺も折れよう」

 そう告げて、ルビはマーティナを抱きしめた。

 ――嬉しい!

 彼の背中に手を回したいのにさせてもらえない。それがささやかな抵抗で、線引きなのだろう。

「ルビさん?」
「俺は兵器だからな。魔物との戦いが終われば、鉱物に戻る。この体を失っても、鉱物に戻る。鉱物には精霊として情報が保持されるから、意識は失われない。だから、君たちの言う死について、恐怖を覚えることはない。体を失うことを残念に思うことはあるが、すべてを失うわけではないからだ」

 艶めいたことから程遠い学術的な話題。鉱物人形たちとともに任務にあたる前に講義で聞いた内容に、マーティナは首を傾げる。ルビの意図がわからない。

「勉強しているので、鉱物人形のそういった知識はありますけど……それが?」
「君が、とても恐れていることがわかった。誰かに触れることで、自分が生きていることを感じたいのだろう。触れ合いたいと願うことを、性愛の衝動として錯覚しているんだ」
「なる……ほど?」

 腑に落ちないところはあるのだが、ルビが何を伝えようとしているのか、その上で何に対して折れようと言い出したのか、なんとなくは伝わった。
 マーティナが頷くと、ルビは頬を寄せた。

「ならば、俺は譲歩する。こうして触れることで君の不安を払拭できるなら、俺は君の心を守るために体を差し出そう」
「えっと……あの、でも、やっぱり、私……」

 ――私が不安を感じている? 魔物との戦闘が怖かったから?
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