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水鏡の深淵
夏の旅行にて 2
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なるほど、悠真は可愛い。よく喋るし好奇心旺盛だし、なにをし出すかわかったもんじゃないけど。
「こいつ育てるの、大変なんじゃないか?」
私の膝を枕にして寝ている悠真を睨むようにして見たあと、龍司が昇太に告げた。
悠真は初めての遠出で興奮したのだろう。大人四人を相手にはしゃぎまくり、二十一時を回ったところでようやく寝た頃には私たちはすっかりヘトヘトになっていた。いい運動である。
「あはは。こうなることが予想できたから、龍司と幸菜を呼んだんだよ」
「寝てくれてよかったが、なんでそこなんだか」
「三歳児に嫉妬かい?」
「俺はこいつの遊び相手のためにきたわけじゃない」
「まあまあ。龍ちゃん、拗ねないでよ。たまには体を動かさないと」
「どうせ体を動かすなら――あ、いや」
龍司は口元に手を当てて顔を真っ赤にした。なにを考えているんだか。
「ふふ。ベッドの上で、がいいよね。お風呂でもいいよ。この別荘の浴室、広いし外もよく見えてなかなかのもんだったでしょ?」
「兄貴はなにを言っているんだ。子どもの前だぞ」
「ぐっすり寝てるから大丈夫だよ。これからは大人の時間さ」
「……元気だな」
「僕の狙いはこっちだからね」
そこにキッチンで作業をしていた瞳子がトレイに飲み物と軽食を載せて持ってきた。
「あら、悠真寝たの?」
「うん。幸菜に甘えていたらスッと」
「それで気が立ってるの?」
あきれた様子で瞳子は龍司を見やった。龍司はつまらなそうな顔をして瞳子の運んできたものをローテーブルに並べ始める。イエスともノーとも言わないあたりが龍司なりの抵抗なのだろう。
「美味しそうなカナッペですね」
大皿に並んだジュエリーのようなカナッペを見て私が感想を告げると、瞳子は胸を張った。
「手作りじゃなくてお取り寄せだけどね、おすすめなの」
「小さい子がいると気軽に外食もできないから、こういうのに詳しくなるよ」
夕食のバーベキューも通販で準備をしたのだという。なかなか手軽でありながらとても美味しかった。
「子ども中心の生活をしてるんだねえ」
「まあね。悠真は育てがいがあるよ」
カナッペのほかに目を向ける。グラスが三つ置かれていた。
「あれ? 飲み物三人分しかないですが」
「私、このあと部屋で勉強するの。試験近いし」
そう応えて、瞳子は慣れた様子で寝ている悠真を抱き上げる。悠真は少し唸ったが、おとなしく母親にくっついた。
「それに何かあったら車を出さないといけないでしょう? 悠真の様子を見ながら部屋にいるから、楽しく過ごすといいんじゃないかしら」
「だが」
リビングを去ろうとした瞳子を引き止めたのは龍司だった。
「なに?」
「瞳子さんもたまには楽しむべきじゃないか? 運転ならば俺もできる」
「気遣いありがとう。でも、本当にいいのよ」
そう返して、瞳子はまっすぐに伸びた黒髪を肩に寄せて首を露出させる。そこにはうっすらと鬱血の痕があった。キスマークだ。
「昇太の相手は体力的に無理だから、遠慮するってことよ」
「ん?」
どういう状況なのか、私はここにきて理解した。てっきり龍司と私がイチャイチャするのを昇太夫婦が問題なしとしているのだと思っていたが、話はそういうことではない。
いや、それも多少は含んでいるんだろうけど。
勘違いであって欲しい。
「大きな声を出しても、周辺には人が居ないから問題ないけど、悠真が寝てるからそこだけは考えておいて」
「ふふ。了解だよ」
これは確定だよね?
瞳子が悠真を連れて部屋を去ろうとするのに合わせて私も立ち上がるが、昇太に捕まってしまった。
「あのっ」
瞳子を引き止めようとしたが、あまり大きな声を出して悠真を起こすのは得策じゃない。悠真を休ませたいのだ。
彼女の涼しげな視線と交わった気がしたが、瞳子はドアを閉めた。
「さあて、これからは大人の時間だ」
「龍ちゃん」
「五分だ」
「なっ」
助けてほしくて龍司に声を掛ければ、彼はスマートフォンのタイマーを五分に設定して私たちに向けた。
なにが五分間なの?
冷や汗が流れる。
「五分で濡らせたら、最後までしていいってことで」
「気が乗らないなら濡れないだろ。疲れも溜まっているし」
「ちょ、龍ちゃん、昇ちゃん、何言って――」
腕を強く引っ張られたかと思えば、大きな三人がけのソファに押し倒された。唇で唇が塞がれる。舌がぬるりと入り込む。
「んんっ」
拒もうと暴れているのに力が入らない。押し出そうとして触れた舌は絡み合う。シャツが捲られて胸が露出した。
「へえ……嫌ではなさそうだな」
胸の先端が痛いほどに充血している。指の間に挟まれて扱かれると、痛みに甘い疼きが混じった。
「やっ……」
「この調子なら、もう濡れているんじゃないかな」
昇太の指先が下着と肌の間に滑り込む。膝を擦り合わせた程度では抵抗にはならなかった。
「や、あっ」
「ふふ。とろけているね。僕に触られるの、待ちかねていたんだねえ」
水音がする。彼の指先が私を奏でる。
「よく見せろ」
「いいよ」
下着ごとクロップドパンツが引き抜かれた。逃げる間もなく昇太の指先が蜜壺に差し込まれた。抽挿に抵抗はなく、心地よく中がうねる有り様だ。
「あっ、やだっ」
「もっとほしい、奥まで欲しいって下の口はゆってるよ? ほら」
抜き挿しされていた人差し指と中指はてかてかと光っている。指先をひろげればねっとりとしたものがまとわりついているのがよく見えた。
タイマーが鳴り響く。
「続けてもいいよね?」
「俺が混じってもいいなら」
そう返す龍司は上着を脱いでいる。
「ありゃ、お前はそういう趣味になってしまったのかい?」
「幸菜が昇太に抱かれているのを黙って眺めているのもどうかと思うが?」
「そこは席を外すところじゃないのかな」
「幸菜が昇太と二人きりがいいっていうなら、考えるさ」
なに、それ。
この状況が信じられなくて、まだ素面だというのに思考が停止している。
昇太が私の顔を覗き込んだ。
「幸菜は僕と二人きりになりたい? それとも、久しぶりに三人でシようか?」
「わ、私、龍司とだけがいい」
「へえ」
望んだ言葉ではなかったのだろう。昇太の指が私のナカに差し込まれる。右手は私を中から、左手は私を外から刺激しはじめる。ゾクゾクとしたものが迫り上がってきた。
「やっ、やめっ、ひぃっ」
「僕に触られてこんなになってるのに、僕を除け者にするのかい?」
「や、やだぁ、やめて」
「もっともっと気持ちよくなるよ。大丈夫、幸菜は受け入れてくれさえすれば、快感を享受することができるんだ。ちゃんと避妊はしてあげる。だから付き合ってよ」
ビクンと体が跳ねて、視界が白んだ。呼吸が荒い。
「ふふ。イったかな。幸菜は素直でいいね」
「昇太をほしかったんだろう? 遠慮しなくていい。俺たちが幸菜が望むように導いてやる」
「そんな……っ」
龍司にキスされる。言葉を奪うためのものでも、龍司とならば安心する。
意識がとろけた。
「りゅう……」
「幸菜、気持ちよくなって」
どうしてそんな切なげに告げるのだろう。
私はこくりと小さく頷いた。
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