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青玉の求婚は突然に
★6★ 7月27日土曜日、朝
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七月二十七日、土曜日。本日も晴天。
白い薄手のボレロの下には深紅のチューブトップ。細かい花柄のミニスカートには黒のトレンカを合わせて。踵の高いミュールは濃いピンク色。女の子らしく着飾った紅は、火群邸まで迎えにきた蒼衣と合流した。蒼衣も私服姿であるが、白い半袖のワイシャツに群青のベスト、濃紺のズボンを合わせた飾り気のない格好で、学校で見掛けるのと大差ない格好だ。
紅と蒼衣が仲良く歩き始めた後ろを、適当な距離をおいて抜折羅と遊輝が追っていた。抜折羅はだぼっとした黒のティーシャツにジーパン姿、遊輝は光沢のある白い長袖のワイシャツに細身の黒いジーンズを着こなしている。遊輝は色の薄いサングラスと帽子も着用していた。オパールと同じで、直射日光に弱いらしい。
「ああっもうっ!! どうしてこうなっちゃうのっ!?」
談笑する紅たちを双眼鏡でちらちら見ながら、遊輝が膨れる。
そんな遊輝の隣で、つきたくないため息をついたのは抜折羅だ。どうしてこうなった、という台詞は自分も言いたいと心底思う。俺は何をやっているんだと自問せずにはいられない。
「余計な茶々をいれたからだろうよ。自業自得だ。あんたも暇人だな」
「くっそ、ホープに関わったばかりに僕まで不幸体質に……っ。君のせいだぞ!!」
「横暴な。関係ないだろ」
否定しながら、抜折羅は紅の横顔を盗み見る。普段見ない紅の柔らかな表情に心が奪われる。鼓動が高鳴っているのと同時に、もやっとしたものが胸の奥でくすぶるのを感じた。
「――とにかく、一度乗り掛かった舟、明日まで付き合って貰うよ、抜折羅くん」
ぽんっと肩を叩かれて我に返る。遊輝を見やると、青筋を立てた笑顔という器用な表情をしていた。
――この人は本当に気持ちを隠さない人だなぁ。
幼少期のトラウマで感情をうまく面に出せない抜折羅としては、彼のそういうところに惹かれるものがある。身勝手な目的で紅を襲った相手でありながら、頼る相手として選んでしまったのも、そんな心理が働いているからに違いなかった。
「何で俺が……」
俯くと同時に不満がこもった声が漏れる。気が乗らない。自分の〝使命〟から外れるのはもちろんだが、楽しげにしている紅を邪魔したくはないのだ。
「じゃあ、ホープの欠片を回収し終えるまで、紅ちゃんへのアプローチは休戦にしておいてやる。いくらか力も貸してやる。それでどう?」
遊輝の意外な提案に、抜折羅は顔を上げた。
「やけに紅にご執心だな」
彼が出した提案はかなり抜折羅にとって都合が良い。それ故に、遊輝が紅に拘る理由がわからない。彼女が所持する魔性石フレイムブラッドの力が強いのは確かだし、恋愛的な興味があるのだとしても、遊輝が必死に求めるには理由として足りない気がするのだ。
抜折羅の指摘に、遊輝は演技がかったようにうっとりとした表情を浮かべた。
「触れていると、インスピレーションが増すんだよね。オパールの〝才能を支援してくれる力〟が強まるのを感じるんだ。だから僕には彼女が必要なんだよ。スタールビーは〝運命〟の石とされているけど、これは僕にとっての運命ってことだね。――君は感じたことないの?」
言われて、フレイムブラッドの暴走を抑えるためにキスしたことを思い出す。力が漲るような、身体に流れ込んでくるような感じははっきりと覚えている。
「まぁ、君はお子様で奥手っぽいから、あんなに傍にいながらも彼女に触れたことはないのかも知れないけど」
抜折羅の意識が別の場所に向いていたことには気付かずに、遊輝は語る。
話が終わったところで、抜折羅は口角を上げた。
「よし。そうだな、休戦協定アンド協力援助で手を打とう」
「ふぅん。聞き分けのよい子は嫌いじゃないね。じゃあ、そういうことで」
こうして、抜折羅は遊輝と手を組むことに決めたのだった。
白い薄手のボレロの下には深紅のチューブトップ。細かい花柄のミニスカートには黒のトレンカを合わせて。踵の高いミュールは濃いピンク色。女の子らしく着飾った紅は、火群邸まで迎えにきた蒼衣と合流した。蒼衣も私服姿であるが、白い半袖のワイシャツに群青のベスト、濃紺のズボンを合わせた飾り気のない格好で、学校で見掛けるのと大差ない格好だ。
紅と蒼衣が仲良く歩き始めた後ろを、適当な距離をおいて抜折羅と遊輝が追っていた。抜折羅はだぼっとした黒のティーシャツにジーパン姿、遊輝は光沢のある白い長袖のワイシャツに細身の黒いジーンズを着こなしている。遊輝は色の薄いサングラスと帽子も着用していた。オパールと同じで、直射日光に弱いらしい。
「ああっもうっ!! どうしてこうなっちゃうのっ!?」
談笑する紅たちを双眼鏡でちらちら見ながら、遊輝が膨れる。
そんな遊輝の隣で、つきたくないため息をついたのは抜折羅だ。どうしてこうなった、という台詞は自分も言いたいと心底思う。俺は何をやっているんだと自問せずにはいられない。
「余計な茶々をいれたからだろうよ。自業自得だ。あんたも暇人だな」
「くっそ、ホープに関わったばかりに僕まで不幸体質に……っ。君のせいだぞ!!」
「横暴な。関係ないだろ」
否定しながら、抜折羅は紅の横顔を盗み見る。普段見ない紅の柔らかな表情に心が奪われる。鼓動が高鳴っているのと同時に、もやっとしたものが胸の奥でくすぶるのを感じた。
「――とにかく、一度乗り掛かった舟、明日まで付き合って貰うよ、抜折羅くん」
ぽんっと肩を叩かれて我に返る。遊輝を見やると、青筋を立てた笑顔という器用な表情をしていた。
――この人は本当に気持ちを隠さない人だなぁ。
幼少期のトラウマで感情をうまく面に出せない抜折羅としては、彼のそういうところに惹かれるものがある。身勝手な目的で紅を襲った相手でありながら、頼る相手として選んでしまったのも、そんな心理が働いているからに違いなかった。
「何で俺が……」
俯くと同時に不満がこもった声が漏れる。気が乗らない。自分の〝使命〟から外れるのはもちろんだが、楽しげにしている紅を邪魔したくはないのだ。
「じゃあ、ホープの欠片を回収し終えるまで、紅ちゃんへのアプローチは休戦にしておいてやる。いくらか力も貸してやる。それでどう?」
遊輝の意外な提案に、抜折羅は顔を上げた。
「やけに紅にご執心だな」
彼が出した提案はかなり抜折羅にとって都合が良い。それ故に、遊輝が紅に拘る理由がわからない。彼女が所持する魔性石フレイムブラッドの力が強いのは確かだし、恋愛的な興味があるのだとしても、遊輝が必死に求めるには理由として足りない気がするのだ。
抜折羅の指摘に、遊輝は演技がかったようにうっとりとした表情を浮かべた。
「触れていると、インスピレーションが増すんだよね。オパールの〝才能を支援してくれる力〟が強まるのを感じるんだ。だから僕には彼女が必要なんだよ。スタールビーは〝運命〟の石とされているけど、これは僕にとっての運命ってことだね。――君は感じたことないの?」
言われて、フレイムブラッドの暴走を抑えるためにキスしたことを思い出す。力が漲るような、身体に流れ込んでくるような感じははっきりと覚えている。
「まぁ、君はお子様で奥手っぽいから、あんなに傍にいながらも彼女に触れたことはないのかも知れないけど」
抜折羅の意識が別の場所に向いていたことには気付かずに、遊輝は語る。
話が終わったところで、抜折羅は口角を上げた。
「よし。そうだな、休戦協定アンド協力援助で手を打とう」
「ふぅん。聞き分けのよい子は嫌いじゃないね。じゃあ、そういうことで」
こうして、抜折羅は遊輝と手を組むことに決めたのだった。
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