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翠玉の女王は微笑まない
★4★ 8月3日土曜日、午前
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「――で、抜折羅《ばさら》くんは紅《こう》ちゃんにはタリスマントーカーになって欲しくないわけね」
遊輝《ゆうき》の声が隣の部屋から聞こえる。抜折羅は扉越しに聞きながら、黙っている。
「私はてっきり、彼女を育成するつもりなのだと理解していましたよ?」
蒼衣《あおい》にも盗み聞きしているのがばれてしまっているらしい。抜折羅は苦笑する。
「先輩方は……」
言いかけて、口を噤む。
「聞こえないよ、抜折羅くん」
扉が不意に開いて、抜折羅は背中から事務所側の部屋に倒れ込んだ。
「言いたいことはちゃんと言ったら? 僕がリスキーだと言ったことを怒っているなら謝るよ」
見上げれば、遊輝が困った表情のまま微笑んでいる。
「先輩方は……このまま紅を巻き込んで、彼女を助けていける自信、ありますか?」
抜折羅の問いに、遊輝と蒼衣は顔を見合わせる。
先に答えたのは遊輝だった。
「自信はあるにはあるよ? でも、彼女の強さにも期待している。結構怖い思いをさせたんじゃないかなーなんて心配していたのに、案外と普通に接してくれるし。甘い部分は否めないから、つけ込まれやしないか気にはしてるけどね」
「金剛《こんごう》が考えているほど、紅は誰かを頼る生き方は選ばない人間ですよ。自力でどうにかしようと足掻《あが》く女性です。その分、扱いにくい面はありますが」
二人に言われて、抜折羅はようやく起き上がる。
「つまり、俺が彼女を信用していないってことですか?」
問いに、遊輝も蒼衣も頷いた。
「紅ちゃんだけでなく、僕たちも信用してよ。協力ってそういうことじゃないの?」
「単独行動に慣れすぎているのも困りものですね。なんのために我々が集まったと思っているんですか?」
二人の言葉がくすぐったい。抜折羅は努めて笑顔を作った。
「……ですね。ありがとうございます」
短い期間だけのチームになるだろうことは覚悟している。そういう気持ちが遠慮に繋がるのだろう。抜折羅は彼らに心の中で詫びたのだった。
遊輝《ゆうき》の声が隣の部屋から聞こえる。抜折羅は扉越しに聞きながら、黙っている。
「私はてっきり、彼女を育成するつもりなのだと理解していましたよ?」
蒼衣《あおい》にも盗み聞きしているのがばれてしまっているらしい。抜折羅は苦笑する。
「先輩方は……」
言いかけて、口を噤む。
「聞こえないよ、抜折羅くん」
扉が不意に開いて、抜折羅は背中から事務所側の部屋に倒れ込んだ。
「言いたいことはちゃんと言ったら? 僕がリスキーだと言ったことを怒っているなら謝るよ」
見上げれば、遊輝が困った表情のまま微笑んでいる。
「先輩方は……このまま紅を巻き込んで、彼女を助けていける自信、ありますか?」
抜折羅の問いに、遊輝と蒼衣は顔を見合わせる。
先に答えたのは遊輝だった。
「自信はあるにはあるよ? でも、彼女の強さにも期待している。結構怖い思いをさせたんじゃないかなーなんて心配していたのに、案外と普通に接してくれるし。甘い部分は否めないから、つけ込まれやしないか気にはしてるけどね」
「金剛《こんごう》が考えているほど、紅は誰かを頼る生き方は選ばない人間ですよ。自力でどうにかしようと足掻《あが》く女性です。その分、扱いにくい面はありますが」
二人に言われて、抜折羅はようやく起き上がる。
「つまり、俺が彼女を信用していないってことですか?」
問いに、遊輝も蒼衣も頷いた。
「紅ちゃんだけでなく、僕たちも信用してよ。協力ってそういうことじゃないの?」
「単独行動に慣れすぎているのも困りものですね。なんのために我々が集まったと思っているんですか?」
二人の言葉がくすぐったい。抜折羅は努めて笑顔を作った。
「……ですね。ありがとうございます」
短い期間だけのチームになるだろうことは覚悟している。そういう気持ちが遠慮に繋がるのだろう。抜折羅は彼らに心の中で詫びたのだった。
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