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黒き石に降り積もる雪
*7* 2007年8月某日、夕方【♭♯】
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真雪が半歩近付いて、将人の顔面に向けて蹴りを入れる。
「ちっ」
舌打ちをして、将人は蹴りが来る方向とは逆に向かって重心を移動させる。威力を弱めるためと、紅自身に注意を促すためだ。
「ふーん」
将人は床に転がった。すぐに残りの三人に囲まれ、無理やり立たされる。
「まぁ、あんまり長居してっと、そのクソガキが呼んだ誰かさんが駆け付けてくるみたいだし、そろそろずらかろうかな」
「誰か呼んだ?」
真雪の台詞に、将人が反応する。口元に笑みを浮かべて。
「くくっ……じゃあ、なおさらこのまんまにはしておけねぇな。――この際だ。一緒に補導されようぜっ!!」
ふっと足の力を抜いてしゃがむと、将人は回し蹴りで少年たちの臑を狙う。
一人はひっくり返るように転倒し、打ち所が悪かったらしく伸びてしまう。あとの二人にはかわされた。
「さっすがに芸がなかったかな」
間髪入れずに下から顎を狙って頭突きをかます。勢いをつけた分だけ後方に飛ばされて、二人目も動かなくなった。
「あと二人っ!!」
背中側から襲い掛かってきた少年を、将人は影を利用して察知すると、ぱっと横に転がってかわす。振り下ろされていたのは明かりを消したままの懐中電灯だった。
「あっぶねぇな。武器使うなんて、いよいよお巡りさんの世話になる気か?」
「うっせえっ!」
素早く起き上がり、将人は少年が持っていた懐中電灯目掛けて足を振り下ろす。手から離れた懐中電灯は床に落下。それを拾おうと前屈みになったところを、将人のつま先が捉えた。腹部に入った蹴りは、少年の身体を壁に運ぶに充分な威力を持っていた。
「これで三人目っと。――で、逃げんなよ、真雪センパイ」
足下に転がった懐中電灯を蹴飛ばす。部屋からひっそりと立ち去ろうとしていた真雪の耳元を懐中電灯は掠め、壁にぶつかった。
「仲間を見捨てて逃げるようなヤツはリーダーって言わねえよな?」
真雪は将人の挑発を受けて振り向くと、同時にズボンのポケットに入れていた懐中電灯を投げる――紅に向かって。
「っ!!」
不意打ちだ。避けられるわけがない。
懐中電灯は紅の額の左側にぶつかった。赤い血がつうっと流れて、着直したピンク色のキャミソールに斑点を作る。それを確認したのも束の間、紅は意識が朦朧として横に崩れた。
「紅っ!? ――真雪、てめぇっ!!」
「大事なものなら、身体を盾にしてでもちゃんと護らなくちゃ」
紅に駆け寄るか、次の攻撃を仕掛けるかに迷って動けない将人に、平然と真雪は告げる。
「許さねえ」
将人は低い声で呟くと、真雪を睨んだ。
「絶対に許さねえっ!!」
殺気。将人の腕を拘束していたビニール紐が切れて自由を取り戻す。肩を軽く回して指を鳴らすと、真雪に向かって突進した。
「ふんっ、おとなしく応じると思うか?」
真雪は小さく笑うと、将人が先ほど投げた懐中電灯を蹴り飛ばす。それは将人への威嚇を兼ねた、胴を狙う攻撃。
その攻撃をして瞬時に部屋の外と繋がるドアに真雪は向かう。逃げる気なのだ。仲間を見捨てて。
「逃がすと思うのか?」
勢いよく飛ばされてきたはずの懐中電灯を将人は簡単そうにキャッチした。
「あぁ、俺は逃げ切れるね」
将人に背を向けている真雪は薄く笑う。だが、余裕はないらしい。タンクトップから覗く肌に汗が浮かんでいる。
「そういうところが、敗因になるんだろうな」
懐中電灯を持ったまま跳躍。真雪の背後に詰め、右肩に向かって懐中電灯を力強く振り下ろした。
「つっ!?」
痛みに真雪は怯む。
懐中電灯を素早く左手に持ち替えると、将人は僅かに振り向いた真雪の顔を右の拳で殴る。
殴られた真雪は勢いで横に移動。壁に追いやられると、口の中の物を吐き捨てた。血だ。口内を切ったらしい。
「今のは効いたぜ? そんなに紅ちゃんとやらが大事だったのかな? ってか、本当に大事だったら、俺の相手をしている場合じゃないんじゃね? 俺を逃がして、彼女の治療を優先するのが賢い選択じゃないのかな?」
口元を拭いながらベラベラと饒舌に喋る真雪を、将人は冷ややかな目で見つめた。
「俺はバカな小学生だからな。賢い選択もできなけりゃ、年上の忠告にも応じねぇんだ」
懐中電灯を落として後方に蹴る。そして真雪との距離を詰めると、左右の拳で真雪の顔面を殴った。
懐中電灯で殴られて右肩を負傷したからだろう。真雪は左腕でしか防御も追撃もしなかった。
「いい加減にくたばれよっ!」
十数発ほど拳をお見舞いしたところで、将人は真雪のシャツを掴む。反応が遅れた真雪に、将人は頭突きをかました。鈍い音が部屋に響く。
「ちっ」
舌打ちをして、将人は蹴りが来る方向とは逆に向かって重心を移動させる。威力を弱めるためと、紅自身に注意を促すためだ。
「ふーん」
将人は床に転がった。すぐに残りの三人に囲まれ、無理やり立たされる。
「まぁ、あんまり長居してっと、そのクソガキが呼んだ誰かさんが駆け付けてくるみたいだし、そろそろずらかろうかな」
「誰か呼んだ?」
真雪の台詞に、将人が反応する。口元に笑みを浮かべて。
「くくっ……じゃあ、なおさらこのまんまにはしておけねぇな。――この際だ。一緒に補導されようぜっ!!」
ふっと足の力を抜いてしゃがむと、将人は回し蹴りで少年たちの臑を狙う。
一人はひっくり返るように転倒し、打ち所が悪かったらしく伸びてしまう。あとの二人にはかわされた。
「さっすがに芸がなかったかな」
間髪入れずに下から顎を狙って頭突きをかます。勢いをつけた分だけ後方に飛ばされて、二人目も動かなくなった。
「あと二人っ!!」
背中側から襲い掛かってきた少年を、将人は影を利用して察知すると、ぱっと横に転がってかわす。振り下ろされていたのは明かりを消したままの懐中電灯だった。
「あっぶねぇな。武器使うなんて、いよいよお巡りさんの世話になる気か?」
「うっせえっ!」
素早く起き上がり、将人は少年が持っていた懐中電灯目掛けて足を振り下ろす。手から離れた懐中電灯は床に落下。それを拾おうと前屈みになったところを、将人のつま先が捉えた。腹部に入った蹴りは、少年の身体を壁に運ぶに充分な威力を持っていた。
「これで三人目っと。――で、逃げんなよ、真雪センパイ」
足下に転がった懐中電灯を蹴飛ばす。部屋からひっそりと立ち去ろうとしていた真雪の耳元を懐中電灯は掠め、壁にぶつかった。
「仲間を見捨てて逃げるようなヤツはリーダーって言わねえよな?」
真雪は将人の挑発を受けて振り向くと、同時にズボンのポケットに入れていた懐中電灯を投げる――紅に向かって。
「っ!!」
不意打ちだ。避けられるわけがない。
懐中電灯は紅の額の左側にぶつかった。赤い血がつうっと流れて、着直したピンク色のキャミソールに斑点を作る。それを確認したのも束の間、紅は意識が朦朧として横に崩れた。
「紅っ!? ――真雪、てめぇっ!!」
「大事なものなら、身体を盾にしてでもちゃんと護らなくちゃ」
紅に駆け寄るか、次の攻撃を仕掛けるかに迷って動けない将人に、平然と真雪は告げる。
「許さねえ」
将人は低い声で呟くと、真雪を睨んだ。
「絶対に許さねえっ!!」
殺気。将人の腕を拘束していたビニール紐が切れて自由を取り戻す。肩を軽く回して指を鳴らすと、真雪に向かって突進した。
「ふんっ、おとなしく応じると思うか?」
真雪は小さく笑うと、将人が先ほど投げた懐中電灯を蹴り飛ばす。それは将人への威嚇を兼ねた、胴を狙う攻撃。
その攻撃をして瞬時に部屋の外と繋がるドアに真雪は向かう。逃げる気なのだ。仲間を見捨てて。
「逃がすと思うのか?」
勢いよく飛ばされてきたはずの懐中電灯を将人は簡単そうにキャッチした。
「あぁ、俺は逃げ切れるね」
将人に背を向けている真雪は薄く笑う。だが、余裕はないらしい。タンクトップから覗く肌に汗が浮かんでいる。
「そういうところが、敗因になるんだろうな」
懐中電灯を持ったまま跳躍。真雪の背後に詰め、右肩に向かって懐中電灯を力強く振り下ろした。
「つっ!?」
痛みに真雪は怯む。
懐中電灯を素早く左手に持ち替えると、将人は僅かに振り向いた真雪の顔を右の拳で殴る。
殴られた真雪は勢いで横に移動。壁に追いやられると、口の中の物を吐き捨てた。血だ。口内を切ったらしい。
「今のは効いたぜ? そんなに紅ちゃんとやらが大事だったのかな? ってか、本当に大事だったら、俺の相手をしている場合じゃないんじゃね? 俺を逃がして、彼女の治療を優先するのが賢い選択じゃないのかな?」
口元を拭いながらベラベラと饒舌に喋る真雪を、将人は冷ややかな目で見つめた。
「俺はバカな小学生だからな。賢い選択もできなけりゃ、年上の忠告にも応じねぇんだ」
懐中電灯を落として後方に蹴る。そして真雪との距離を詰めると、左右の拳で真雪の顔面を殴った。
懐中電灯で殴られて右肩を負傷したからだろう。真雪は左腕でしか防御も追撃もしなかった。
「いい加減にくたばれよっ!」
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