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面倒ごとは金剛石の隣で【第2部完結】
*6* 10月14日月曜日、15時過ぎ
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紅は自身の解答用紙の束を取ってめくる。二枚目の紙には、〝回答率40%中、正答率75%〟と赤い文字で記載されていた。
――これって、一体どんなもんよ?
なんともわかりにくい数字だ。
他の面々も喜んで良いのか困っているのがわかる表情を浮かべている。
「こっちが模範解答です。解説もつけておきましたので、興味があれば読んでください」
言って、抜折羅は模試で配られるような厚みのある小冊子を長テーブルにどんっと置いた。
「――何か質問は?」
ひと仕事終えた清々しい顔をして抜折羅が問うと、誰よりも早く遊輝が手を挙げた。
「どうぞ、白浪先輩」
「結局、一位は誰なんだい?」
射抜くような鋭い視線を抜折羅に向けての遊輝の問いに、受験者たちはピクリと反応する。今回の宝石知識テストは試験結果よりも順位の方が重要だ。参加者全員が耳を傾けるのがわかった。
「それはダントツで白浪先輩が一番ですよ。ってか、回答率89%は能力を使わないと出せない数字だとも思いますが」
94%の正答率にも驚きですけど――と続いたその台詞に各々思うところがあるらしい。皆の視線が一番左に座っていた遊輝に集中する。
――89%ってことは、えっと……だいたい270問に答えたってことっ!? 九〇分間でっ!?
紅はポカーンとしていた。300題の設問を用意してきた出題者も出題者なのだが、解答する人間も同類なのだと思う。
レギュレーション通りに作られた英文の問題は、明らかに度を超した数量で受験者の前に立ちふさがった。問題数と制限時間について規定はしなかったが、だからといって普通の精神状態ではこんな試験問題は作らないのではなかろうか。連休を一緒に過ごしていたはずなのに、これだけの設問と解答例をいつ用意したのかも謎だ。
「いやぁ、抜折羅くんの本気にはしっかり応えないとなって思ったら、つい。能力を使うな、とは言われてなかったでしょ? ――あ、でも〝スティールハート〟に訊いたりはしてないよ」
上機嫌に遊輝は言う。
――いや、本気っていうか……。
「本気というよりも、狂気じみていたような……」
紅の心情をなぞるようにぼそりと呟いたのは、右端に座っていた将人だ。手元にある解答用紙を盗み見るに、書かれた赤い文字は〝回答率45%中、正答率66%〟。
――ん……? あたし、将人に勝ってるの? 負けてるの?
「――となると、白浪の希望が叶えられるということでしょうか?」
不満げな気持ちがありありと感じられる発言は紅の左隣にいる蒼衣のものだ。彼の手元にある解答用紙には〝回答率51%中、正答率100%〟と書かれていた。
――正答率100%って、答えた問題は全部正解ってことかいっ!?
決して手は抜かず、加えて正確さを追求するタイプだとは思っていたが、その数字に紅は心の中で突っ込みをいれずにはいられない。
「回答率と正答率という書き方をしている辺りを見ると、何か他に意図があるんじゃない? レギュレーションに入れていなかったことだが、特に決めていなかったことでもあるし。――なぁ、バサラ、君のことだから、意味があるんだろ?」
昔馴染みらしい口振りで抜折羅に問い掛けたのは陽太だ。ひらひらと動かしている解答用紙には〝回答率54%中、正答率93%〟と書かれているのが目に入った。
――うーむ、母国語での試験だとはいえ、向日先輩もできるのね……。蒼衣兄様がそこと同等ってことか。
複雑な心境である。抜折羅の隣にいるためには、遊輝ほどの知識までは求めずとも、蒼衣や陽太程度の知識は必要であろう。手応えを感じていた紅だったが、そう考えてしまうとこの溝はとても深くて広いような気がする。
――これって、一体どんなもんよ?
なんともわかりにくい数字だ。
他の面々も喜んで良いのか困っているのがわかる表情を浮かべている。
「こっちが模範解答です。解説もつけておきましたので、興味があれば読んでください」
言って、抜折羅は模試で配られるような厚みのある小冊子を長テーブルにどんっと置いた。
「――何か質問は?」
ひと仕事終えた清々しい顔をして抜折羅が問うと、誰よりも早く遊輝が手を挙げた。
「どうぞ、白浪先輩」
「結局、一位は誰なんだい?」
射抜くような鋭い視線を抜折羅に向けての遊輝の問いに、受験者たちはピクリと反応する。今回の宝石知識テストは試験結果よりも順位の方が重要だ。参加者全員が耳を傾けるのがわかった。
「それはダントツで白浪先輩が一番ですよ。ってか、回答率89%は能力を使わないと出せない数字だとも思いますが」
94%の正答率にも驚きですけど――と続いたその台詞に各々思うところがあるらしい。皆の視線が一番左に座っていた遊輝に集中する。
――89%ってことは、えっと……だいたい270問に答えたってことっ!? 九〇分間でっ!?
紅はポカーンとしていた。300題の設問を用意してきた出題者も出題者なのだが、解答する人間も同類なのだと思う。
レギュレーション通りに作られた英文の問題は、明らかに度を超した数量で受験者の前に立ちふさがった。問題数と制限時間について規定はしなかったが、だからといって普通の精神状態ではこんな試験問題は作らないのではなかろうか。連休を一緒に過ごしていたはずなのに、これだけの設問と解答例をいつ用意したのかも謎だ。
「いやぁ、抜折羅くんの本気にはしっかり応えないとなって思ったら、つい。能力を使うな、とは言われてなかったでしょ? ――あ、でも〝スティールハート〟に訊いたりはしてないよ」
上機嫌に遊輝は言う。
――いや、本気っていうか……。
「本気というよりも、狂気じみていたような……」
紅の心情をなぞるようにぼそりと呟いたのは、右端に座っていた将人だ。手元にある解答用紙を盗み見るに、書かれた赤い文字は〝回答率45%中、正答率66%〟。
――ん……? あたし、将人に勝ってるの? 負けてるの?
「――となると、白浪の希望が叶えられるということでしょうか?」
不満げな気持ちがありありと感じられる発言は紅の左隣にいる蒼衣のものだ。彼の手元にある解答用紙には〝回答率51%中、正答率100%〟と書かれていた。
――正答率100%って、答えた問題は全部正解ってことかいっ!?
決して手は抜かず、加えて正確さを追求するタイプだとは思っていたが、その数字に紅は心の中で突っ込みをいれずにはいられない。
「回答率と正答率という書き方をしている辺りを見ると、何か他に意図があるんじゃない? レギュレーションに入れていなかったことだが、特に決めていなかったことでもあるし。――なぁ、バサラ、君のことだから、意味があるんだろ?」
昔馴染みらしい口振りで抜折羅に問い掛けたのは陽太だ。ひらひらと動かしている解答用紙には〝回答率54%中、正答率93%〟と書かれているのが目に入った。
――うーむ、母国語での試験だとはいえ、向日先輩もできるのね……。蒼衣兄様がそこと同等ってことか。
複雑な心境である。抜折羅の隣にいるためには、遊輝ほどの知識までは求めずとも、蒼衣や陽太程度の知識は必要であろう。手応えを感じていた紅だったが、そう考えてしまうとこの溝はとても深くて広いような気がする。
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