宝石の呪いで逆ハーになりましたが、やっぱり嬉しくありません!

一花カナウ

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面倒ごとは金剛石の隣で【第2部完結】

*7* 10月14日月曜日、15時過ぎ

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 こう陽太ようたの問いに対する抜折羅ばさらの返事に黙って耳を傾けた。

「順位付けが最大の目的ではあったが、それだけのために俺は手を貸したりしない。誰かさんの道楽に付き合っていられるほど暇じゃないからな」
「んじゃ、バサラは便乗して何を企んだのさ?」

 呆れた、と言いたげな口調で陽太は訊ねる。

「今後の布石。各自の知識と癖の把握だな。――ちなみに、俺がこの試験を同じ条件で受けたとしてもせいぜい回答率75%程度、90%の正答率を出せれば充分だ。得手不得手もあるし、複数選択の解答だと間違いは起きやすい」
「へぇ、意外。抜折羅くんは満点出せるんだと思っていたよ」

 口を挟んだのは遊輝ゆうきだ。能力を使用してあの成績を出した彼だからこそ、意味のある台詞だと思う。

「120分の試験時間があれば、それは難しくありませんよ。ただ、今回はわざと時間が足りないように短く見積もっているんで。そもそも、簡単すぎては順位のつけようがなくなってしまうでしょう?」
「それはその通りだと思うけどさ。――僕はてっきり、敢えて順位をつけさせないで、この勝負を引き分けに持ち込むんじゃないかと予想していたから」

 遊輝の予想はもっとものように思えた。抜折羅が出題者になったのだから、難易度の設定は彼に一任されている。簡単すぎる問題を用意するような人間ではないが、必要なレベルに合わせた問題くらいは作りそうだ。
 そんな意見に対し、抜折羅は肩を竦めてみせた。

「単純に、白浪しらなみ先輩が本気で試験に取り組んでくれそうな方法を選んだだけですよ」
「まるで僕を一位にしたかったみたいな言い方だね」
「そういう意図はありません。――で、一位になったのですから、約束通り一つ願いを叶えられますけど、どうします?」

 抜折羅が遊輝に促す。
 蒼衣あおいの方から殺気を感じるが、彼は何も言わずに耐えている。交わした約束はきちんと守るつもりらしい。

「そうだねー」

 勿体をつけて遊輝は告げ、意味ありげに小さく笑んだ。

星章せいしょう先輩を鍛える目的は果たせたから何も要らない――なぁんて、カッコつけてみたかったんだけど、それはまぁいいや」

 そして、紅と抜折羅のそれぞれを見た。その顔にはにっこりと満面の笑み。

「僕ね、紅ちゃんと抜折羅くんに頼みたいことがあるんだ」
「……って、俺にも、ですか?」

 抜折羅が目を点にしている。指名される相手に含まれているのが意外だったのだろう。

 ――あたしを指名するのはまだわかるけど、なんで抜折羅まで?

 紅が疑問を感じながら見つめていると、遊輝は答える。

「ほら、紅ちゃんだけだと色々と閣下に勘ぐられそうだし、その辺の証言者になってくれるのって、君くらいしか思い浮かばなかったから。抜折羅くんだって、その方が安心じゃないかい?」

 そのように提案されると断りにくいのだろう。抜折羅は僅かに眉根を寄せて即答を避けたものの、やがて観念したように頷いた。

「うむ……承知しました。――で、紅は白浪先輩の頼みってヤツは受けるのか?」
「そうね。勝負に負けたのは事実だもの。公序良俗に反しないことであれば引き受けるわ」

 そういう約束だったのだから仕方がない。約束を反故ほごにするには、たくさんの人間を巻き込み過ぎた。それぞれが真剣に取り組んだ結果なのだから、ここは文句を言わずに引き受けるべきだろう。

「ありがと。二人とも優しいよねー」

 楽しそうに言う遊輝からは不思議と冗談っぽさや悪戯いたずら感覚は伝わってこなくて、真面目なお願いを言われるような気がした。

「頼みとは何なのです?」

 言葉遣いは丁寧だが、苛立ちを隠せていない台詞は蒼衣のものだ。

「閣下には悪いけど、それは内緒にさせてもらえないかな。そんなに僕が信用なりません?」
「紅に対する言動に関しては全く信用していませんが、何か?」

 隣り合わせて座る蒼衣と遊輝の間に火花が散る。

 ――生徒会の仕事をしているときはうまく回っているのに、どうしてこういうときはそれを発揮できないかなぁ……。

「うーん、しょうがないか。でも、僕は紅ちゃんが嫌がるようなことはしていないつもりなんだけどなぁ――どっかの誰かさんと違って」

 赤い瞳が蒼衣を射った。低めた声には凄みがある。
 蒼衣はすぐに退いた。

「負けたという事実は覆りませんから、今回だけは見逃しましょう。そもそも、そういう話でしたからね」
「じゃ、決着ってことで」

 遊輝と蒼衣が話をつけていると、ガタンと右端から音がした。見れば将人まさとが立ち上がっている。

金剛こんごう、もう試験は終わったんだろ? おれは帰る」
「あぁ、構わない。明日からは中間テストだし、呑気に過ごすこともないだろう」
「なら、遠慮なく帰らせてもらうぜ」

 つまらなそうな空気を纏った巨躯が、さっさと食堂から出て行った。
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