宝石の呪いで逆ハーになりましたが、やっぱり嬉しくありません!

一花カナウ

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【番外編】ルビーという名の特効薬で

★7★ 10月18日金曜日、放課後【B】

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「……へっ!?」

 彼女の肌がすぐに真っ赤に染まった。そして訝しげな目を向けられる。

「熱に浮かされて何を言っているのかな?」
「生憎、冗談を言っているつもりはない。大真面目な依頼だ」
「え、あ、それは……」

 こうがもじもじとしている。誤解されているのかも知れない。

「あのな、俺は下心があって頼んでいるわけじゃない」

 全くないわけではないが、変に警戒されたり期待されたりしては、効果が薄れかねない。誠実な気持ちで伝えれば、意図はきっと伝わるはずだ。

「ルビーの効能に《風邪に効く》というのがあったはずなんだ。さっきも紅に触れただけで少しラクになった。だから、試させて欲しい。――紅が嫌なら、諦めるが」

 視線を逸らし最後の一言を小声で告げるあたり、我ながらずるいと思う。紅が断りにくいように誘導している。

「す、少しだけなら……」

 彼女は宝杖ほうじょう学院のジャケットとベストを脱いで、スクールバッグの上に畳んで置く。制服にシワをつけないためだろう。黄色いスカーフも取ってベストの上に重ねる。学校指定のワイシャツにボックススカートという姿になった紅は、恐る恐るといった様子でベッドに近付いてきた。

「言っておくけど、変なことしたら承知しないんだからね」
「わかってる」

 ベッドに腰を下ろした彼女の腕を引っ張る。紅の身体は軽くて、簡単に引き寄せられた。すぐさま毛布の中に引き込む。

「ちょっ!?」

 狼狽えて身を捩る紅の身体を、腕を伸ばして捕まえる。手のひらに弾力のある感触が伝わった。大きく膨らんだそれは、手のひらに余る。何だろうかと、つい揉んでしまった。柔らかくて気持ちが良い。

 ――これは……。

 抜折羅ばさらが答えにたどり着く前に、反応があった。

「ひゃっ!? やっ!? 胸はナシっ!!」

 紅が焦っている。腕でも腰でもないことはすぐにわかったが、まさかあえてそこを掴むとは。

「これは事故だっ。――ってか、それだけの存在感があるのに、触れない方が難しいだろうがっ」

 できるだけ意識しないようにしているつもりだが、彼女の胸はかなり目立つ。同じ年頃の少女たちと比べても大きいのは明白だ。宝杖学院で一番の巨乳だと男子たちの間で話題になっているのを、果たして彼女はどの程度理解しているのだろう。
 柔らかな胸の感触を楽しんでいた左手に名残惜しさを感じつつも、腹部の方に移動させて自分の身体に引き寄せる。後ろから包み込むように抱き締めた。

「言ってることとやってることが違うっ!!」

 いまだに逃れようと懸命になっているのは感じられるが、離せとは言ってこない。それが少し不思議だ。

「お前は何を想像していたんだ?」

 腰に回す腕に力を込めてさらに密着する。どこに触れていても柔らかい。空いている右手で彼女の頭を撫でた。宥めるのに、それが一番効果的であることを知っているからだ。

「そ、添い寝ってこういうのとは違うと思うの」
「ふぅん」

 視界に入る彼女の肌は赤く染まっていて綺麗だ。衝動を抑えられず、頭を撫でていた手で彼女の髪を払い、露出した首筋に口付けを落とす。

「ひゃうっ」

 思いの外、艶めいた声が部屋に響く。紅の身体がしなって震えた。

「や、やめて、そういうの……変な声出ちゃうから」
「ひょっとして、首筋、弱い?」

 彼女の息が少しだけ上がっている。それはベッドに引き込んだときに暴れたからではないのだろう。

「知らない。ってか、同じことしたら焼き払うわよっ!?」

 紅が扱うルビーの能力《浄化の炎》で焼くなどと言って彼女は威嚇してくる。

 ――そういうことを言ってくる彼女を愛しいと感じてしまうのは、熱が高いからだろうか。

「紅はそうしないだろ?」

 耳元で囁いて、再び口付けをする。びくっと彼女の身体が反応し、熱を帯びた。

「やっ……だからっ……」

 鼻に掛かるような高い声はふだん聴けるような声ではなくて、とても色っぽい。

「あんまり感じてくれるな。直接肌で触れ合っているほうが、ルビーの効能を得やすいんだ。わかっているんだろ?」
「ぬ、脱げと仰いますかっ!?」

 その発想はなかった。紅の慌てる声に、抜折羅は小さく笑う。

「そこまでは要求しないさ。襲うだけの体力が今の俺にあると思うのか?」
「現状、あたしは逃げられないんで、充分じゃないかと……」
「そうか。それなら紅からエナジーを根こそぎ奪えば回復しきれるだろうし、不可能ではないのか」
「へ……?」
「――冗談だ」

 ぎゅっと抱き締めてやると、彼女からふっと力みが抜けた。

「悪ふざけがすぎた。――だが、ルビーの効能は大したもんだな。だいぶラクになったよ。紅のおかげだ」
「ど、どう致しまして」
「この礼は必ずするから、もう少しだけこのままでいて欲しい」
「うん……」

 腕の中の紅が小さく頷くのがわかる。嬉しそうな、だけど少し不服そうな声。

「ありがとう」

 心地良いエナジーを感じる。それに身を任せてしまうと、自然と目蓋がおりた。
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