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【番外編】不機嫌なブルーサファイア(R-18)
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「仕置きも……躾も……はぁ……ここまでに……してよ……」
呼吸が乱れ、涙が溢れた。
彼を怒らせた原因に心当たりはあるが、謝るつもりは最初からなかった。彼の我が儘のすべてに付き合えるほど、紅は彼のお人形ではない。フィアンセの件にしても、親同士の同意だけで紅の気持ちは反映されてなどいないのだ。認めてしまったら、流されてしまう。
「私を怒らせるとどうなるのかを知っていての行為とは思えませんが?」
責めて、彼は紅を抱き上げた。長い口付けで力が抜けていた紅は抵抗できず、部屋の端に置かれたベッドに連れて行かれ、下ろされる。それでも逃げようと必死に上体を起こしたところで、蒼衣にのしかかられた。動けない。
「貴女は私をよくご存知のはずです。私が知らないとでもお思いだったのですか?」
「抜折羅とデートに行ったことを怒っているの? あたしは抜折羅を選んだのよ。フィアンセだとしても、幼なじみなのだとしても、誰と付き合うかはあたしの自由じゃないの?」
呼吸が落ち着いたところで、紅は問いで返す。
試験前の土曜日、クラスメートの金剛抜折羅と池袋までデートに行っていた。そこを蒼衣に見られていたことは、顔を合わせたのだから知っている。
抜折羅とは想いが通じ合った仲であり、健全な付き合いをしているつもりだ。それをとやかく言われたくはない。
「紅が金剛を選び、親しくしていることについては、私が貴女にふられてしまっているのですから文句は言えないでしょう」
「だったら――」
「私が許せないのは、白浪とも仲良くしていることです」
「あれはあたしにつきまとっているだけで……」
紅は美術部の先輩である白浪遊輝に憧れの気持ちを抱いてはいる。遊輝は高校生でありながらも、油絵でお金を得ているプロの画家なのだ。ジュエリーデザイナーを目指している紅としては、その彼からデッサンの指導を受けることもあり、画力の向上に繋がっている。
厄介なのは遊輝が紅に興味を示していることで、隙さえあれば過剰なスキンシップをしてくる。それさえなければ、教え方も上手なよき先輩であるのに。
「それだけですか?」
蒼衣の台詞は冷ややかだ。全く信じてくれない。
「じゃあ、何だって言うんです?」
「モデルを――ヌードモデルを引き受けたのではありませんか?」
「まさか。水着だって六年前から一度も着ていないのに、自主的に男性に肌を晒すなんてこと、あたしがすると思うの?」
小学四年生だった夏、事故で背中に大怪我を負ったことがある。数十針は縫う怪我で、一生傷痕は消えないだろうと医者に言われた。以降は学校の水泳の授業さえ欠席し、中学校進学時には水泳の授業がカリキュラムに含まれていない宝杖学院を選んだ。ただでさえずっと背中の傷痕を隠すために逃げてきたのに、わざわざ人前に晒すなんてことはしない。
「ですが、背中の傷が消えているとなれば、別でしょう?」
言われて、無理やり仰向けからうつ伏せにさせられた。背中が隠されていないドレスなのだから、この部屋の明るさで充分確認できるはずだ。
「兄様、お願い……。乱暴なことはしないで」
「傷が残るようなことはしませんよ」
彼の長い指先が背中をなぞる。傷痕があっただろう辺りに優しく触れられた。
呼吸が乱れ、涙が溢れた。
彼を怒らせた原因に心当たりはあるが、謝るつもりは最初からなかった。彼の我が儘のすべてに付き合えるほど、紅は彼のお人形ではない。フィアンセの件にしても、親同士の同意だけで紅の気持ちは反映されてなどいないのだ。認めてしまったら、流されてしまう。
「私を怒らせるとどうなるのかを知っていての行為とは思えませんが?」
責めて、彼は紅を抱き上げた。長い口付けで力が抜けていた紅は抵抗できず、部屋の端に置かれたベッドに連れて行かれ、下ろされる。それでも逃げようと必死に上体を起こしたところで、蒼衣にのしかかられた。動けない。
「貴女は私をよくご存知のはずです。私が知らないとでもお思いだったのですか?」
「抜折羅とデートに行ったことを怒っているの? あたしは抜折羅を選んだのよ。フィアンセだとしても、幼なじみなのだとしても、誰と付き合うかはあたしの自由じゃないの?」
呼吸が落ち着いたところで、紅は問いで返す。
試験前の土曜日、クラスメートの金剛抜折羅と池袋までデートに行っていた。そこを蒼衣に見られていたことは、顔を合わせたのだから知っている。
抜折羅とは想いが通じ合った仲であり、健全な付き合いをしているつもりだ。それをとやかく言われたくはない。
「紅が金剛を選び、親しくしていることについては、私が貴女にふられてしまっているのですから文句は言えないでしょう」
「だったら――」
「私が許せないのは、白浪とも仲良くしていることです」
「あれはあたしにつきまとっているだけで……」
紅は美術部の先輩である白浪遊輝に憧れの気持ちを抱いてはいる。遊輝は高校生でありながらも、油絵でお金を得ているプロの画家なのだ。ジュエリーデザイナーを目指している紅としては、その彼からデッサンの指導を受けることもあり、画力の向上に繋がっている。
厄介なのは遊輝が紅に興味を示していることで、隙さえあれば過剰なスキンシップをしてくる。それさえなければ、教え方も上手なよき先輩であるのに。
「それだけですか?」
蒼衣の台詞は冷ややかだ。全く信じてくれない。
「じゃあ、何だって言うんです?」
「モデルを――ヌードモデルを引き受けたのではありませんか?」
「まさか。水着だって六年前から一度も着ていないのに、自主的に男性に肌を晒すなんてこと、あたしがすると思うの?」
小学四年生だった夏、事故で背中に大怪我を負ったことがある。数十針は縫う怪我で、一生傷痕は消えないだろうと医者に言われた。以降は学校の水泳の授業さえ欠席し、中学校進学時には水泳の授業がカリキュラムに含まれていない宝杖学院を選んだ。ただでさえずっと背中の傷痕を隠すために逃げてきたのに、わざわざ人前に晒すなんてことはしない。
「ですが、背中の傷が消えているとなれば、別でしょう?」
言われて、無理やり仰向けからうつ伏せにさせられた。背中が隠されていないドレスなのだから、この部屋の明るさで充分確認できるはずだ。
「兄様、お願い……。乱暴なことはしないで」
「傷が残るようなことはしませんよ」
彼の長い指先が背中をなぞる。傷痕があっただろう辺りに優しく触れられた。
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