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【番外編】不機嫌なブルーサファイア(R-18)
*11*
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すぐにでも抜折羅に会いたかった。会って、彼の温もりを確かめたかった。
――でも、そんなことを蒼衣兄様の前では言えない……。
蒼衣が告げていたように、自宅までは通学で使っている自転車ごと車で運んでもらった。
紅は家に入るなり、夕食は済ませてきたからと嘘をつき、風呂場に直行する。火群家の夕食は基本的には一九時過ぎだ。このタイミングで帰宅したおかげで、誰とも顔を合わすことなく入浴できる。
熱いシャワーを頭から浴びながら、今日、自分の身に起きた全てのことを洗い流せたらどんなに良いのかと思った。
「……あたしが、悪いの?」
鏡を見る。映った自分の姿を見て、無性に悲しくなった。そして、寂しいと感じた。
「うっ……」
涙が溢れる。止まらない。
少し前に一度だけ、知人から犯される寸前にまで至ったことがある。そのときはそのときでショックだったが、今回は蒼衣を誤解させていたという事実を見逃してあの事態を招いてしまったと思うと、余計につらかった。もっと蒼衣のことに気を配っていれば、あんなことをさせずに済んだはずなのだ。
「非道いよ、兄様……あたしはあなたを慕っていたいのに……それだけなのに……」
シャワーを全開にして声を消す。全部吐き出してしまわないと、苦しい気持ちが膿んでしまいそうだったから。
「蒼衣兄様……あたしはあなたの愛情に応えられそうにありません……」
本人に伝えられない想い。
紅はシャワーに打たれたまま、気が済むまで泣いた。
一時間近く風呂場にいた。長風呂はいつものことだったから、誰からも咎められることなく部屋に戻る。ドライヤーでシャギーがたっぷり入ったセミロングの髪を乾かすと、ベッドに潜り込んだ。
枕元に置いた小さな巾着袋を両手で包んで、良い夢を見られるようにとお願いする。巾着袋の中身は、少し早いクリスマスプレゼントとして抜折羅からもらったロイヤルブルームーンストーンのネックレスだ。夢魔を追い払うおまじないである。
目蓋を閉じて深呼吸。しかし、眠気がないせいもあって眠れない。それどころか、午後の出来事の感覚が蘇ってきて、目を閉じるのも嫌になってしまった。
――気が紛れるように音楽でも聴きながら、ネットでも眺めてようかな……。
忘れたいと思えば思うほど、心に深く刻まれてしまう。別のことをしてごまかせれば、それが良いような気がした。
手を伸ばしてスマートフォンを取る。ロックを解除すると、メールが溜まっていることに気付いた。学校を出てから今まで、一度もスマートフォンを弄っていなかったのだ。
――随分と気が動転していたみたいね、あたし……。
友人たちからの他愛のないメールに、いつも通りを装った返信をする。明日の部活推奨日に関した連絡が美術部と地学部から届いており、それぞれの活動時間に重複がないことを確認した。
――あ。
抜折羅からメールが届いていないかと探している自分に気が付いて苦笑する。彼は急ぎの用事があるときしかメールをしてこない。紅からのメールに対する返信はマメであるが、内容はいつもシンプルだ。そういうところが、抜折羅らしいところであるのだけど。
――会えなくても、声くらいは聴きたい……。
普段通りにしてみても、心はちっとも晴れてくれない。
会いたいと思いながらもそうしなかった理由は、抜折羅を気遣ったからというのもある。おそらく今頃は、試験勉強優先で後回しにしていた仕事に着手しているだろう。抜折羅は働きながら学校に通っており、真面目な彼なら休まずにそうするはずだ。彼の邪魔はしたくない。
――電話してくれないかな……。
向こうから掛けてくれれば良いのにと、自分に都合が良いことばかり願ってしまう。
――抜折羅……。
――でも、そんなことを蒼衣兄様の前では言えない……。
蒼衣が告げていたように、自宅までは通学で使っている自転車ごと車で運んでもらった。
紅は家に入るなり、夕食は済ませてきたからと嘘をつき、風呂場に直行する。火群家の夕食は基本的には一九時過ぎだ。このタイミングで帰宅したおかげで、誰とも顔を合わすことなく入浴できる。
熱いシャワーを頭から浴びながら、今日、自分の身に起きた全てのことを洗い流せたらどんなに良いのかと思った。
「……あたしが、悪いの?」
鏡を見る。映った自分の姿を見て、無性に悲しくなった。そして、寂しいと感じた。
「うっ……」
涙が溢れる。止まらない。
少し前に一度だけ、知人から犯される寸前にまで至ったことがある。そのときはそのときでショックだったが、今回は蒼衣を誤解させていたという事実を見逃してあの事態を招いてしまったと思うと、余計につらかった。もっと蒼衣のことに気を配っていれば、あんなことをさせずに済んだはずなのだ。
「非道いよ、兄様……あたしはあなたを慕っていたいのに……それだけなのに……」
シャワーを全開にして声を消す。全部吐き出してしまわないと、苦しい気持ちが膿んでしまいそうだったから。
「蒼衣兄様……あたしはあなたの愛情に応えられそうにありません……」
本人に伝えられない想い。
紅はシャワーに打たれたまま、気が済むまで泣いた。
一時間近く風呂場にいた。長風呂はいつものことだったから、誰からも咎められることなく部屋に戻る。ドライヤーでシャギーがたっぷり入ったセミロングの髪を乾かすと、ベッドに潜り込んだ。
枕元に置いた小さな巾着袋を両手で包んで、良い夢を見られるようにとお願いする。巾着袋の中身は、少し早いクリスマスプレゼントとして抜折羅からもらったロイヤルブルームーンストーンのネックレスだ。夢魔を追い払うおまじないである。
目蓋を閉じて深呼吸。しかし、眠気がないせいもあって眠れない。それどころか、午後の出来事の感覚が蘇ってきて、目を閉じるのも嫌になってしまった。
――気が紛れるように音楽でも聴きながら、ネットでも眺めてようかな……。
忘れたいと思えば思うほど、心に深く刻まれてしまう。別のことをしてごまかせれば、それが良いような気がした。
手を伸ばしてスマートフォンを取る。ロックを解除すると、メールが溜まっていることに気付いた。学校を出てから今まで、一度もスマートフォンを弄っていなかったのだ。
――随分と気が動転していたみたいね、あたし……。
友人たちからの他愛のないメールに、いつも通りを装った返信をする。明日の部活推奨日に関した連絡が美術部と地学部から届いており、それぞれの活動時間に重複がないことを確認した。
――あ。
抜折羅からメールが届いていないかと探している自分に気が付いて苦笑する。彼は急ぎの用事があるときしかメールをしてこない。紅からのメールに対する返信はマメであるが、内容はいつもシンプルだ。そういうところが、抜折羅らしいところであるのだけど。
――会えなくても、声くらいは聴きたい……。
普段通りにしてみても、心はちっとも晴れてくれない。
会いたいと思いながらもそうしなかった理由は、抜折羅を気遣ったからというのもある。おそらく今頃は、試験勉強優先で後回しにしていた仕事に着手しているだろう。抜折羅は働きながら学校に通っており、真面目な彼なら休まずにそうするはずだ。彼の邪魔はしたくない。
――電話してくれないかな……。
向こうから掛けてくれれば良いのにと、自分に都合が良いことばかり願ってしまう。
――抜折羅……。
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