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【番外編】Happy Happy Valentine's Day !!
*3* 2月14日金曜日、放課後【A】
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帰りのホームルームが終わって少し経過した十六時過ぎ。紅は地学部で世話になっている藍染海を二年A組の前で捕まえ、無事にクッキーを渡し終えていた。
――藍染先輩が女の子に捕まっていて助かったわ。
小学生に間違われそうな外見の藍染海は、女子から可愛がられている。前生徒会メンバーの他三人――星章蒼衣、白浪遊輝、青空瑠璃の人気に引けを取らないのだから侮れない。
――次は美術室かしら。
さっきまでは二年F組、つまり美術科クラスに届けに行くつもりでいた。だが、先ほど宮古澤彩から電話をもらったのでその必要はないだろう。十六時半に美術室に行く約束になっている。
――どうか口に合いますように。
紅は人混みをすり抜けて、二年生の教室が並ぶ三階から離脱する。目指すは昇降口だ。
――将人は会いたくないから、下駄箱の中にでも突っ込んでおけばいっか。先に帰っているみたいなら、なかったことにしよう。
少し憂鬱な気持ちになるも、覚悟を決めればなんとかなる。受験休みに入っていて静かな三年生の教室が並ぶ二階を通り過ぎながら、次の行動を冷静に考え――だが、予期せぬ事態に遭遇した。
「ここで張っていれば会えると思っていたぜ」
「将人……」
直接渡したくない相手、黒曜将人が一年A組の下駄箱の前で待ち構えていた。一九〇センチを超える長身でがっしりした体格、よく研がれたナイフのような彼の恐い見た目からか、周囲の生徒が避けて通っている。
「一応幼なじみなんだし、何の挨拶もなしだなんて冷たいじゃないか」
思わず立ち竦んだ紅へと、将人はつかつかと歩み寄る。そして壁際に追いやられた。
「おれへのクッキーがないって言うなら、あんた自身でも構わないんだぜ?」
頭一つ分以上背が違うと、見下ろされるだけで威圧感がある。片手を壁に置いて、将人は紅を舐めるように見た。
逃げ場を奪うやり口は毎度のことだが対処できない。だが、心構えくらいは整えておいて正解だった。
「クッキーならあるわよ。ちゃんと将人用にね」
紙袋から黒い紙袋にルビー色のリボンをかけた物を取り出す。押し付けるように渡すと、将人はおとなしく下がった。
「あんたのためにアーモンド抜きを用意しているんだから、感謝しなさいよ?」
「紅……おれのアレルギー、覚えていたのか?」
黒い紙袋をまじまじと見つめたあと、将人は紅に視線を移す。睨んでいるような目つきは生まれ持ったものだと知っていてもおっかない。だが、その瞳に驚きの色が滲んでいるのを見逃さなかった。
「まぁ、軽いトラウマだからね……」
六年前、まだ将人が海外に行ってしまう前のこと。紅が初めて作ったクッキーを将人は口にして蕁麻疹を出した。そのときのことは忘れられない。
「きっちり分けて作ったつもりだけど、所詮は自宅で作ったものよ。体調がおかしいと思ったら捨ててちょうだい」
「お、おう」
「じゃあ、あたしは次に回るところがあるんで」
さっさと美術室に行こうと一歩踏み出したとき、将人に肩を掴まれた。くるりと体勢が変わったのに反応できずにいると、将人は紅をその長い腕で支え、額に口付けを落とした。
「ひゃっ……」
「今日はこれで我慢しといてやるよ」
手も離し、将人はさっさと行けとばかりに手を振った。
――不本意だわ。
今の行為について文句をつけたいが、こんなにあっさりと引く将人は珍しい。紅は将人を睨むと、何も告げずに昇降口を出た。
――藍染先輩が女の子に捕まっていて助かったわ。
小学生に間違われそうな外見の藍染海は、女子から可愛がられている。前生徒会メンバーの他三人――星章蒼衣、白浪遊輝、青空瑠璃の人気に引けを取らないのだから侮れない。
――次は美術室かしら。
さっきまでは二年F組、つまり美術科クラスに届けに行くつもりでいた。だが、先ほど宮古澤彩から電話をもらったのでその必要はないだろう。十六時半に美術室に行く約束になっている。
――どうか口に合いますように。
紅は人混みをすり抜けて、二年生の教室が並ぶ三階から離脱する。目指すは昇降口だ。
――将人は会いたくないから、下駄箱の中にでも突っ込んでおけばいっか。先に帰っているみたいなら、なかったことにしよう。
少し憂鬱な気持ちになるも、覚悟を決めればなんとかなる。受験休みに入っていて静かな三年生の教室が並ぶ二階を通り過ぎながら、次の行動を冷静に考え――だが、予期せぬ事態に遭遇した。
「ここで張っていれば会えると思っていたぜ」
「将人……」
直接渡したくない相手、黒曜将人が一年A組の下駄箱の前で待ち構えていた。一九〇センチを超える長身でがっしりした体格、よく研がれたナイフのような彼の恐い見た目からか、周囲の生徒が避けて通っている。
「一応幼なじみなんだし、何の挨拶もなしだなんて冷たいじゃないか」
思わず立ち竦んだ紅へと、将人はつかつかと歩み寄る。そして壁際に追いやられた。
「おれへのクッキーがないって言うなら、あんた自身でも構わないんだぜ?」
頭一つ分以上背が違うと、見下ろされるだけで威圧感がある。片手を壁に置いて、将人は紅を舐めるように見た。
逃げ場を奪うやり口は毎度のことだが対処できない。だが、心構えくらいは整えておいて正解だった。
「クッキーならあるわよ。ちゃんと将人用にね」
紙袋から黒い紙袋にルビー色のリボンをかけた物を取り出す。押し付けるように渡すと、将人はおとなしく下がった。
「あんたのためにアーモンド抜きを用意しているんだから、感謝しなさいよ?」
「紅……おれのアレルギー、覚えていたのか?」
黒い紙袋をまじまじと見つめたあと、将人は紅に視線を移す。睨んでいるような目つきは生まれ持ったものだと知っていてもおっかない。だが、その瞳に驚きの色が滲んでいるのを見逃さなかった。
「まぁ、軽いトラウマだからね……」
六年前、まだ将人が海外に行ってしまう前のこと。紅が初めて作ったクッキーを将人は口にして蕁麻疹を出した。そのときのことは忘れられない。
「きっちり分けて作ったつもりだけど、所詮は自宅で作ったものよ。体調がおかしいと思ったら捨ててちょうだい」
「お、おう」
「じゃあ、あたしは次に回るところがあるんで」
さっさと美術室に行こうと一歩踏み出したとき、将人に肩を掴まれた。くるりと体勢が変わったのに反応できずにいると、将人は紅をその長い腕で支え、額に口付けを落とした。
「ひゃっ……」
「今日はこれで我慢しといてやるよ」
手も離し、将人はさっさと行けとばかりに手を振った。
――不本意だわ。
今の行為について文句をつけたいが、こんなにあっさりと引く将人は珍しい。紅は将人を睨むと、何も告げずに昇降口を出た。
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