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【番外編】Happy Happy Valentine's Day !!
*10* 2月14日金曜日、17時過ぎ【A】
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「――紅、このあとの予定は?」
少しだけ蒼衣も落ち着きを取り戻したようだ。穏やかな口調で問うてくる。
「タリスマンオーダー社に寄るわ」
あえて抜折羅のところだとは言わなかった。これ以上、蒼衣を刺激したくない。
「夕食を一緒にと思ったのですが……。金剛のところが最後なのですね」
「帰り道の都合よ」
「金剛は貴女と同じクラスではありませんか。欠席していたわけではないのでしょう?」
遊輝にも言われたが、あの現場を見ていない人間の発想だと紅は思う。
「休んでいたほうが、きっと彼にはメリットがあったんじゃないかしら。本人は厄日だと嘆いていたわよ」
「金剛は目立ちますからね……。お節介でお人好しであることを自覚すべきだと思うのですが」
「同感よ。彼の魅力ではあるけど、欠点でもあるわね」
言って、笑い合う。
そのあとで、蒼衣は寂しげな顔をした。
「――紅はまだ私を選んでくださらないようですね」
「居心地が良いのが抜折羅のところってだけのつもりなんだけど」
「誰よりも長く貴女を愛しているのに、どうして振り向かせることができないのでしょう?」
「あたしにもよくわからないわ。ただ、恋人になるには近すぎたんじゃない?」
紅にとって蒼衣は、兄と同等にしか見えない。幼い頃からそうしてきたからか、告白をされても気持ちは変わらなかった。
「残酷なことを言うのですね」
「あたしに枷を付けたのはあなたよ。もうしばらくはそれで満足していただけないかしら」
親同士の取り決めを覆すことは未だにできていない。高校卒業まで猶予を貰ったはずだが、それまでに方策が思い付くだろうか。
「言葉だけでなく行動でも示して欲しいと思ってしまうのは私の我が儘でしょうか」
蒼衣はそっと紅の右手を取り、片膝をつく。
「蒼衣兄様……?」
見上げてくる蒼衣と目が合う。彼が何を企んでいるのかわからない。ただ、必死なのは感じ取れる。
「指先への口付けを許していただけますか?」
蒼衣の行為にどきどきしてしまっている。軽く触れているだけの指先が熱い。
「拒否しても、あなたはすると思うわ」
紅の返答に、蒼衣は満足げに微笑んだ。
「貴女は私のよき理解者ですよ」
告げると、そっと持ち上げた指先に口付けを落とす。ほんの少ししか触れていなかったはずなのに、たっぷりと熱が伝わってきた。くらくらしそうだ。
「――普段よりも異性として認識してくださったようですね」
クスッと小さく笑って蒼衣は立ち上がると、紅の手を放した。機嫌が直ったように見える。
「貴女はこういう方が好みなんですか? 真っ赤ですよ」
「う、うるさいわね。びっくりしただけよ」
感触がまだ残っている。紅は右手の指先を左手で包み込んだ。熱が宿ったままだ。
「いい勉強になりました。参考にさせてもらいます」
「――もう帰るっ。長居をするべきではなかったわ」
「またいつでも遊びにいらして下さい。私は歓迎しますよ」
「気が向いたらお邪魔するわ」
蒼衣がドアを開けてくれる。機嫌が良い証拠だ。
――あたしの趣味がバレたとなると、厄介さが増すわね……。
自分でも知らなかったことである。完全に不意打ちだった。
「駅前まで送らなくても大丈夫ですか?」
「ええ。自転車があるし。抜折羅のところに寄ったらすぐに帰るわ」
外に出ると息が白く濁った。寒さが増している。
「そうですか。すぐに帰れることを私は祈っていますよ」
似たような台詞を聞いたなと思い返すと、一時間ほど前に遊輝から聞いた台詞であることに気付く。
「何か彼に入れ知恵でもしたの?」
自転車に鍵を差し込みながら蒼衣に問う。
「私には覚えがありませんよ。それに、自身が不利になるようなことを私がすると思うのですか?」
「やりそうなのは、白浪先輩の方ね」
紅は肩を竦めたあとで、自転車に跨がった。
「夜道には気を付けて」
「そっちは風邪をひかないように気を付けてね」
自転車は走り出す。目指すはタリスマンオーダー社日本支部――抜折羅のところだ。
少しだけ蒼衣も落ち着きを取り戻したようだ。穏やかな口調で問うてくる。
「タリスマンオーダー社に寄るわ」
あえて抜折羅のところだとは言わなかった。これ以上、蒼衣を刺激したくない。
「夕食を一緒にと思ったのですが……。金剛のところが最後なのですね」
「帰り道の都合よ」
「金剛は貴女と同じクラスではありませんか。欠席していたわけではないのでしょう?」
遊輝にも言われたが、あの現場を見ていない人間の発想だと紅は思う。
「休んでいたほうが、きっと彼にはメリットがあったんじゃないかしら。本人は厄日だと嘆いていたわよ」
「金剛は目立ちますからね……。お節介でお人好しであることを自覚すべきだと思うのですが」
「同感よ。彼の魅力ではあるけど、欠点でもあるわね」
言って、笑い合う。
そのあとで、蒼衣は寂しげな顔をした。
「――紅はまだ私を選んでくださらないようですね」
「居心地が良いのが抜折羅のところってだけのつもりなんだけど」
「誰よりも長く貴女を愛しているのに、どうして振り向かせることができないのでしょう?」
「あたしにもよくわからないわ。ただ、恋人になるには近すぎたんじゃない?」
紅にとって蒼衣は、兄と同等にしか見えない。幼い頃からそうしてきたからか、告白をされても気持ちは変わらなかった。
「残酷なことを言うのですね」
「あたしに枷を付けたのはあなたよ。もうしばらくはそれで満足していただけないかしら」
親同士の取り決めを覆すことは未だにできていない。高校卒業まで猶予を貰ったはずだが、それまでに方策が思い付くだろうか。
「言葉だけでなく行動でも示して欲しいと思ってしまうのは私の我が儘でしょうか」
蒼衣はそっと紅の右手を取り、片膝をつく。
「蒼衣兄様……?」
見上げてくる蒼衣と目が合う。彼が何を企んでいるのかわからない。ただ、必死なのは感じ取れる。
「指先への口付けを許していただけますか?」
蒼衣の行為にどきどきしてしまっている。軽く触れているだけの指先が熱い。
「拒否しても、あなたはすると思うわ」
紅の返答に、蒼衣は満足げに微笑んだ。
「貴女は私のよき理解者ですよ」
告げると、そっと持ち上げた指先に口付けを落とす。ほんの少ししか触れていなかったはずなのに、たっぷりと熱が伝わってきた。くらくらしそうだ。
「――普段よりも異性として認識してくださったようですね」
クスッと小さく笑って蒼衣は立ち上がると、紅の手を放した。機嫌が直ったように見える。
「貴女はこういう方が好みなんですか? 真っ赤ですよ」
「う、うるさいわね。びっくりしただけよ」
感触がまだ残っている。紅は右手の指先を左手で包み込んだ。熱が宿ったままだ。
「いい勉強になりました。参考にさせてもらいます」
「――もう帰るっ。長居をするべきではなかったわ」
「またいつでも遊びにいらして下さい。私は歓迎しますよ」
「気が向いたらお邪魔するわ」
蒼衣がドアを開けてくれる。機嫌が良い証拠だ。
――あたしの趣味がバレたとなると、厄介さが増すわね……。
自分でも知らなかったことである。完全に不意打ちだった。
「駅前まで送らなくても大丈夫ですか?」
「ええ。自転車があるし。抜折羅のところに寄ったらすぐに帰るわ」
外に出ると息が白く濁った。寒さが増している。
「そうですか。すぐに帰れることを私は祈っていますよ」
似たような台詞を聞いたなと思い返すと、一時間ほど前に遊輝から聞いた台詞であることに気付く。
「何か彼に入れ知恵でもしたの?」
自転車に鍵を差し込みながら蒼衣に問う。
「私には覚えがありませんよ。それに、自身が不利になるようなことを私がすると思うのですか?」
「やりそうなのは、白浪先輩の方ね」
紅は肩を竦めたあとで、自転車に跨がった。
「夜道には気を付けて」
「そっちは風邪をひかないように気を付けてね」
自転車は走り出す。目指すはタリスマンオーダー社日本支部――抜折羅のところだ。
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