宝石の呪いで逆ハーになりましたが、やっぱり嬉しくありません!

一花カナウ

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【脚本風】今日は初恋の日なので

今日は初恋の日なので

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十月三十日水曜日。ファミレスの半個室にて。

金剛抜折羅(以下、抜折羅)「えー、親睦会をしろ、との上からの命令なので今日は集まっていただきました」やる気なしな感じで。

星章蒼衣(以下、蒼衣)「また面倒な催しですね」

抜折羅「写真撮ってメールに添付すればおしまいなので、数分付き合っていただければ良いですよ」

蒼衣「で。私と白浪しらなみ金剛こんごうの三人ですか」

白浪遊輝(以下、遊輝)「そう邪険にしないでよー。せっかく集まったんだから、楽しくいこうよ♪」手をぽんっと叩いて「そだ。今日は初恋の日だっていうから、初恋話をするなんてどうだい? ――抜折羅ばさらくんはこうちゃんが初恋の相手なんだよね?」

抜折羅「そうですけど……ってか、白浪先輩。このメンバーで初恋話って、面白みがない気が」

遊輝「ふふーん。そんなことないよ」ニコニコ「で、ぶっちゃけどこに惚れたのかな?」

抜折羅「別にどこだっていいだろ」ブラックコーヒーを飲んでごまかす。

遊輝「敬語やめてるってことはかなり動揺してるね」

抜折羅「うるせー」

遊輝、笑いながら「やっぱり、あのおっきな胸かな?」

抜折羅「ぶっ!?」「ゲホゴホ――露骨な言い方するなっ! 確かにあれは迫力あるけど、別にそこにはこだわってないぞ」

遊輝「ふーん。じゃあ、性格なのかな。押しが強くて負けた、とか」

抜折羅「そういうわけじゃなくてだな……ほっとけないから。あとは――そうだな。いつも笑顔を向けてくれるし、本気で怒って、心配して、それでも俺に飽きずに付き合ってくれる。そこがまぁ……その、そういうことだ」

遊輝「なるほどー。初々しいね」蒼衣を見て「閣下も紅ちゃんが初恋の相手なんでしょ?」

蒼衣、ふんと鼻を鳴らして「私が愛する女性は後にも先にも紅ひとりだけです」きっぱり。

遊輝「振られているくせにー」

蒼衣「彼女は誰にも渡しませんよ。外向きには、婚約者なのですから」

遊輝、抜折羅を見て「閣下がこう言ってるけど、公式カップル的にはどうなの?」

抜折羅「対策は思案中だ。そもそも、俺の呪いが解けるまではどうにもならんしな」

蒼衣、遊輝を見て「そういう貴様はどうなのです? 女性との噂が多い貴方のことだ、紅が初恋だなどと抜かしはしないでしょう?」挑発的に。

遊輝「僕を本気にさせたのは紅ちゃんが初めてだよ。明らかに僕に好意を持っているのに、全然落ちてくれないんだもん。抜折羅くんが来る前だったら、もっと簡単に攻略できただろうになぁ」

抜折羅「――じゃあ、初恋は?」

遊輝「ん? 気になるのかい?」

抜折羅「別に。だが、面白くない」

蒼衣「私も気になりませんが、べらべら喋らされただけでは不愉快ですからね」

遊輝「ふふふ。じゃあ、ここだけの話ってことで、教えちゃおうかな」「――僕の初恋はね、小学校六年生のとき。宝杖学院の文化祭に父さんと来ていたんだけど、そこではぐれちゃってね。困っていた僕を助けてくれた親切な人がいたんだ。とっても優しくしてくれてさ、この人が先輩になるなら宝杖学院に通学したいなって思ったんだよね」

蒼衣「ん?」何かに気付く。

抜折羅「その人には会えたのか?」

遊輝「うん。今もよく会ってるよ」ニコニコ「あの日は女装させられていたから、彼は気づいていないみたいだけど」

抜折羅「彼?」

蒼衣「……急用を思い出しました」立ち上がる「私は失礼いたします」

遊輝「あれ?」蒼衣を見て、くすりと笑う「今頃、気付いたのかい? 君としたことが、五年もの付き合いなのにわからなかったなんてね」

蒼衣「初恋などと冗談を」冷ややかな目で遊輝を見下ろす。

遊輝「男に惚れたのはそれが初めてだったんだから、初恋でしょ?」にっこり。

蒼衣「貴様のその女顔で言われると、シャレがシャレに聞こえませんがね」

遊輝「だって、シャレでも嘘でもないもの」

蒼衣「馬鹿馬鹿しい」ふんと鼻を鳴らして。

遊輝、真面目な声で「本当に憧れていて、大好きで――だから、生徒会にも入ったんだけどな。でももう忘れていいですからね、今日言ったこと」悲しそうに「生徒会活動ももうすぐ終わりですし、伝えておきたかった。それだけですから」

蒼衣、遊輝を一瞥して退室。

抜折羅「えっと……今のって、その……」

遊輝、ストローでグラスの氷を回しながら「ホントの話」「僕、閣下に出会って、どっちも愛せるんだってわかったんだよねー。ネコでもタチでもどっちでも良いんだけど」

抜折羅「?」

遊輝「あ。ノンケの抜折羅くんにはわからないか」にこり「ちなみに僕、女の子では紅ちゃんが大好きだけど、男の子なら抜折羅くんのことが同じくらい好きだから」

抜折羅、吹き出す。

遊輝「いつかちゃんと気持ちに応えてね」抜折羅の口元をハンカチで拭う振りをして、額に口付けする「んじゃ、会計は僕がもっておくから、こういう懇親会は紅ちゃんも呼ぼうね」会計に行ってしまう。

抜折羅、硬直がやっと解けて「ま、マジかよ……」口付けされた辺りを拭って、ため息をつく。


《了》
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